哨戒機P-1や10式戦車といった大型の装備品開発が一巡し、今年の防衛シンポジウムでは将来の装備品開発に繋がる研究等に重点が置かれています。今年4月の武器輸出三原則の見直し後、最初の防衛技術シンポジウムという事もあるためか、政策としての技術開発の方向性といった面からの発表も行われており、大学や独立行政法人といった外部の研究機関との共同研究や、防衛・民生の双方で利用価値の高い技術(デュアルユース)の研究といった、研究そのものに対するあり方についての発表が目立ちます。
また、宇宙空間の安全保障分野での利用についても目が向けられていたのが今年の特徴でしょう。今年8月、防衛省で安全保障における宇宙空間利用戦略である「宇宙開発利用に関する基本方針」を改訂し、様々な施策を示しました。これを受けてか、防衛技術シンポジウムでも、宇宙空間の利用拡大と安全保障分野への活用について基調講演が組まれています。政府の宇宙政策委員会基本政策部会長の中須川東京大学教授は講演の中で、日本として安全保障に役立つ・主張できる確固たる技術を持つ事の必要性を述べるとともに、低コストで必要に応じて打ち上げる即応型小型衛星の開発構想について語りました。人工衛星の小型化・低コスト化・短納期化は、安全保障から商用利用まで効果のある有用な技術で、世界各国で開発が進んでいます。日本でも官民合同でASNARO計画として開発が進んでおり、安全保障分野にも即応型小型衛星として様々な利用が想定されます。
官民合同プロジェクトASNARO。(一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構サイトより) |
また、防衛省技術研究本部の研究についての発表では、従来の陸海空と電子装備品についてのセッションの他に、無人機、防衛省外との連携についてのセッションが設けられている事も今年の特徴で、今後の防衛省の研究開発での注力点になると思われます。
無人水中航走体(UUV)の水中グライダー試作機 |
防衛技術シンポジウムは11月12日まで、市ヶ谷のグランドヒル市ヶ谷にて開催されています。誰でも入場可能ですので、興味のある方は足を運んでみてはどうでしょうか。
【関連】
森本敏 編・著「武器輸出三原則はどうして見直されたのか?」
外部との共同研究の1つの形態であるところの国際共同開発。とかく、企業の利益等の文脈で語られる事の多い武器輸出三原則見直しですが、米国以外の国との国際共同開発では避けて通れない道でもあったということを、防衛相も務めた森本敏氏が解説。森本さんはほとんど名前貸しですけどね……。
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