2016年12月2日金曜日

新語・流行語大賞。実際に流行ったのかグーグルに聞いてみる

今年も残すところあと1ヶ月。皆様いかがお過ごしでしょうか。

さて、今年も『「現代用語の基礎知識」選 ユーキャン新語・流行語大賞』が発表されました。年間大賞と大賞を含むトップ10は、次のとおり発表されています。

【年間大賞】神ってる
【トップ10】聖地巡礼
【トップ10】トランプ現象
【トップ10】ゲス不倫
【トップ10】マイナス金利
【トップ10】盛り土
【トップ10】保育園落ちた日本死ね
【トップ10】ポケモンGO
【トップ10】(僕の)アモーレ
【トップ10】PPAP
【選考委員特別賞】復興城主

ところが、このような選考結果に対し、ネット上では違和感を表明する人が相次いでいます。私自身も単に疎いだけかもしれませんが、大賞を獲った「神ってる」って言葉は初めて知りました。選考委員特別賞は熊本地震被災地への応援という意味があるので分かるのですが、トップ10の中には首を傾げるものが多いのではと感じます。

私個人の思い込みや、周囲の反応だけを拾っているせいなのかもしれませんが、ライター・評論家のさやわか氏も「「神ってる」流行語大賞受賞に違和感が噴出するワケ」という記事で次のように書かれています。


毎年、年末になると発表される「新語・流行語大賞」。年の瀬の多くのイベント事がそうであるように、この賞は「あったあった、こんな言葉」と1年を思い返せるところに楽しみがあるはずだ。
しかし世の評判を見ると、最近は「こんな言葉は流行っていなかった」「もっと他に流行った言葉があった」など、違和感を表明する人が増えている。なぜだろうか。


さやわか氏もご自身、そして世間に違和感が溢れていると考えており、広い範囲でこの違和感は共有されているようです。

しかしながら、一企業が独自の基準で審査員をつけて発表した「流行」にとやかく言っても、あまり意味は無いかもしれません。「違和感がある」と文句を言っても、「うちはそう思ってる」と返されたら、あとが続きません。しかし、この大賞がそれなりの権威を持って世の中を闊歩している以上、この違和感に毎年付き合わされるのには、正直ぼくは気持ちよくありません。

そこで、定量可能な指標で、本当に流行っていた言葉なのか? ということを検証してみたいと思います。その指標としては、グーグルで今年検索された回数を調べて、それがどれだけネット上で注目を集めていたのか判断してみましょう。すると、面白い結果が分かりました。



圧倒的なポケモンGO

グーグルで検索された単語の検索傾向については、グーグルトレンドで視覚化して表示できます。グーグルトレンドでは単語が検索された絶対数は分からないのですが、指定された期間で最も検索された週を100として相対的に表わしています。つまり、Aという単語が最も検索された週で100万回検索されたとすると、50万回検索された週は50と表されるのです。Aという単語が最も検索されたなら、その最も検索された週を基準として、他のBという単語も比較することも可能です。

この仕組を用いて、新語流行語大賞トップ10の言葉が、どれだけネット上で検索されたかを表してみましょう。すると、下のグラフのような結果になりました。

新語流行語大賞トップ10のグーグルトレンドでの推移

水色の線で現した「ポケモンGO」が最も検索された回数が多く、7月24日から30日の1週間で最も検索されています。

ところが、ここで問題が生じます。ポケモンGOが圧倒的過ぎて、他の単語より桁が2つも違うという事態になっていたのです。
「ポケモンGO」が最も検索された週を100とすると、ポケモンGOに次ぐ「PPAP」と「マイナス金利」が最高でも2しかなく、他の7単語に至っては”0”です。つまり、ポケモンGOの百分の一も検索されていない事になります。100倍以上差があると、ここで表示できる折れ線グラフでは判別が付きません。ポケモンGOの化物ぶりが窺えます。



ポケモンGO抜きにしてもゼロの「アモーレ」「トランプ現象」

これでは比較にならないので、ポケモンGOを抜きにして、次点のPPAPを100として基準点にしてみましょう。それが次のグラフです。

2016年新語・流行語大賞トップ10のグーグルトレンドでの推移(ポケモンGOと0項目除く)

だいぶ見やすくなりましたね。このグラフでは「PPAP」が最も検索された週が100に対し、「マイナス金利」が最も検索された週が76で、結構いい勝負です。ただ、この2つ以外はパッとせず、「保育園落ちた日本死ね」が一週だけ14になった他は、他の全単語は一桁台です。なお、このグラフの凡例に「(僕の)アモーレ」、「トランプ現象」がありませんが、両者についてはPPAPを基準にしても0でした。つまり、この両者はPPAPの百分の一以下、ポケモンGOの五千分の一以下の検索回数ということになります。本当に流行したんでしょうか。



今年話題になったあの映画を突っ込んでみると

ポケモンGOの圧倒的強さに他が霞む流行語となりましたが、他にも今年流行ったものがありましたよね。例えば、興行収入が194億円を突破し、邦画歴代2位になるとも言われている映画「君の名は。」は、まさに今年を代表する流行でしたね(新語流行語大賞トップ10になぜか入ってませんが)。「君の名は。」の他にも、例えば「トランプ現象」ではなく、単純に名前の「トランプ」と入力するとどうなるでしょうか。このような単語とトップ10のツートップを比較してみました。

「ポケモンGO」、「PPAP」、「トランプ」、「君の名は。」のグーグルトレンド推移

ああ、これでもポケモンGOには及びません……。「ポケモンGO」100に対し、「トランプ」が最大17、「君の名は。」が最大10となっています。「トランプ」「君の名は。」は、瞬間的に「ポケモンGO」を抜く事はあっても、ピークが遠く及んでいません。それだけポケモンGOに注目が集まっていたのと言えるかもしれません。


検索回数=流行ではないけれど……

しかしながら、これはあくまでグーグルの検索回数というだけで、イコール流行とは完全に結びつかないのも事実です。例えば、ポケモンGOはゲームですので、ポケモンが出るポイント探しに同じ人が何回も頻繁に検索することが考えられます。しかし、それを考慮しても、莫大な数のポケモンGO情報が求められていたのは事実で、検索回数は他を圧倒しています。そして、ポケモンGOの五千分の一に満たない検索回数の言葉って、少なくともネット上では流行語とは言えないのかなあ、と思います。まあ、世間もネットも大して乖離が無くなってきた時勢ではありますが。

なお、グーグルは12月中旬に「Year in Search: 検索で振り返る」を発表しています。まだ今年は発表になっていませんが、興味のある方は、真のグーグル検索回数1位がなにか、チェックしてみてもいいのではないでしょうか?

なお、本記事で用いたグーグルトレンドの検索条件は次のとおりです。
国:日本
期間:2016年
カテゴリ:すべてのカテゴリ
検索対象:ウェブ検索

※記事初出時、「(僕の)アモーレ」、「トランプ現象」の検索数について、「ポケモンGOの一万分の一以下」としましたが、「五千分の一以下」に訂正致しました。

2016年10月25日火曜日

軍事技術研究とポケモンGO

防衛装備品への適用に繋がる技術研究について、防衛装備庁が大学や企業などの民間機関に研究費を出資する「安全保障技術研究推進制度」が昨年度に設立されました。このファンド制度を受けて、学会や大学が軍事技術研究とどう関わっていくのかについて、様々な議論が活発化しています。

科学者が戦争に加担した反省から軍事研究を禁じてきた日本学術会議が、方針を転換するかどうかの議論を続けている。武器輸出を進める政治側の動きを受け、防衛省が昨年、研究費の公募を始めたのがきっかけだ。7日の同会議総会では、「軍事と民生技術の線引きが難しい時代だからこそ、方針の堅持を求めたい」とする意見が相次いだ。


しかし、この問題の議論については、「軍事技術研究」という言葉だけが先行している感があります。そこで、防衛装備庁が手本としている制度の特色とその成果。そして我々の暮らしにそれがどう関わっているかを紹介し、ともすれば破壊を伴う技術とどう付き合っていくかについて考えていきたいと思います。



成果を求めない高リスク研究への投資

防衛装備庁が行っているファンド制度が、アメリカ国防高等研究計画局(DARPA)を手本にしていることは、様々な機会で関係者が発言しています。DARPAとはアメリカ国防総省傘下の機関で、アメリカ軍の技術的優位を確保することをその目的としています。

1957年にソ連が世界初の人工衛星スプートニク1号打ち上げに成功すると、世界に大きな衝撃をもたらしました。この出来事はスプートニク・ショックと呼ばれ、アメリカの技術的優位が崩れたと深刻に受け止められました。対策に迫られたアイゼンハワー大統領は、これまで陸海空軍でバラバラだった宇宙空間・安全保障分野における技術開発指揮系統の集約化を行います。この結果、1958年に設立されたのが、航空宇宙局(NASA)と、DARPAの前身である高等研究計画局(ARPA)でした。

DARPAの特色として、DARPA自体は研究施設を有しておらず、職員もごくわずかしかいない点が挙げられます。DARPAでは公募により広く一般の研究機関から研究を集め、採用した研究に対し研究資金の出資を行い、職員はその研究をマネジメントしています。研究成果は一般公開されており、防衛装備庁のファンドもこれを踏襲しています。

災害救助ロボットを競う、DARPA主催競技会の様子。日本からも5チーム参加

近年は民間での研究開発予算の削減から、研究にも具体的成果が求められるようになっており、そのことが研究の大きな足かせになっている事が様々な研究者から指摘されています。しかし、DARPAは研究のポテンシャルを重視し、具体的な成果に結びつかないリスクの高い研究に対しても出資を行っています。インターネットの原型となったARPANETや、GPSといった今日の暮らしに欠かせない技術も、DARPA(その前身のARPA含む)の出資によって生み出されています。



「インターネットは軍事技術発祥」という誤解

インターネットの誕生にDARPAの資金が関わっていたことで、インターネットは軍事技術なのか、と思われる方もいらっしゃると思います。また、「インターネットは軍事技術発祥」という言説をご存知の方も多いでしょう。ところが、日本の「インターネットの父」と言われる村井純慶應義塾大学教授は、そのような見方を否定しています。

インターネットの誤った伝説のひとつは、ARPANETは軍事用に開発され、それが民間に転用されたというものだ。これは、ARPAが研究資金を出していたことから憶測された誤解である。

パケット交換方式でデジタル情報を伝搬する技術は、障害に強いネットワークの基礎になるので、そういう意味では軍の目的にもかなっているのだが、ARPAのファンドの基本方針は、軍事目的に直結している研究をやれとは言わないことだ。そういう研究は国防総省がやればよいという考え方である。

(中略)技術トレンドからはずれたとんでもないアイデアだけれど、何か大化けするかもしれないという研究は、ARPAの守備範囲になる。そういうものにファンドしておけば、結局は軍のためになるだろうという考え方はあるだろう。しかし、それが直接の目的ではない。



DARPAの出資する研究には、軍事的な色彩が薄く、かつ海の物とも山の物ともつかないようなものも守備範囲としています。ただ出資者が軍の機関というだけで、軍事目的の研究だと言うのは飛躍であるということです。そして今日、インターネット以外にも我々の生活の身近に密接に関わってくる、軍事とまるで関係なさそうなものにも、軍関係の資金が関係しています。



Googleマップ・ポケモンGOはCIAの出資で生まれた?

米中央情報局(CIA)のベンチャーキャピタル部門であるIn-Q-Telは、DARPAよりずっと後の1999年に設立されたものの、既に我々の生活にも密接に関わっているイノベーションに携わっています。In-Q-Telは、アメリカのインテリジェンス・コミュニティ(国家の情報機関の情報を一元化する機関)のミッションに優位性を与える将来性のある民生技術に焦点を当てた投資を行っており、その著名な成果の一つがGoogleアースやGoogleマップの原型となった技術です。

今やスマートフォンにとって、地図情報サービスは欠かせないものとなっていますが、Googleマップは地図情報サービスの中でも草分け的で、現在でも圧倒的な存在感があります。これらの基盤となっている技術は、元は2004年にGoogleに買収されたKeyhole社が開発したものでした。このKeyholeはIn-Q-Telから出資を受けており、創業者のジョン・ハンケ氏は以後もIn-Q-Telやその関係者と深い関わりを持っていると言われています。

Googleに買収された後、ハンケ氏はGoogleでGoogleアースやGoogleマップといった地理情報サービス担当副社長となり、2011年にGoogleの社内スタートアップとしてNiantic Labsを設立。そして2015年にはNiantic, Inc.(ナイアンティック社)としてGoogleから独立します。このナイアンティックは、後にポケモンGOを開発します。

ナイアンティック創業者・CEO ジョン・ハンケ氏(Gage Skidmore撮影)
ポケモンGOは、実際の地図情報やカメラによる拡張現実(AR)を取り入れたゲームですが、この地図情報の基盤はGoogle Mapを利用しているとされます。また、元In-Q-Tel職員で、在籍中にKeyholeへの出資を行ったギルマン・ルイ氏はナイアンティックにも出資を行い、ナイアンティックの取締役に就いているなど、現在でもIn-Q-Telの人脈が生きています。このように、一つの技術をキッカケとして、オンライン地図からゲームに至るまで、様々なイノベーションを引き起こしている事が分かります。

さて、ここで私が「ポケモンGOは軍事技術」と書いたら、多くの方は「何言ってんだコイツ」と思われるでしょう。実際、ポケモンGOと軍事技術に直接的な繋がりはありません。ポケモンGOの基盤となる技術はネット上の地図情報サービスであり、この研究にCIA関連機関が出資していたというだけです。情報機関に役立つけど、それ以上に民間にも大きなメリットをもたらした技術です。金の出処が情報機関関係、というだけでその研究を軍事研究だと色分けすることは、あまり賢い判断ではないでしょう。

技術が相互に関連し、コア技術を中核として様々な派生技術が生まれている現在、基礎的な技術自体に軍用か民生かという色分けは出来ません。技術の出自を問うよりも、技術が倫理的に正しく使われているかから判断する方が現実的ではないでしょうか。

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2016年10月2日日曜日

長谷川豊が勇んで突っ込んだ地雷原

お久しぶりです、dragonerです。ブロガー名乗っているのに、今年はほとんど記事書いてません。ここまで書いてない期間が長いと、8月に出させて頂いた新書はブログ記事30本分の分量があるので許してください、というネタも使えなくなりつつあります。


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リハビリに何か書こうと思っていた所、世間では長谷川豊の「殺せ!」が話題になっていました。この人、前から明らかに逆張り野郎で主張には同意できんし、「映画吹き替えはタレントじゃなくて声優使え!」みたいな数少ない同意できる主張でさえ、こいつは表に出してはいけないヤツや、とスルーしてきましたが、一躍時の人となっています。そういうわけで、遠慮なく長谷川豊について書ける環境になったようですので、ここで長谷川豊問題について書いてみたいと思います。

さて、ここでは長谷川豊の発言について、その倫理的な問題、嘘や誇張・誤りなどの事実関係の問題については触れません。そういうのは既に多くの組織、メディアや個人が行っていることで、今更私ごときがやる必然性はないからです。

じゃあ、ここではなにを書くかというと、長谷川豊が喧嘩を売った相手は誰で、どのくらいいるのか? という点について、ざっくり考えたいと思います。つまり、長谷川豊はどれだけの人を敵に回したのか、ということです。


読売テレビに喧嘩を売る

長谷川豊を電話一本でレギュラー番組から降板させた読売テレビは、結構意味深なコメントを残しています。朝日新聞が伝えていますので、以下に引用します。

読売テレビ総合広報部は「長谷川氏のブログ、およびその後の患者団体による抗議への長谷川氏の対応などから総合的に判断した」と説明した。


読売テレビが言うには、ブログ記事だけではなく、その後の患者団体の抗議と、長谷川豊の対応についても考慮した上で判断したとのことです。ここ、結構ポイントじゃないかと思います。

最初に問題となった9月19日のブログ記事「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!今のシステムは日本を亡ぼすだけだ!!」で、長谷川豊が「殺せ」と言ったのは、「自業自得の人工透析患者」でした。文面からすれば、2型糖尿病由来の慢性腎不全患者の事を指すのかと思いきや、それ以外の透析患者にも鉾を向け、「実際に人工透析を受けている患者さんの8~9割が自業自得」とまで言っています。

ちなみに、全透析患者のうち、糖尿病由来の透析患者は4割台で、半数以上はそれ以外の原因です。長谷川豊の恐ろしいところは、これを知っていて書いたこと。つまり、彼は「自らの意思で敵を倍増させた」か、あるいは「敵を倍増させる事を言っていると自分で理解していなかった」のどちらかであって、どちらであっても正気の沙汰でありません。

これに対し、患者団体の全腎協(全国腎臓病協議会)から抗議が来るわけですが、これに対して長谷川豊が取った言動は、「おマヌケ」、「どんな読解力をされているのですか?」、「利権集団」、「とっとと解散すべきだ」、「脅迫集団」と、全腎協そのものに対しても全力で喧嘩売ってはります。糖尿病由来慢性腎不全の透析患者に加え、全透析患者、さらには全腎臓病患者に攻撃対象を拡大したわけです。

このようにして、自身の炎上にガソリンを特盛り追加した長谷川豊大先生ですが、ここで読売テレビの話に戻しましょう。

長谷川豊の対応を見た読売テレビは、無慈悲な降板を告げます。なお、80年代から90年代前半のテレビ黄金期によみうりテレビ(現・読売テレビ)社長を務めた青山行雄名誉会長は、2002年に急性腎不全により亡くなられております。現在の読売テレビの幹部にも、青山名誉会長の部下が大勢残っているでしょうに、思いっきし虎の尾を踏んでますね。このように、全腎臓病患者にまで攻撃を拡大したことにより、読売テレビからグーパン食らったのではないでしょうか。見事なまでの野放図な戦線拡大による失敗です。


日本人の八分の一とその家族に喧嘩を売る

さて、長谷川豊のブログを読むと、どうやら長谷川豊は腎不全の問題を、日本人のうちのごく一部の問題と捉えているようです。だからここまで尊大で横柄な態度を示せるわけです。

ところがどっこい。例えば全腎協は、日本最大の患者会であることを謳っています。それだけ患者が多い病気ということで、家族を含めれば相当な数になる証だし、患者相互の連帯意識も高い組織なわけです。

そして、現在問題になっている腎臓の病として、慢性腎臓病(CKD)があります。慢性的に進行する腎臓病ですが、その患者は日本国内で1330万人いると推測されています。全成人の八分の一に相当します。これを読んでいる貴方もそうである可能性が高いし、私もそうかもしれない。将来CKDから、透析が必要になるまで悪化する人も当然いる。家族も含めれば数千万人の日本人に対して、長谷川豊は喧嘩を売ったのです。自ら進んで地雷原に突っ込んでいく様は、長く語り継がれることでしょう。

さて、自分がレギュラー出演していたテレビ局を敵に回し、さらには日本中を敵に回した長谷川豊ですが、味方してくれるのはブラックマヨネーズ吉田とか、全く頼りになりそうにない人しかいないみたいです。ここはもう日本での活動は諦めて、「麻薬中毒者は自業自得」とフィリピンのドゥテルテ大統領の報道官への転職というキャリアを考えた方が良さそうです。

まあ、「自業自得」だし、仕方ないよね!(完)

2016年7月12日火曜日

仲裁裁判所が否定した九段線とは?

中国が南シナ海全域に管轄権を主張して引いた「九段線」について、フィリピンが仲裁裁判所に提訴していた裁判で、仲裁裁判所は一二日中国側の主張する「九段線」に法的根拠がないとする判決を下しました。

【マニラ=向井ゆう子】中国が南シナ海で主張する「九段線」は国連海洋法条約に違反するなどとして、フィリピンが2013年に提訴した仲裁裁判で、オランダ・ハーグの仲裁裁判所は12日、「九段線」について歴史的権利を主張する法的根拠はないとする判決を示した。
これを受けて中国が反応するかがこれから注目されますが、黙って従う可能性は低く、今後さらに問題が加熱するかもしれません。

さて、この裁判関連の報道でよく見かけるのは、「九段線」という言葉です。これは、中国が管轄権が及ぶと主張する領域を示す地理上の概念ですが、南シナ海のほぼ全域に渡っており、下の図の赤い線が九段線になります。

佐々木健「中国の南シナ海進出と国際社会の対応」参議院事務局企画調整室より

中国も加盟している国連海洋法条約では、沿岸国の基線(領海の基準となる線。おおむね海岸線と思って下さい)から12海里(約22km)以内を沿岸国の主権が及ぶ領海とし、200海里(約370km)以内を排他的経済水域(EEZ)として、沿岸国に資源や開発の排他的権利を与えています。

ところが、九段線の範囲は、仮に南沙諸島を中国が領有すると認めたとしても、EEZでもここまで広くはなりません。'''九段線の範囲は現行国際法上の何に基づいているかが不明'''なのです。中国は南沙諸島の領有権、領海やEEZに加え、今回裁判で否定された南シナ海の「歴史的権利」を持つとしていますが、それで何が得られるかが曖昧なのです。

そもそも、九段線の元となる線を最初に引いたのは、現在の中国(中華人民共和国)ではなく、戦前の中華民国政府でした。

1930年に中華民国政府が発行した地図で南シナ海の島嶼の領有権が主張され、続いて1947年に「中国の権威が及ぶ範囲の限界」として、南シナ海に11の区画線からなる「11段線」を引きました。1953年には2つの線が削除され、現在の九段線の形になりました。つまり、現在の中国は、かつての中華民国の立場を受け継いでおり、中国のネットサービスの地図にはデカデカと九段線が描かれています。

ところが、この11段線、九段線を引いた側の中華民国(現在の台湾)も、中華人民共和国も、九段線の法的な意味を未だに明らかにしていません。誤解されがちですが、領有権の主張ではなく、「管轄権」であり、これが具体的にどういう権利を主張しているのか、よく分かっていないのです。

この九段線の法的意味合いについては、中国内外でも議論されてきましたが、その中で出ている意見に、「外交に戦略的曖昧さを持たせることで外交で取れる行動の幅を拡げるため」という推測があります。最近になって、これを裏付ける発言が、6月に開かれたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)に参加した中国政府関係者から出ています。

 姚云竹少将は「シャングリラ対話」の一環として4日に開かれたセミナーで「中国にとって、そしてその他の領有権主張国にとって、曖昧さが良いことかもしれないと今なお考えている」と発言。「その結果、中国など領有権主張国にとって動ける余地が広くなり、妥協する余地が広くなる」と述べた。

つまり意図的に曖昧にすることで、出せる手札を多くするという手のようです。

もっとも、今回の判決で国際的には中国の歴史的権利は否定されました。この後、中国がどのような反応を見せるかですが、南シナ海の緊張が高まるかもしれず、注視が必要です。

日本では尖閣諸島の問題ばかり注目されがちですが、南シナ海は周辺国家にとっても重要なのはもちろん、日本を含む東アジアの国にとっては、中東・ヨーロッパからくる船のほとんどが通過する重要な海域です。平和安全法制の審議で例に出されたホルムズ海峡以上に重要な海域なのは自明で、一国がここの管轄権を主張する事態は日本の安全保障上の重大問題になり得ます。せめて、尖閣並に注目されてもよいのではないでしょうか。


【参考】

吉田 靖之 「南シナ海における中国の「九段線」と国際法」海幹校戦略研究 2015 年6 月

佐々木 健 「中国の南シナ海進出と国際社会の対応 」参議院事務局企画調査室

上の2論文はネットで見られる中で、南シナ海問題の整理に役立ちます。特に上は国際法上の議論や歴史的権利にも触れており、大変参考になりました。


李克強「中国と周辺国家の海上国境問題 」『境界研究』No.1

また、現在中国共産党序列2位の李克強首相が副総理時代に書いた論文は、中国の主張の整理に役立つと思います。

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2016年6月5日日曜日

歴史的写真を自動彩色AIで彩色してみた

早稲田大学理工学術院の石川博教授のチームが、人工知能を用いた白黒写真の自動色付け研究を発表して、そのソースコードを公開した。


ディープネットワークを用いた大域特徴と局所特徴の学習による白黒写真の自動色付け


非商用なら使えるということで、パブリックドメイン入りした歴史写真(戦争もの)をとにかくつっこんで遊んでみた。自分は彩色に関する知識は全くなく、彩色は完全にAI任せである。やったことは、画像サイズの縮小くらい。長辺640ピクセルくらいに画像サイズを落とさないと、メモリ使用量がとんでもないことになるので、やろうとする人は注意しよう。


【わりと成功したもの】





マッカーサーのフィリピン上陸。再現性は?だけど、雰囲気は出ている。




モロトフ=リッベントロップ協定の調印の様子。「これから毎日ポーランド割ろうぜ?」という悪い奴ら感が出ている。




 北アフリカのロンメル将軍。正直、この白黒写真からカラー化がむずいような気がしてたが、思いの外良い雰囲気のカラー写真になった。




空母上の米海軍機。飛行甲板の色がこれで正しいのかちょっとわからないけど、機体と海の色は良い感じ。




沖縄戦でロケット弾を発射する米軍機。機体と空と陸をきっちり認識して彩色してて、当時のカラーフィルムと言えば信じてしまいそう。




パリに入城するドイツ軍を涙目で見ているおじさん。通称スンスンおじさん。セピア退色したカラー写真と言えばそれっぽいけど、ディープラーニングで本来の色でなく、退色まで学習したってことなのん? 実はパリで撮られたものではない説があるが、アメリカのアーカイブにはパリと日付まで書いてあり謎。




ヒトラーとエッフェル塔。ヒトラーら手前の人物らのカラー化は良いけど、エッフェル塔の上部が黄色くなっていたりして少し変。




日本の降伏でお祭り騒ぎのニューヨーク・タイムズスクエアでのキス。良い雰囲気だけど、これも本来の色というより、古いカラーフィルムの色といった再現。なお、この写真が撮られた時期は、実は対独戦勝の日じゃないかという説もあったはずだけど、どう決着したのかな。


 【ちょっと微妙なの】



 硫黄島に揚がる星条旗。星条旗のカラーは認識されているけど、本来の色というより、当時のカラーフィルムの色再現って感がかなり強い。空の色もちょっと微妙。



同じく硫黄島。遠くに摺鉢山が見える。元の写真がはっきりしているせいか、写真も雰囲気がよい。






 アメリカ義勇軍(フライング・タイガース)の戦闘機を警備する中国兵。このP-40の配色は正しいんだろうか。自然風景は割と再現度高いが、人工物の彩色はかなり怪しい傾向にある。








上から戦艦大和、駆逐艦雪風、戦艦長門。いずれも艦橋がサビっぽくなり、船体が青味が強くなる傾向がある。





 砲撃する戦艦アイオワ。炎や爆発の彩色に弱い傾向が見られた。





 真珠湾攻撃。かなりビビッドな感じで、同じく爆発も微妙。


【問題あり】




 ヒトラーによるオーストリア併合の発表。これはホント酷い。けばけばしいピンクの悪趣味度がごっつい。




 進行するアメリカ戦艦。風景写真はわりと成功するのだけど、この写真に限っては空の青が黄色く、いろいろとアレ。




 ヤルタ会談での3巨塔。全体的には決して悪くないのだけど、真ん中のルーズベルトが生ける死体と化している。ほんとにこのすぐあとに死ぬので、本当にこんな色だった可能性もあるかと思ったが、この時の写真はカラーも結構残っていて、それと比較しても変だった。




真珠湾攻撃に空母から発艦する日本軍機。元の写真が悪いせいも大きいと思うけど、これも相当おかしい。



とりあえず総評として、人工物については結構成功失敗が別れるのと、元の画像がちゃんと撮れているか否かも結果に響いてくる。シャープなアメリカの写真は成功例が多かったが、日本の写真はちょっと悲しい結果(そもそも使えるのが少ないけど)。

個人やプロによる彩色で、本当に鮮やかで美しい写真も多くあるが、それにはまだまだAIは達していない状況。しかし、だいたい数秒でまあまあの結果を返してくるのはさすが。個人でも十分使えます。

戦争写真だから人工物が多いけど、この研究だとむしろ風景写真が主らしく、その再現度はかなり高いのでググってそっち見てください(なげやり)。