2011年11月10日木曜日

防衛技術シンポジウム2011 「P-1哨戒機 ソノブイ」



昨日に続いて技本の東日本大震災における支援についての記事をアップしようとしたのですが、ちょっとまとめるのに時間がかかりそうなので、先に展示品の中から目についたものをご紹介します。

P-1哨戒機開発に併せて作られたソノブイ

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まずは、P-1哨戒機開発に併せて開発されたソノブイです。お話を伺った所、このソノブイは4種類あり、潜水艦の音響を探知するパッシブ・ソナーと、自ら音を発して反射音を調べるアクティブ・ソナーが、それぞれ二本ずつ(デジタル式、アナログ式)あるそうです。特徴としては従来のソノブイと違って哨戒機との通信はデジタル式であり、また従来のP-3Cでも使用できるアナログ式も存在するとのことでした。

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表示部を拡大してみると、通信帯やチャンネル、深度の選択表示等が窺えます。また、自沈時間を30分から6時間の間で調整できるとのことでした。

また、先程P-3Cでも使えると記述しましたが、格納時のソノブイの大きさは従来のものと同一で、P-3Cからも投下可能です。

防衛省技術シンポジウム2011 特別セッション「福島第一原子力発電所の赤外線温度計測」の補足



特別セッションでの「福島第一原子力発電所の赤外線温度計測」とは別に、展示ブースにて実際に計測に使った機器やパネル等の展示があり、その中で赤外線温度計測に実際に行かれた方がいらしたので話を伺いました。以下はその要約です。

・計測の1時間前にはヨウ素剤を飲むように指示されていた。

・計測に使ったCH-47は揺れが強く、ビデオカメラのオートフォーカスの補正が間に合わないのでマニュアル撮影した。

・霞目駐屯地からJヴィレッジへ向かう途中に計測時と同じ高度を飛行し、田んぼの畦道等にピントを合わせていた。

・Jヴィレッジで、機内で線量測定を行う特殊武器防護隊の隊員を乗せて出発。

・技本は基本は後方なので現地任務に慣れていない。重い鉛スーツや防護服で作業は困難で、ヘリ酔いを起こす人もいた。

・事前準備ができないので、有り合わせの計測機器や装備で行った。

・計測機器をビデオカメラとして使う場合、IEEE1394で出力する必要があったので、ノートパソコンが必要だった。

・当初持っていったノートパソコンがヘリの振動で使えなくなることが多々あり、急遽技本でパナソニックのタフブックを5台調達して使った。タフブックはヘリの振動でも問題なく動いた。

・計測中、機器を動かせないので手袋を外して素手で作業していた。

・撮影はヘリの揺れや風の為、ブレやピンぼけが多く使えないものが多かった。公開されているビデオは写りが良いもの。

・原発の上空通過中は撮影失敗しても止めることなどができない。一度に5回撮影することで対処。

・揺れがあるため、写真撮影ではなくビデオ撮影だった。

・ビデオカメラを固定するシート等は、東急ハンズで買ってきた。

・ヘリの中ではインカムで会話するが、フルフェイスマスクをしているのでノートで筆談していた。

・自衛官ならマスクをしてもインカムで話せる訓練を受けているが、技官は受けていないので筆談だった。

・撮影後、Jヴィレッジに戻り、そこで特殊武器防護隊の除染を受けた。

・撮影データは市ヶ谷へUH-1で輸送。無線送信などもあるが、映像データが大きいので現物で送った。

・市ヶ谷で分析チームが分析を行い、温度を判定する。

・自分は測定するだけだけど、後方は緊急の調達や分析があり、非常に大変だったと思う。

・作戦名は「絆作戦」。部内で勝手につけた作戦名。他でそういう作戦名が使われたが、うちが元祖。

以上。完全に記憶ベースですので、記憶違いも多いと思いますが、ご了承ください。

<2011/11/10 23:50>写真追加。

実際に計測に使われたPanasonic タフブック

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ヘリ機内の筆談で使われたノート

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計測で使われたテープレコーダー。ノートPCより動いてくれたとのこと。

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防衛省技術シンポジウム2011 特別セッション「福島第一原子力発電所の赤外線温度計測」



福島第1原発の赤外線温度計測を行った、航空装備研究所(当時)の外園プロジェクトリーダーによる発表要旨。


■発災時

・発災当時は航空装備研究所の本部長。
・原子力災害は自衛隊の本来任務としてあるが、技本の仕事は後方だった。


■経過

3/18 事前準備。計測員市ヶ谷発(電子装備研究所員中心)
3/19 第一回計測
3/20 第二回計測
3/21 原則毎日確認の方針が出る
3/23 第三回計測
以降、4/6まで毎日計測。それ以降は2日に一回を4/26まで行った。


■概要

期間:3/18~4/29の43日間。
CH-47飛行回数:26回
計測員:101名(延べ人数)
プロジェクト人数:77名(内、本部19名、計測32名、分析12名、飛行7名、他)
松島基地と仙台空港が津波で使用不可の為、ヘリのベースを霞目駐屯地に。 
技本所属のBK117ヘリを岐阜から立川へ移動し、人員輸送。
霞目駐屯地からCH-47でJヴィレッジへ。Jヴィレッジから飛び、福島第一原発を撮影。
撮影は南から、4号機→3→2→1号機の順番。
計測したビデオデータは、JヴィレッジからUH-1Jで市ヶ谷へ持って行き分析。


■撮影条件

第一回計測は高度1,000フィート(高度300メートル)から撮影。
第二回以降は高度3,000フィート(900メートル)から。
基本、一度に5回撮影。
カメラ:NEC Avio 赤外線サーモグラフィ装置 H2640(メーカーサイト
実際に撮影に使われたカメラ

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■安全管理

γ線と中性子線を計測(写真:実際に使われた計測計)

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ヨウ素剤の服用

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計測前後に診断実施。

第一回の測定では約100μシーベルト被曝(高度を上げた2回以降は微量)。

以上。




防衛技術シンポジウム2011 特別セッション「東日本大震災に対する支援活動」



 ご無沙汰しております、dragonerです。


 毎年恒例にしていた防衛技術シンポジウムのレポートですが、昨年はサボり癖が祟り、おざなりな速報上げてポイな状態のままでしたが、今年は心を入れ替えてしっかりやろうと思います。多分(maybe的な意味で)。


 さて、今年は3月に震災があった関係からか、従来企業や独法・大学等が多かったポスターセッション等が小さくなり、代わりに震災関連展示ブースが多くなっておりました。今回の特別セッションでも「東日本大震災に対する支援活動」と題し、後方の研究機関である技術研究本部が初めて現場任務を与えられ、福島第一原発の温度測定ミッション等を紹介しておりました。今回は技術的なモノよりも先に、まずはこちらをレポートしたく思います。





■特別セッション「東日本大震災に対する支援活動について」要旨


 従来、技術研究本部でのオーラルセッションで技術研究本部長が発表者として登壇することは無かったのですが、今回の震災では本部長自身が当事者の一人であったので、初めて秋山本部長が開会のあいさつに続いて発表を行いました。以下はメモから起こした要約です。





秋山研究本部長発表要旨



 原発対応について


  ・技術研究本部は研究開発を行う部門。現状に対処するのではなく、未来のことを向けてやる。


  ・発災直後、技本がなにか出来るとは思っていなかったが、時間が経つにつれて要請が出てきた。


  ・防衛省の某高官が執務室にやってきて、福島第一原発の赤外線温度計測をして欲しいと依頼された。


  ・当時自分(秋山氏)は本部長ではなく、艦艇が専門だったので赤外線は詳しくなかったが、当時の佐々木本部長は赤外線の専門家だった。


  ・赤外線に詳しい佐々木本部長は、出動を予期して事前に電子装備研究所長と話をして準備をしていた。


  ・CH-47輸送ヘリより撮影するが、窓を開けるなどしての撮影は危険なので、アクリル板に穴を開けてその穴からカメラで撮影。





 放射性物質対応について


  ・高空での空中放射能塵の測定を年4回定期集塵があったが(編注:月例とは違う?)、臨時で計測を行った。


  ・通常の放射能塵の分析は千葉県の財団法人日本分析センターに委託していたが、今回は分析量が多いので、技本でも分析を行った(編注:後述しますが、筑波大学でも行なっています)





 被災地支援


  ・発災からしばらくは民間で燃料が不足したが、技本では札幌試験場に備蓄していた灯油400キロリットル(ドラム缶2000本)を陸自を通じて、被災地に提供。


 ・以上の3点が、技本として行った震災支援。



 秋山本部長のセッションは以上。続いて、航空装備研究所(当時)の外園プロジェクトリーダーより、福島第一原発の赤外線温度測定の実施についての詳細発表。(現在、執筆中)





2011年9月23日金曜日

やる夫達が防衛技術シンポジウムを見学するそうです



 実験的にアスキーアートの「やる夫」を使った作品を作成しております。下記スレッドにパイロット版をアップしました。



【やる夫スレ】やる夫スレ作成宣言所28【やるお!】


やる夫達が防衛技術シンポジウムを見学するそうです



 昨年の防衛技術シンポジウムをやる夫達が見学する、という形で分かりやすく解説していきたいと思います。掲載はしたらば掲示板の「やる夫板Ⅱ」に専用スレを立てるつもりですので、アップ次第こちらでも告知致します。


 動画の方も併せてやりますよ。





2011年9月19日月曜日

平成23年度富士総合火力演習 後段演習(前編)



 もう先月の話になってしまいますが、総合火力演習に今年も行ってきたので動画をアップしました。



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 後段演習全体を見せようと思いますので長めです。画質の問題から数篇に分ける予定です。





2011年7月18日月曜日

在沖米海軍艦隊活動司令部 ホワイトビーチ施設見学ツアーに行ってきた(その1)

ここのところtwitterにかまけて、ブログの更新がtoo late, too littleという有様ではありますが、そんなtwitterでフォローしていた在日米軍司令部公式アカウント(@CNFJ)が、「在沖米海軍艦隊活動司令部 施設見学ツアー」をフォロワー限定で募集しておりましたので、深い考えもなく応募したところ、どういう訳か当たってしまいました。なので、はるばる下総から沖縄まで行って来ました。

ホワイトビーチは沖縄県のうるま市にある、在日米海軍や陸軍、海上自衛隊等の施設とも隣接しており、海軍と陸軍の2つの桟橋を中心とした施設群です。


大きな地図で見る




ツアー参加者はホワイトビーチ正門に集合。台風が心配されていましたが、強風とたまのスコールはあるものの晴天です。

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ツアーではまず、標的部隊の見学から始まります。在沖米海軍の標的部隊は、米第七艦隊の訓練支援業務、具体的には射撃用の高速無人標的機を運用している部隊です。下の写真はその標的部隊での施設にて撮影した標的部隊員達で、右にいる女性が部隊長です。

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この部隊が運用している無人標的機はBQM-74Eで、海上自衛隊でも運用されています。自衛隊ではむしろ、「チャカⅢ」と言ったほうが認知度が高いと思います。米海軍で運用しているものは、高度40,000フィート(12,000メートル)から7フィート(2メートル10センチ)までの高度を、最大時速900キロの亜音速で飛行することができます。

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このBQM-74Eの操作については、以下の三台のコンソールで行います。

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最近は無人偵察機をカメラの映像で操縦する例が増えていますが、このBQM-74Eはカメラの映像で撮影するのではなく、GPS信号と地図により現在地を確認しながら操縦桿を操作します。以下の2つの写真はデモモードを使った、実際の射撃を伴わないシミュレーションで、最初の写真の右のモニタは標的機の状況を表示しており、高度や速度、傾斜角等が表示されており、これを見ながら実際の操縦は行われます。また、左の写真でモニタ上に表示されている赤い線は標的機の軌跡が表示されており、その始点の緑アイコンは標的機を発射した訓練支援艦です。

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下はツアー参加者が操作して、発射した標的機が元の進路に戻っているの図。

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ちなみに、Windowsベースみたい。

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このBQM-74Eは、一機あたり50万ドル、現在のレートで約4,000万円ほどで調達されているそうです。標的を曳航するタイプではなく、自らが標的になるので最後は破壊されてしまうのですが、実弾での迎撃を伴わない訓練を2,3回は想定して作られており(そういう想定だけど、4回ほど使う例が多いそうです)、破壊されない場合はパラシュートで海面に降りてきて、ボートで回収され再利用されるそうです。

無人標的機を使う以上、発射する母艦や、回収する為のボートが必要になります。発射母艦はいなかったので見れませんでしたが、ボートやジェットスキーなどは施設内で見ることができました。

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上の写真のジェットスキーは人が乗って操縦する他にも、無人で遠隔操縦も可能とのことです。下の写真のような簡易的な無線操縦装置を見せてもらい、ジョイスティックでジェットの向きが変わる等のデモンストレーションも行って頂きました。写真の操縦装置は施設内で使うものだそうで、海上で使うものは10キロ離れていても無線操縦が可能とのことでした。


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これらの無人標的機は訓練においては重要なものですが、運用に非常にコストがかかる為、自国で運用している国はあまりいないとのことで、米海軍ではそれらの国にも共同訓練でこれらの機材を使って支援するそうです。最近はシンガポールやマレーシア等と訓練を行ったそうですが、これらの国への支援の為に、ホワイトビーチにいる時間はそう多く無いとのことでした。

また、説明いただいた在沖米海軍参謀長はP-3C哨戒機のパイロットだったのことで、そのパイロット資格を得るのに3年かかったそうですが、BQM-74Eの操縦は3ヶ月でマスターできるとのことで、運用も若い方が多く携われていました。




(その2)へ続く。




2011年3月16日水曜日

東北地方太平洋沖地震で活躍するであろう自衛隊装備について



 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震ですが、発生から4日経った3月15日現在も多数の行方不明者や連絡がとれない人がおり、その被害の全貌は判明に至っていません。自衛隊は創設以来最大となる10万人規模の災害派遣が計画されており、既に1万人以上の被災者を救出したと報道されております。現在は救出のフェーズですが、いずれ破壊されたインフラの代りに被災者に衣食住の生活支援を提供することになるでしょう。今回は救出から生活支援に到るまでに活躍すると思われる、自衛隊装備についてご紹介したいと思います。





■人命救助システム(2型)




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 地震・津波などの自然災害や航空機事故等を想定し、倒壊した建物や事故機からの人命救助を目的とした装備品をコンテナにまとめ、パッケージング化したシステムです。このシステムには油圧ジャッキやエンジンカッター、削岩機、破壊構造物探索器(ファイバースコープ)等の倒壊建物からの救助用具が空輸可能なコンテナにまとめられております。民生品で構成されており、日本ログフォース株式会社が納入しています。


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 実演中の破壊構造物探索器。先端部が柔軟に可動し、狭い隙間から中を捜索することが可能です。





■個人携行用救急品




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 個人・車両に携行し、現場の隊員自らが治療を行う為の医薬品を詰めたもので、被災者や隊員個人の負傷等に用いられます。こちらは制式化された装備品ではなく、派遣時の状況により内部の構成品は変わってくるとのことで、上に挙げた写真はハイチPKO派遣部隊用の構成例です。ハイチ派遣では現地の衛生状況が悪いため、包帯などのファーストエイドキットの他にも、下痢止めや目薬、目を洗浄するアイボン、蚊除け剤等が加わっています。これも中身は民生品主体です。





■野外手術システム




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 野外で外科手術を行う為のシステムです。手術車、手術準備車、滅菌車。衛生補給車の4輌から構成されており(写真は手術車、手術準備車)、手術車は手術準備車と連結して使用されます。手術車は手術時の面積を増やすために約2倍に拡張が可能です。1日に10人から15人の開腹・開胸手術が可能です。また、おおすみ型輸送艦に搭載して、簡易的な病院船化も可能です。


f:id:dragoner:20090411131122j:image:w640【手術車内部:手術台】


f:id:dragoner:20090411131112j:image:w640【手術車内部:X線装置】


f:id:dragoner:20110315185727j:image:w640【手術車内部:各種医療装置】





■1トン半救急車




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 自衛隊の野戦用救急車で、一般の救急車と同様に患者監視装置、除細動器、人工呼吸器等が積まれております。担送患者のみの場合は最大4名、独歩患者のみの場合は最大4名の搬送が可能です。製造はトヨタ自動車。





■化学防護衣4型、防護マスク4型(B)




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 恐らく、福島原発で炉心冷却作業を行っているであろう自衛官が着用していると思われる防護品です。防護衣とマスクを組み合わせることで、有毒な生物化学兵器・放射性物質の身体への付着・浸透を防ぎます。写真は全隊員に用意されているゴム製の防護衣で通気性がありませんが、これとは別に通気性のある素材を用いた個人用防護装備も存在します。製作は藤倉ゴム工業。


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 着用例。着込んだ隊員は「ものっそい暑いです」とのこと……。





■化学防護車(B)




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 福島第一原発に中央特殊武器防護隊所属の4両が派遣されたことが報じられている化学防護車です。地下鉄サリン事件でも出動したことから見覚えのある方は多いと思います。放射性物質・化学物質に汚染された地域での活動が可能で、空気浄化装置により車内でマスクをせずに放射線測定や有毒物質の検出等が行われます。製造は小松製作所。


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 また、搭載されたマニュピレータにより、車外に出ずに試料を採取することが可能です。





■除染車3型(B)




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 汚染された地域の除染に用いられる車両で、2500リットルの除染剤を広域に散布します。津波被害にあった地域での消毒作業に今後用いられるものと思われます。車体:いすゞ自動車、タンク部:東急車輛、加温部:ユニバーサル造船が製造。





■水タンク車




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 福島原発への冷却水輸送にも使われたことが報じられていますが、飲料水の輸送にも使用されます。5トンの水を輸送でき、ポンプも備えています。製造はいすゞ自動車。





■浄水セット 逆浸透型




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 今回の派遣で使用されるかどうかは分かりませんが、川などの淡水から飲料水を精製する車載の浄水装置です。長毛ろ過、限外ろ過、逆浸透ろ過の3つのろ過機能により、淡水から汚染物質・細菌・ウィルスを取り除くことが可能です。一時間あたり3.5トンの水を浄化する能力があり、5tタンク(写真手前の半球状のものです)2つに計10トン貯めることが可能です。東チモールPKO等、自衛隊の海外派遣では頻繁に活躍している装備です。


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 製造元の神鋼環境ソリューションの紹介資料。


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 実際に浄水セットを使用した、各ろ過過程での水の様子。右から元水、長毛ろ過後の水、限外ろ過後の水、逆浸透ろ過後の水。ろ過を経るごとに清浄な水になっているのが分かります。





■野外入浴セット2型




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 野外での簡易入浴を行うための装備品で、国内での災害派遣で数多く使われております。浴槽やボイラー、シャワー、スノコ等、給湯から温浴に必要な装置がまとめられており、1日に1200人の入浴が可能です。給湯に使用する水は。上記の浄水セット(逆浸透型)とは違い、長毛ろ過・限外ろ過の2つのろ過機能を持った浄水セットにより供給されます。逆浸透ろ過を使用していないので飲料には適さない代わりに、一時間あたりの浄化能力は7.5トンと、逆浸透型の倍以上の処理能力があります。


f:id:dragoner:20090411132934j:image:w640【浴槽】


f:id:dragoner:20110315194308j:image:w640【シャワー】


f:id:dragoner:20110315194309j:image:w640【脱衣所】





■野外炊具1号(改)




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 野外での調理に使用する調理器具で、炊飯用の釜、揚げ鍋等を備え、200人分の主食・副食が45分以内に調理できます。平成12年度から配備が始まった(改)では、冷凍冷蔵機能等が追加されています。





■ヘリコプター映像伝送装置




f:id:dragoner:20070516103219j:image陸上自衛隊第11旅団サイト】より


 ヘリコプターから映像情報を方面総監部等に送信する為の装置です。気仙沼の火災の様子を撮影したのもこの装置によるものと思われます。写真は撮影機のものですが、この装置はさらに中継機、地上受信装置、地上撮影装置、移動受信装置、衛星可搬局装置から構成されており、遠距離への配信を可能にしています。電装機器は日本電気、映像機器等は池上通信機、衛星可搬局装置は三菱電機の製造になります。





 以上で主要な災害派遣の装備を紹介しましたが、他にも装甲車等の戦闘車両も多数派遣されております。また、戦闘装備と違って、普段は注目されないこれらの災害対策装備ですが、駐屯地際等では展示されていることが多いので、機会があったら見て隊員の話を聞いてみると良いと思います。





参考資料



第11旅団部隊紹介 空中伝送班


㈱神鋼環境ソリューション 製品紹介 車載式浄水装置