2016年6月5日日曜日

歴史的写真を自動彩色AIで彩色してみた

早稲田大学理工学術院の石川博教授のチームが、人工知能を用いた白黒写真の自動色付け研究を発表して、そのソースコードを公開した。


ディープネットワークを用いた大域特徴と局所特徴の学習による白黒写真の自動色付け


非商用なら使えるということで、パブリックドメイン入りした歴史写真(戦争もの)をとにかくつっこんで遊んでみた。自分は彩色に関する知識は全くなく、彩色は完全にAI任せである。やったことは、画像サイズの縮小くらい。長辺640ピクセルくらいに画像サイズを落とさないと、メモリ使用量がとんでもないことになるので、やろうとする人は注意しよう。


【わりと成功したもの】





マッカーサーのフィリピン上陸。再現性は?だけど、雰囲気は出ている。




モロトフ=リッベントロップ協定の調印の様子。「これから毎日ポーランド割ろうぜ?」という悪い奴ら感が出ている。




 北アフリカのロンメル将軍。正直、この白黒写真からカラー化がむずいような気がしてたが、思いの外良い雰囲気のカラー写真になった。




空母上の米海軍機。飛行甲板の色がこれで正しいのかちょっとわからないけど、機体と海の色は良い感じ。




沖縄戦でロケット弾を発射する米軍機。機体と空と陸をきっちり認識して彩色してて、当時のカラーフィルムと言えば信じてしまいそう。




パリに入城するドイツ軍を涙目で見ているおじさん。通称スンスンおじさん。セピア退色したカラー写真と言えばそれっぽいけど、ディープラーニングで本来の色でなく、退色まで学習したってことなのん? 実はパリで撮られたものではない説があるが、アメリカのアーカイブにはパリと日付まで書いてあり謎。




ヒトラーとエッフェル塔。ヒトラーら手前の人物らのカラー化は良いけど、エッフェル塔の上部が黄色くなっていたりして少し変。




日本の降伏でお祭り騒ぎのニューヨーク・タイムズスクエアでのキス。良い雰囲気だけど、これも本来の色というより、古いカラーフィルムの色といった再現。なお、この写真が撮られた時期は、実は対独戦勝の日じゃないかという説もあったはずだけど、どう決着したのかな。


 【ちょっと微妙なの】



 硫黄島に揚がる星条旗。星条旗のカラーは認識されているけど、本来の色というより、当時のカラーフィルムの色再現って感がかなり強い。空の色もちょっと微妙。



同じく硫黄島。遠くに摺鉢山が見える。元の写真がはっきりしているせいか、写真も雰囲気がよい。






 アメリカ義勇軍(フライング・タイガース)の戦闘機を警備する中国兵。このP-40の配色は正しいんだろうか。自然風景は割と再現度高いが、人工物の彩色はかなり怪しい傾向にある。








上から戦艦大和、駆逐艦雪風、戦艦長門。いずれも艦橋がサビっぽくなり、船体が青味が強くなる傾向がある。





 砲撃する戦艦アイオワ。炎や爆発の彩色に弱い傾向が見られた。





 真珠湾攻撃。かなりビビッドな感じで、同じく爆発も微妙。


【問題あり】




 ヒトラーによるオーストリア併合の発表。これはホント酷い。けばけばしいピンクの悪趣味度がごっつい。




 進行するアメリカ戦艦。風景写真はわりと成功するのだけど、この写真に限っては空の青が黄色く、いろいろとアレ。




 ヤルタ会談での3巨塔。全体的には決して悪くないのだけど、真ん中のルーズベルトが生ける死体と化している。ほんとにこのすぐあとに死ぬので、本当にこんな色だった可能性もあるかと思ったが、この時の写真はカラーも結構残っていて、それと比較しても変だった。




真珠湾攻撃に空母から発艦する日本軍機。元の写真が悪いせいも大きいと思うけど、これも相当おかしい。



とりあえず総評として、人工物については結構成功失敗が別れるのと、元の画像がちゃんと撮れているか否かも結果に響いてくる。シャープなアメリカの写真は成功例が多かったが、日本の写真はちょっと悲しい結果(そもそも使えるのが少ないけど)。

個人やプロによる彩色で、本当に鮮やかで美しい写真も多くあるが、それにはまだまだAIは達していない状況。しかし、だいたい数秒でまあまあの結果を返してくるのはさすが。個人でも十分使えます。

戦争写真だから人工物が多いけど、この研究だとむしろ風景写真が主らしく、その再現度はかなり高いのでググってそっち見てください(なげやり)。

2016年6月1日水曜日

第三者の善意と企業の社会的信用を用いて、人の安否をダシに宣伝する事の是非

6月1日0時。株式会社イード【6038】が運営するゲームニュースサイト「インサイド」に、編集部名義による一つの告知が載りました。現在は文面が変わっていますので、以下にキャッシュのスクリーンショットを貼ります。

【お知らせ】フリーライター内川たまき氏と連絡可能な方を探しています(※一部伏せ字加工)

自社サイトに掲載していたライターと連絡が取れなくなり、連絡取れる方を探しているという告知です。Twitterのインサイド公式アカウントでもツイートが行われ(現在は削除)、それには「【お知らせ】フリーライター内川たまき氏と連絡可能な方を探しています」という告知タイトルと、URLだけしか書かれていません。告知本文を読むと、そのライターが書いたとされる記事をプッシュする感がありありと見て取れ、この告知を訝しむ声も見られましたが、これが架空と断じれる情報は公式に一切ありませんでした。

ところがこれ、騒動が広がったためか、'''全くの架空であり、ライターは元から存在せず、宣伝目的の告知だった'''事をインサイド公式アカウントが明らかにし、謝罪しました。


【お詫び】先ほど公開いたしました「フリーライター内川たまき氏と連絡可能な方を探しています」は『(削除)』の企画記事として弊誌が独自に記事を作成したものです。一部の読者様に誤解を与え、ご不快に思われる表現がありましたことをお詫び申し上げます。
インサイド公式Twitterアカウント


企業の公式アカウントが連絡の取れない関係者の情報提供をSNSで求めた場合、消息不明という人の安否への心配と、社会的信用を持つ企業(それも上場)による情報発信なら、精査せずに情報を拡散してしまう事もあるでしょう。

記事のような形態をとる宣伝という手法は、紛らわしいという問題はありますが、広く行われている手法です。新聞でも見ますし、ネットでもあります。しかし、それには宣伝あるいは広告である事が明示されています。例えば、Yahoo!ニュースのスマホアプリでYahoo!ニュースを閲覧した場合、下のスクリーンショットのようにどれが広告か分かるようになっています。

Yahoo!ニュース上の広告。上から3番目が広告だと分かる

しかし、今回の例では公式サイト・SNSでの告知の双方で宣伝・架空である旨の表記無く、それを社会的信用のあるニュースサイトが人の安否をネタにして掲載し、第三者の善意を悪用したことが問題です。

SNSの普及により、個人による情報拡散の敷居も下がりましたが、行方不明者の情報というのはセンシティブなものです。たまに、SNSで行方不明者の情報提供を呼びかける個人アカウントを見かける事があります。しかし、個人アカウントが行方不明者の情報を求めていても、その個人と行方不明者の関係をSNS上で立証するのは困難です。そして、ストーカーが関係者を装って情報を集めている可能性もあり、慎重な人は信用が無い個人アカウントへの協力は控えるでしょう。

ところが、発信元やアカウントに社会的信用がある場合、話は違ってきます。告知を見た人は、発信者の社会的信用に応じて、その情報の信用性を見積もる事が出来るため、情報の拡散にリスクが無いと判断することになります。今回は、上場企業が運営するニュースサイトの編集部による告知です。おまけに、これを創作とする表示は一切ありません。社会的信用のある存在が、ネットで嘘か真か分からない情報を発信し始めたら、ネットでの情報の信頼性が揺らぐ恐れすらあります。

社会的信用を持つ企業が、ネットでこのような宣伝行為に及ぶこと。それ自体がネット情報への信頼性の毀損に繋がりかねない事だと思うのですが、いかがでしょうか?

今回、インサイドが社会的信用を投げ打ってまで偽告知を用いた宣伝に出たのか理解に苦しむ所があるのですが、ネット情報への信頼性に対する自爆テロでもあるので、少しは考えて欲しいものです。


※本記事では、インサイドが宣伝しようとした記事・ゲームの名称・リンクにつきましては、炎上商法の可能性を考え、一切を削除してあります。







怒りの余り、深夜に記事をアップしてしまいましたが、まだ艦これ春イベントのE7攻略中です。あと6時間でイベントが終了してしまいますが、これでIowa手に入らなかったら、インサイド絶対に許さん。