映画サマーウォーズを観てきました。
ストーリーに関するネタバレは極力避けますが、自衛隊的に面白いところがあったりしたので少々。少しでもネタバレするのが嫌ならバック推奨です。
この映画、公務員がやたらたくさん出てきます。警察官、消防官、救急隊員、水道局員、そして自衛官。
サマーウォーズ公式サイトのトップページを見てください。背景左上にデジャブな奴が。
以前、ゆっくりで学ぶ、自衛隊装備 「衛星単一通信携帯局装置」の動画の最後に投げやり気味に紹介した、「衛星単一可搬局装置 JMRC-C4」にアンテナ部を除いてそっくりな車両が登場しています。劇中の会話によると「松本駐屯地のミリ波通信装置」的なものだそうです。
劇中では「100ギガ」と具体的な性能を示すセリフがあり、この車両が帯域100Gbpsを通信を可能とする装置とすると脅威的な性能です。実在するJMRC-C4は同時通信5回線分の能力しか無い上、民間のイーサネット用(有線)の最先端のものでも、つい先月に米Juniper Networksが世界初の100Gbps対応インターフェースカードを発表したばかりで、無線でこの性能を実現したというのが如何に凄いかが分かるかと思います。
ところがミリ波を用いた広帯域通信技術というものは、ちゃんと現実の自衛隊でも研究されている技術なのです(性能面は脇に置いておく)。
平成17年度 事前の事業評価 評価書
広帯域高出力デバイスの研究
要旨:http://www.mod.go.jp/j/info/hyouka/17/jizen/youshi/11.pdf
本文:http://www.mod.go.jp/j/info/hyouka/17/jizen/honbun/11.pdf
参考:http://www.mod.go.jp/j/info/hyouka/17/jizen/sankou/11.pdf
平成17年度の事前評価書によれば、「民生用のミリ波帯電力増幅器技術を基に、広帯域化・高出力化を図るミリ波発生技術と、それを用いた高分解能・高精度ミリ波レーダ技術、長距離・高速大容量ミリ波通信技術、ミリ波レーダ電子対策技術に関する研究を行う」とされており、ミリ波を用いた通信の広帯域化のみならず、レーダー技術にも適応可能な研究のようです。もっとも、防衛省技術研究本部の平成19年の中長期技術見積りによれば、技術的課題の解明に「概ね5年以内~10年後」かかるとされており、映画に登場したような装置の登場は今少し先の様です。
もっとも、ミリ波を用いた研究は無線通信技術としては今ホットな分野でして、これもつい先月に富士通が世界初の毎秒10ギガビット超のミリ波通信に成功しています。映画の10分の1の速度ですが、今後の研究の進捗に期待ですね。
さて、妙に面白いものが出る映画だなあと思いつつ映画を見ていた訳ですが、EDのクレジットを見てその理由がなんとなく分かりました。映画の制作に防衛省防衛研究所の橋本靖明氏が協力されていたようです。橋本氏の専門は法学なのですが、宇宙関連・サイバー攻撃関連の研究もされているそうですので、サマーウォーズのアドバイザーとしては適任と言える人と言えますね。