2012年11月15日木曜日

防衛省技術研究本部 防衛技術シンポジウムレポート(2日目)その2

レポートのラストです。

 ■XRIM-4

 艦艇向けに開発が進められていたものの、発展型シースパローが採用された為にお蔵入りしたXRIM-4(写真奥)です。原型となったAAM-4(写真右)と比べても(模型縮尺は違うことに注意)、かなり大型化していることが分かると思います。



 注目ポイントはミサイルのTVC(推力偏向制御)のノズルです。XRIM-4は艦艇のVLSから垂直に発射する為、発射直後にTVCによって目標方向に姿勢変更を行います。


 お蔵入りとなったXRIM-4ですが、これを原型に陸上自衛隊が新しいSAMを作るという噂が3年ほど前に流れましたが、その後はどうなったんでしょうね。引き続き注意しましょう。


■先進個人装備システム

 この数年の防衛技術シンポジウムで、登場するたびに進化しているものの代表例ですね。今年は電池システムや、携帯端末、レーザーデジグネーター内蔵暗視双眼鏡なのが展示されておりました。

  これまでの研究品と比べ、大分洗練されてきましたね。


 表示端末です。これは単なる表示・入出力装置で、コンピュータ本体は腰近くに収納されています。


 表示端末の映像は、グラスウェアにも表示可能です。



 実際にいじらせてもらったレーザーデジグネーター内蔵暗視双眼鏡です。重さは3キロほどと結構ありますが、倍率切り替え、IR/可視光切り替え、距離表示、さらには方位と距離情報を計算することで、目標の正確な位置を伝送する能力があります。 使ってみたところ、レーザーデジグネーターの計測は2秒ほどかかりましたが、倍率やIR切り替え変更は一瞬でした。なにこれちょう欲しい。


 さらに、装置を駆動させる燃料電池も展示されておりました(写真右の黒・銀色の箱3つ)。右2つは車載用で、写真中央の細いものが個人携帯用になります。車載用はメタノールを、個人携帯用はアルミ粉末に水を入れ、発生した水素を燃料にしています。全て日立または日立関連会社の民生品のチューンでした。個人携帯用でも30Wの出力を4時間出せるそうです。まだまだ大きいのがネックですが、将来的には期待できる燃料電池です。また、中央手前のグリーンの箱はリチウムイオン電池です。










2012年11月14日水曜日

防衛省技術研究本部 防衛技術シンポジウムレポート(2日目)

 昨日に続き、2日目のレポートです。まずは航空装備研究所ブースから。

■XF5-1

 実証機心神に積む実証エンジンのXF5-1の実物大ポスターです。



■先進技術実証機モデル

 先進技術実証機こと心神のモデルです。お話を伺ったところ、この実証機のステルスはあくまで前方が主で、後方からは考えられていないとのことでした。


 下の写真をご覧頂きたいのは、ステルス性を確保するための工夫として、車輪格納部がギザギザ状になっています。開閉部分はどうしても微細な凹凸が生じるため、ギザギザの形にすることで、レーダー波を乱反射することでステルス性を向上させるものです。


 下の写真はボケ気味ですが、ベクタードスラストです。



 ■磁気粘性流体バンパー

 磁気を当てることで、粘性が変化する性質を持つ、磁気粘性流体を使用したバンパーです。右のハンドルでバンパーを動かせますが、0.4Aをかけるとかなり固くなって動かすのに力が入ります。


 この磁性流体を使用した調整型サスペンションは、米デルファイ等で実用化されており、フォルクスワーゲン車で採用されています。下記に磁性流体の特性が良く分かる動画をアップしました。




  また、このサスペンションは車両サスペンション以外にも応用が考えられており、砲の駐退機に利用することにより、後座長を減少させる事でコンパクト化を図るか、抗座力のピークを減少させることで車両の軽量化を図るかの、2通りの使い道があるそうです。




■弾道修正弾

 発射後に翼を展開し、弾道を修正することで命中精度向上を図った弾道修正弾です。写真は榴弾砲弾タイプですが、迫撃砲弾タイプも存在します。


 これについては、下記の動画の後半部で説明されております。



■テレスコープ弾


 弾丸を薬莢部分に格納することで、弾薬の小型化を図ったテレスコープ弾です。これは弾薬の小型化の他に、機関砲の発射速度を向上させるといった利点もあります。下記の動画では、テレスコープ機関砲の発射速度の速さが分かります。現在開発中の機動戦闘車ファミリーに搭載されると言われております。



■90式戦車用に開発されていた、国産120ミリHEAT弾


 これは珍しいものです。90式戦車開発中に開発されていたものの、90式の2時試作以降にラインメタル製の砲を導入することが決まったためにお蔵入りした、幻の国産HEAT弾です。


 ポイントは翼の部分で、テーパーがかかっています。これは弾体に回転を与えることで、安定化に効果があります。先のテレスコープ弾の映像の冒頭に、この弾が回転しているのが分かるシーンが映っていますので、御覧ください。


00式120mm戦車砲用演習弾


 国内で戦車がAPFSDSを使用した訓練を行う場合、目標に外れた際に演習場の外に飛び出す事が想定されるため、専用の演習壕に向けて発射しないといけないという問題があり、かつては滋賀県の第三戦車大隊は、付近の演習場にその施設が無かったために、APFSDSを撃つ時は富士の演習場に出かけなければいけませんでした。
 そこで、この00式が開発されました。この弾は、発射後に所定の距離を過ぎると、先端部が摩擦熱で溶けて、3分割された弾芯がバラバラになることで、演習場外への弾が出ることを防ぎ、演習の効率化を実現しました。


明日は先進技術センターの紹介をしたいと思います。



2012年11月13日火曜日

防衛省技術研究本部 防衛技術シンポジウムレポート(1日目)

 今年も行って参りました防衛技術シンポジウム。
 でも、今年は遠方にダブルブッキングかけてた事に前日になって気付く有様で、1日目は午前で撤退したので少なめ……

 まずは60周年記念コーナーにあったものからご紹介。

■CBRN防護装備



 左から85式防護マスク4型を着けた88式戦闘用防護衣、00式個人用防護装備衣、研究中のCBRN防護衣です。  


 話を伺ったところ、00式で問題になっている熱ストレス(要は蒸し暑い)を軽減することを主題とした研究で、パネル(下写真)見た感じ表地と裏地で挟む3レイヤータイプなので、ゴアテックスのような透湿素材かと聞いたところ、凡そその通りとのことで、民生品をいくらかサンプルとして調査しているそうで。




■戦闘糧食Ⅱ型


 ご存知戦闘糧食。しかしながら、今現在、技術研究本部では糧食の研究開発は行なっていない。確認した所、相当前に辞めているが時期までは分からないとのことだった。民生品で十分な性能があるので、自衛隊仕様にOD色にしたりする程度です。


■手回し計算機(陸上装備研究所)


 いったい、陸上装備研究所のどこを探したら出てきたのでしょうか。手回し式の計算機です。スウェーデンのOriginal Odhner製とのことですが、ググってもこれと同じ型が見つかりませんというか、見つかる画像より置数レバーが倍くらいある。一般的な計算よりも、大掛かりなものだったんしょうか。



■07式垂直発射魚雷投射ロケット(新アスロック)


 続いて展示会場。多分、防衛技術シンポジウムの歴史において、一番デカイ展示物。Wikiると全長6.5m、直径450mmだそうだ。そして下の写真が、新アスロックが運ぶ97式短魚雷




■10式戦車用試作履帯とゴムプレート


 これは珍しい。10式戦車の履帯(キャタピラ)とゴムパッドですよ。ちなみに、ゴムパッドの重さを聞いた所、1枚あたりおよそ1キロほどで、ゴムパッドを装着する場合、凡そ200キロの重量増加になるとか。



■魚雷用ジャイロ

 
 まさに珍品中の珍品。54式魚雷等の魚雷用ジャイロです。今やiPhoneに搭載できるジャイロや、精巧なリングレーザージャイロとかが実用化されておりますが、古式ゆかしい機械式です。ステキ!



■防弾ヘルメット


 88式鉄帽ではなく、両方共研究中の防弾ヘルメットです。左が88式と同等の防護性能で軽量化を図ったもの。右が防弾性能を高めたものです。重量は教えて頂けませんでしたが、左の軽量型はかなり軽いです。652グラムのiPadを手に持って比べてみると、1キロいかないかくらいの重量でした。


 射撃痕。内部が剥離してたりしますが、貫通には至ってません。



■DACS


 ミサイル防衛でキネティック弾頭として試験されたDACSです。なにそれ? と思われた方は、下の動画見て下さい。




■風洞模型

 P-2J、C-1、F-2の風洞模型です。P-2J、C-1は木製。ワザマエ!






■XTS1-10


 OH-1のエンジンの出力強化型の試作品で、新造またはエンジン交換時に換装されています。



■陸上無人機(魔改造ジムニー)



 ジムニーベースの無人車両です。瞬断時等では限定的な自律動作もできるそうです。前方のデカイのは地形照合用のレーザー発振器。



 面白いのは操縦席内のこのパイプ。助手席のカーエアコンから、後部に設置してある電子機器を冷却するために伸ばしてます。



【速報】防衛省技術研究本部 防衛技術シンポジウム(2)