2013年7月31日水曜日

【ネタ】HOI2風ツイッタークライアントのご提案

ツイッタークライアント、気分に応じて色々使っているのですが、どれも似たようなのばかりで、刺激が無いですね。

そんな中、昨日フォローしているまようさ女史がこんなこと言うてたんですよ。
なにそれちょう欲しい。

大変魅力的な案なので、どんなものかシミュレートしてみた。



◆ブロックされた時



ブロックされた時のポップアップ表示。
「了解」を選択するとポップアップが閉じ、「確認する」を選択するとブロックした相手のツイッター・プロフページに飛べます。そこでブロック仕返すもよし、相手に届かない事をいい事に汚いリプライ投げつけていくのもよい、戦争の始まりです。



◆フォローされた時



フォローされた際のポップアップ表示。
栄誉ある我らのフォロワーとなり、相手への優越感に浸れますが、あからさまに態度に表すとリムーブされてしまいます。なお、余剰資源の供出は要求できません。



◆TL要約機能



TLに流れているツイートのピックアップ機能。
「買った」、「見た」、「食べた」等のツイートに反応して、適当にポップアップを抽出します。



◆イベント表示機能



フォロー、ブロック等のポップアップ通知以外にも、ツイッターのトレンド、HOTワードからイベントを抽出する機能。仕様的にものっそいムズそうな気がするが、気にしてはいけない。 

何気ない普段のTLが、世界制覇を目指す独裁者の執務室へと変貌し、貴方に独裁者の余裕と威厳を与える、HOI2 Twitter クライアント!


というわけで、誰か作って(ぇー



※ネタにしてしまった、まようさ氏、JSF氏、CRS氏、カトゆー氏。スンマセンしたあッ!!

2013年7月30日火曜日

軍事雑誌「丸」の黒歴史

軍事関連雑誌にも色々とありますが、古参で有名なのは何と言っても潮書房の「丸」でしょう。

丸 2013年 09月号 [雑誌]
丸 2013年9月号

1948年に創刊された「丸」は、昭和期は旧軍人らの回想・手記などが数多く掲載し、存命の旧軍人が少なくなってきた現在では、陸海空をカバーする総合軍事誌として今に続いております。

ところが、1948年の創刊時点では、潮書房ではなく聯合プレスという出版社から出ていました。1956年4月号から現在の潮書房による発行となり、今に続いています。

じゃあ、潮書房から出る前はどんな感じの雑誌だったんでしょうか。
その頃の紙面はこんな感じでした。

丸 1955年5月号
鳩山由紀夫じゃないですよ。鳩山一郎総理です。
現在との連続性を見出すことのできない記事の中、ただ1つ、表紙の「丸」のロゴだけにかろうじて連続性を見出す事ができます。今のロゴと若干デザイン違うけど。

こんな感じで、創刊時の「丸」はゴシップ記事なども扱う総合雑誌としてのスタートでした。内容はどちらかと言うと、インタビューなどの取材記事が中心です。これが日本の再独立、自衛隊の発足などを経て、旧軍人が手記の発表などをする機運が高まると、軍モノの発表を中心とした方針に転換します。

冒頭でも触れましたが、近年は存命の旧軍人の減少により、戦争体験を伝える記事の割合は少なくなりました。現在の「丸」は、軍事に関連する時事から歴史など、幅広く扱う総合軍事雑誌として転換しつつあり、言わば第二の転換点であるのかもしれません。




2013年7月29日月曜日

日本HP新製品発表会に行ってきた

日本HPの新製品発表会行けちゃるよ、とお誘いが来たので行ってきましただよ。
軍事ネタサイトとは言うが、そこらへんはフリーダムに行く。


今回はHPのコンシューマ部門でのAndroidタブレットの新製品発表会でした。

まず、新製品の7インチAndroidタブレット、HP Slate7
1024×600の解像度の製品ですが、13,860円からと中華タブ並の価格設定でした。
特徴としては、Beats Audioとの提携による高品質サウンド(ヘッドフォン使用時のみ)で、オーディオチップのチューニングと独自のイコライザによる音質向上がウリとのこと。

HP Slate7
実際に普段使いのUltimate Ears TripleFi 10を繋いで聴いてみたのですが、Beats Audioを設定でオンにすると、低音を中心にドンシャリ系の音となりました。
でもこの程度なら、イコライザ付きのプレイヤーアプリ使えば大体同じ事出来るんじゃね? という疑問はあったけど……。


Androidを大画面で使いたいというユーザー向けに、21.5インチのフルHD、IPS液晶搭載のPC型Android端末、HP Slate21。IPSだけあって発色も美しく、21インチ台のフルHD液晶ディスプレイは微妙に無いので、PCのサブモニタとしても使えるかと思ったが、仕様上できないとのこと(´・ω・`)。

PCと共存可能な製品だと謳っていたけど、PCとの連携機能が特に見当たらないのは残念。こういうPCとタブレットの中間セグメントの製品が生き残るには、MSのSurface RTみたいにPCとの親和性の高さが無いといけないと思うのだが、そういう機能が付加されるのを今後期待したいところです。


HP Directplus オンラインストア

2013年7月26日金曜日

実は既にアニメに出ていた艦これ装備

艦これ、してますか!?(挨拶)。dragonerです。

最近、時間が出来ては艦こればかりです。そろそろ艦これおじさんから、「艦これは人生」あたりにまで発展するやもしれませぬ。

で、今日の本題。

艦これ序盤で特にお世話になるであろう駆逐艦装備のうち、12.7センチ連装砲は結構重宝する装備だと思います。最初は単装砲ばっかりだったりするので、わずかでも火力の高い連装砲はありがたいです。

艦これ 12.7cm連装砲

艦これ絵は上の絵になりますが、こいつの実物はこちらです。

50口径三年式12.7センチ砲Wikipediaより)
50口径三年式12.7センチ砲がこの砲の名称で、吹雪型以降、秋月型以前の艦隊型駆逐艦に搭載された標準的装備です。

ところで、この砲は既に有名なアニメに登場しております。皆さんも相当数が見たはずです。
分かんない方は良く思い出してください。

答えは少し下↓

































ヱヴァンゲリヲン新劇場版序より 

ヱヴァンゲリヲン新劇場版序で、ヤシマ作戦時に一瞬出てきた「三島第5要塞第2自動砲台」が、モロこれでした。
オリジナルは有人砲ですが、何故かドーラや大和の46センチ砲塔と一緒に再生産・無人化されて、第3新東京市周辺に配備されています。威力のあるドーラや大和はともかく、オート・メラーラ127ミリ砲がしこたま配置されている第3新東京市に、この砲を再生産までして置く理由が分かりませんが、まあ監督の趣味としか……。

ところで、エヴァシリーズの庵野監督。原画マン時代に「火垂るの墓」で、重巡摩耶を始めとした連合艦隊を気合入れて描いています。だけど、夜のシーンだったので、よりにもよって樋口真嗣の嫁さんに連合艦隊を黒く塗りつぶされたというトラウマがあるそうです。

そういう意味で、エヴァの旧軍趣味はリベンジなのかもしれん。



2013年7月24日水曜日

ミリオタ宮崎駿の少年時代

宮崎駿監督最新作の風立ちぬ、公開されましたが評判良いですね。

風立ちぬ サウンドトラック[共通特典CD付き]

私はまだ観ていませんが、ツイッターでも評判が良いので、時間が出来たらすぐにでも観たいと思います。

ところで、風立ちぬが零戦設計者の堀越二郎の話であることから見ても分かるように、宮崎駿はかなりのミリオタです。それも、ミリオタロリコン社会主義者と、1つでも業が深いモノを3つも抱えた3重苦です。恐ろしく業が深い人間です。

こんなたくさんの業を抱える前、若き日の宮崎少年はどんな人物だったんでしょうか。
それを窺わせるものが、ネット上で話題になったことがありました。
それは、若き日の宮崎駿(17歳)の「世界の艦船」誌への投稿です。

世界の艦船 1958年5月号より

この投稿は「世界の艦船」1958年5月号の読者欄に掲載されたものです。ネット上では、この部分しか出まわっておらず、何故宮崎駿がそれを書き、その後どうなったのかの経緯は明らかにされていませんでした。
今回は、宮崎駿がこの投稿を書いた背景と、その後の展開についてご紹介したいと思います。



世界の艦船創刊

戦後日本で初めての艦船総合雑誌、「世界の艦船」が創刊されたのは、1957年8月でした。
宮崎駿が初めて投稿したのは、1958年5月号ですから、かなり初期からの読者になります。当時、世界の艦船は発行部数も少なく、地方では手に入りづらかったそうで、かなりの筋金入りのマニアが集っていました。

当時の読者投稿欄を見ると多彩な顔ぶれで、中学生から旧軍人ら、様々な人達が投稿していました。著名な投稿者には、堀元美(海軍技術中佐。空母・駆逐艦の設計に従事)、黛治夫(海軍大佐。戦艦大和副長)、小松崎茂(イスラストレーター)などがおり、非常に活況に満ちておりました。

投稿欄以上に本文記事でも、旧軍人や現役の技術者らによる投稿が行われており、1958年4月号には、防衛庁技術研究所第五部(現・防衛省技術研究本部艦艇装備研究所)の丹羽誠一氏による投稿論文「魚雷艇の話 その価値と効用」がありました。宮崎駿が投稿するきっかけになった論文です。

論文の趣旨は以下のようなものです。
  • 現在(1958年時点)の日本の情勢は、日清日露戦争の時代と著しく似ている。
  • 平和憲法により他国に脅威を与える軍備は持てないし、持つための財源もない。
  • 第二次大戦の戦訓(多くの事例を提示)に基づけば、魚雷艇は多目的に使え価値は高い。
  • 魚雷艇は機敏なため、意外と航空機からの攻撃に強い。
  • よって、我が国における魚雷艇の価値を再考すべきではないか。
という問いかけの論文でした。

この論文に対し、宮崎駿少年はネットでよく知られる疑問を呈する訳です。

 4月号の「魚雷艇の話」、非常に興味深く拝読しました。ただ、ちょっと感じたのですが、これからの魚雷艇の価値を判断するのに、第2次大戦中の戦訓に基いてするのでは、ずいぶん不合理な点も出て来るのではないかと考えさせられました。魚雷艇の兵装はたいして変わらないが、その相手になる艦船と航空機の、火器の精度と電子兵器の進歩は、すさまじいものがあると思います。これからの魚雷艇は局地戦闘において、敵航空機の跳梁下に行動することも多いと思います。しかしMTB、MGBの40ミリ機砲および4.5インチ短身砲は、第2次大戦中の速力300浬/時の攻撃機、あるいは浮上潜水艦との戦闘ならともかくも、これからの超スピードの攻撃機に、どの程度の対空威力を発揮しうるといえるでしょうか。
現在ミサイルは各方面に急速な進歩をとげつつあり、着着実用の域に達しつつあります。魚雷艇は高速航海時に多量の熱放射線を出し、それは空対艦の熱線ホーミング装置のミサイルに、良好な感度をあたえます。魚雷艇の火器の射程外から安全かつ正確な攻撃が可能です。こうなると魚雷艇の被弾率は少なく、対空火力は有力だということはいえなくなります。駆逐艦は火器を対空ミサイルに改装することが可能ですが、50~100トンの魚雷艇ではミサイルを装置すれば、MTB、MGBの役は、果たすことが不可能になります。結局大型化の必要が生じてきます。これからは敵航空機の優勢な局地における駆逐艦と魚雷艇の経済度云々は成立しなくなるのではないでしょうか。魚雷艇はやはり潜水艦に対する沿海における攻撃と警戒に主要な価値があるのだと思います。
魚雷艇は対潜一本に進むべきでしょう。その点わが国の魚雷艇が派手ではありませんが着実にその道を歩んでいるのを見ると嬉しく思います。生意気な意見をのべましたが、私もわが国の艦艇の進歩を祈る1人です。愚見御笑覧下さい。
(東京都杉並区永福町 宮崎駿)

宮崎少年の疑問を要約してみましょう。
  •  これからの魚雷艇の価値を論じるのに、二次大戦の戦訓をあげるのは不合理でないか?
  •  魚雷艇の装備で、急激に進歩する航空機に対抗できるのか?
  •  魚雷艇は大量の熱を出すので、熱線追尾式空対艦ミサイル(ASM)に追尾されやすく、魚雷艇の被弾率は少ないとは言えないのではないか?
  •  小さい魚雷艇に対空ミサイルを積めば、結局大型化してしまうのではないか。
  • よって、敵航空機の優勢な局地における魚雷艇の経済性は成立しないのではないか。
  • むしろ、魚雷艇は沿岸の潜水艦対策に注力すべきではないか。
以上が宮崎少年の疑問です。

この宮崎少年の疑問に対し、1958年6月号に丹羽氏より回答がありました。

世界の艦船 1958年6月号より

◆5月号読者交歓室 宮崎駿氏へ
第2次大戦中の戦訓のみに基いて、これからの魚雷艇の価値を判断することは不合理だとの御説、まことにもっともだと思います。今日考えうる最新式の装備を持った魚雷艇と、最新式の艦艇・航空機との間の戦闘力・建造費等々を比較することができれば、これに越したことはないのですが、新型兵器の多くはその性能が公表されず、また魚雷艇はその性質上、戦況に応じて兵装を変えて行くので、やむなく過去のある時期におけるものを採って、経済的戦備としての魚雷艇の可能性を指摘して、研究の手がかりとしたのが4月号の小論です。
なおあなたの論旨が、魚雷艇の兵装がたいして変わらないということ、空対艦のホーミング・ミサイルに対して魚雷艇が駆逐艦以上の感度があるという前提に立っている点には問題があります。あなたの取り上げている熱線ホーミングに対して考えると、魚雷艇のエンジンは完全に艇内に装備され、その排気は艇外に排出する前に海水を注入されて40℃程度に冷却されており、飛行機のエンジンや駆逐艦の煙突などとは比べものにならないほど熱線の輻射は少ないのです。兵装については対潜用魚雷艇がソーナーを持ちホーミング魚雷を持って非常に有力なものになっていると同様、局地戦闘兵力としての魚雷艇も必要とあればいつでも新しい兵装に切りかえることが出来ます。 DDGは味方部隊の防空用として敵攻撃機が射点に入る以前にこれを撃墜しなければならないので、あのように大がかりな艦対空のミサイル装置を持っていますが、魚雷艇が敵機と対等にわたりあうためであれば、戦闘機の持つ空対空ミサイルに多少の改造を加えるだけで使用可能でしょう。局地水上戦闘力としては大型で装甲厳重な軍艦を攻撃するというような機会は、非常に少なくなり、主な対手は駆逐艦以下の防御力の弱い艦艇、上陸用舟艇類、輸送船等となると考えられますので、魚雷艇はむしろ不経済で、ロケット砲・有線誘導ミサイル等の野戦兵器に、比較的軽量で効果が大きく、しかも弾数の多く搭載できる魚雷艇向きのものがあるのではないでしょうか。これによって第2次大戦中期まで500メートルぐらいまで近づかねば必中と言えなかった対水上艦艇攻撃は、その数倍の距離から可能となります。
(防衛庁技術研究所第5部 丹羽誠一)
ここでの丹羽氏の回答を要約しましょう。
  • 第二次大戦の戦訓のみに基づくのは不合理という指摘はもっとも。
  • ただ、新型兵器は性能が公表されず、魚雷艇は兵装を変えることができるので、やむなく2次大戦の戦訓を用いて魚雷艇の可能性を指摘した。
  • 魚雷艇は大量の熱を出すので熱線ホーミングミサイルに狙われるという指摘だが、魚雷艇の排気熱は40℃まで冷却して排出されるので、その指摘は当たらない。
  • 魚雷艇の装備もまた新しいものに切りかえることができる。
  • 魚雷艇に積む艦対空ミサイルは、DDG(ミサイル搭載護衛艦)よりも小さなもので良いので、重量増には繋がらない。
  • 魚雷艇の相手は大型艦ではなく、駆逐艦以下の小型艦が相手になるので、魚雷は不経済。魚雷艇にロケットやミサイル等の兵器を搭載することで、従来より遠距離から攻撃が可能になる。
丹羽氏は戦訓の引用例が不適切であることは認めたものの、宮崎少年の熱線ホーミングミサイルに魚雷艇は弱いのではないかという論拠に反論し、また魚雷にこだわらず魚雷艇に様々な新装備を積むことでの可能性について言及しています。

ところで、この魚雷艇のあるべく姿を巡って2人は議論しているわけですが、現実はどうなったでしょうか? 答えから言ってしまうと、2人共微妙に外して微妙に当たっています。

まずそもそも、魚雷艇という種別自体が、今現在は絶滅危惧種です。少なくとも、自衛隊から魚雷艇は消え、ミサイル艇に変わりました。丹羽氏は魚雷に拘っているわけではなく、ミサイルなどのより適した装備を積めば良いとしているので、 その点で言えば当たっています。
しかし、宮崎少年は敵航空勢力下で活動ができるのか? と疑問を呈しています。これは宮崎少年の言うとおりで、今現在のミサイル艇は、ほぼ対空攻撃能力を諦めています。あまりに空対艦ミサイルが長射程化しており、プラットフォームとして小さすぎるミサイル艇では、攻撃機に対抗できる対空ミサイルを運用できないからです。この点は宮崎少年の言う通りになりました。

海上自衛隊の“はやぶさ”型ミサイル艇(Wikipediaより)

丹羽氏の回答に対し、宮崎少年は1958年8月号で反論を試みます。

世界の艦船 1958年8月号

5月号本欄での小生の質問に対し、早速丹羽さんから親切な御回答があり、感謝しております。魚雷艇の熱線放射の件、小生の不勉強でした。
しかしASMの誘導方法は、熱線ホーミング式でなくとも、他の方法(たとえばビームライダー式と全アクティブ式の組み合わせ等)でも、正確な命中は期待出来ます。また魚雷艇にAAMを改造して搭載したとしても、攻撃機のASMとほぼ同じ性能のものであったとしたら、速力の関係から結局航空機の優勢はあらそえないことになると思います。魚雷艇は魚雷という破壊力の強大な、しかも特殊な艦艇にしか搭載できない兵器を機敏な小艇に装備したところにその成功の原因があったのであり、またその攻撃の目標となる艦の、攻撃と防御の対手が魚雷艇ではなかったところに、戦果を収めるチャンスが生まれたのであり、対手のハンディキャップにおいてはじめて勝利を獲得し得たのではないかと思います。
よって局地戦闘において、その対手が仮に防御力の弱い艦艇であったとしても、魚雷が不経済だからというので、他の野戦兵器を搭載したとしたら、その兵器は同時にその対手にも搭載可能であり、魚雷を持つときのような攻撃力の差はなくなってしまいます。少しぐらい優速であったとしても、敵制空圏下の局地防衛など不可能になるのではないでしょうか。また局地戦闘で充分に使える魚雷艇が出来たとしても、敵制空権下で戦闘するのでは、小型原爆くらいに対して安全な基地が必要であり、それにはトンネル式にするとかして特殊な基地を全国各地に多数配備しなければなりません。従来の基地は開戦の第1日に破壊されてしまい、使用出来なくなるでしょう。補給が困難になったら活動出来ません。結局経済的に魚雷艇が有利であるということで、ただそれを多数配置するというのでは意味がありません。もし充分活用出来る魚雷艇が出来、信頼しうるものであったなら、基地建設と並行して整備すべきでしょう。日本の防衛庁は魚雷艇の使用にあたって局地防衛戦闘と対戦戦闘のどちらに重点を置いているのでしょうか。前者ならば特殊基地の建設を現在計画しているのでしょうか。当局者ならびに読者の方々のご意見をも期待しています。
(東京都 宮崎駿)

この負けず嫌いで食い下がるところ、いかにも若いマニアっぽくて既視感あります。皆こうだったよね?

さて、この反論での宮崎少年の言い分はこうです。
  • 魚雷艇の熱線放射の件に関しては不勉強でした。
  • しかし、熱線追尾以外の誘導方式のミサイルでも魚雷艇には当たる。
  • 魚雷艇にAAM(空対空ミサイル)を改造して搭載しても、航空機の方が遥かに速いので魚雷艇は不利である。
  • 魚雷に特化したからこそ魚雷艇は成功したのであって、今までの戦例で戦果があったのは、相手側にハンディがあったからではないか。
  • 魚雷が不経済なので他の装備を積んでしまったら、もし相手がその装備を積んでしまったら優位性は無くなってしまう。
  • 敵制空圏下での戦闘は、小型原爆に耐えられる基地が必要になる。経済的に有利という理由だけで魚雷艇を大量配備するなら、核攻撃に耐えられる基地をその分用意しなければならないだろう。
この宮崎少年の指摘はまさにその通りで、敵制空権下での魚雷艇(ミサイル艇)は困難が伴い、湾岸戦争ではイラク軍のミサイル艇が一方的に米軍攻撃機に撃破されてしまいました。

もっとも、先に述べたようにこの後に魚雷艇は姿を消し、ミサイル艇に変わることになります。そういう意味で、宮崎少年の5番目の指摘は外れた事になります。レーダー反射面積の小さいミサイル艇として、今でも存続し続けています。

この9年後の1967年、エジプト海軍のミサイル艇の攻撃によりイスラエル駆逐艦エイラートが撃沈されたエイラート事件が発生し、ミサイル艇は水上艦艇に対しては、一定の効果があることが認識されました。

しかし、現代におけるミサイル艇は、途上国が経済的理由により配備したという要素が強く、中東戦争でのミサイル艇同士の小競り合いがその主な戦例なのもそれを裏付けます。
そして、近代的な駆逐艦に対して、魚雷艇の価値は大きく損なわれています。2008年のグルジア紛争で、グルジアのミサイル艇がロシア艦隊に攻撃を仕掛けましたが、戦果なく撃退されています。

じゃあ、今の自衛隊が装備しているミサイル艇はなんなんだ、と言うと、海上警備目的の要素が強く、不審船対策等の多用途性が求められ、はやぶさ型ミサイル艇は建造されました。その意味では、丹羽氏の主張のように多目的性が認められた形になります。

1人はマニアの学生、1人は本職の研究者が、魚雷艇のあるべき姿について意見を戦わせていたわけですが、 結局2人共微妙に当たって微妙に外れていたところに、未来予測の難しさがあるのかもしれません。

ちなみに、 「当局者ならびに読者の方々のご意見をも期待しています。」と結んだ宮崎少年ですが、この後の読者投稿欄における魚雷艇議論は確認できませんでした。「このガキ、理屈ばかりコネやがって」とでも思われたのではないでしょうか。

三つ子の魂百まで、とはよく言ったものです。






確信を持って言えるけど、宮崎駿が現代で少年時代送っていたら、スゲー文句つけつつ艦これやってるぜ絶対……

2013年7月18日木曜日

富士総合火力演習での携帯通信状況の改善を要望する署名を集めています【至急】

来月に迫った陸上自衛隊の富士総合火力演習ですが、会場周囲は演習場の野っ原であり、元々通信インフラが貧弱な地域でした。これに追い打ちをかけるように、近年のスマートフォンの普及に伴う通信量の増大により、年々と通信状況が悪化の一途にあります。



また、近年は自衛隊への関心の高まりからか、家族連れや子供も多く見かけるようになりましたが、人で溢れる会場、周囲を通行する車両の多さ等、会場周囲は安全な場所ではありません。そのような中で、通信手段が無いのは安全面からも問題があり、なにより不便です。

このため、総火演の開催中、携帯キャリアに会場周辺の通信状況を改善を要望する署名活動を行おうと考えました。

しかし、総火演まで既に一ヶ月と短く、時間は限られています。
本年は無理でも、来年以降でも、と改善を要望するつもりではありますが、早く改善できるのならそれに越したことはありません。

総火演に参加される方、あるいは趣旨にご賛同頂ける方は、Change.orgを通じて、賛同のご署名を頂きたく思います。
今年度からの改善を目指し、賛同頂ける方は、なるべく早めに下記サイトよりご署名頂ければ幸いです。


【署名キャンペーンページ】

陸上自衛隊富士総合火力演習会場での携帯の通信状況の改善 | Change.org




【参考:携帯キャリアの対応イベント一覧】

NTTドコモ:http://www.nttdocomo.co.jp/support/area/event_list/all_list.html
KDDI:http://www.au.kddi.com/mobile/area/event/
ソフトバンクモバイル:http://www.softbank.jp/mobile/info/personal/news/service/20130627a/

2013年7月16日火曜日

22DDH進水式告知PDFの墨塗りが見えてしまい、非公開だった艦名が分かってしまった問題

微妙に深刻な問題な気がする。

本日7月16日に、海上自衛隊サイトに「平成22年度護衛艦の命名・進水式について(PDF)」が掲載されましたが、進水式当日まで非公表だった艦名の部分の墨塗りが、「非表示情報の削除」を行わなかった為に、墨塗りをコピペすると見えてしまうという、初歩的な情報事故が起きました。

当該PDFは既に差し替えられてますが、差し替えられるまでに多くの人が閲覧しており、艦名とPDFの魚拓ファイル併せてネットに拡散されています。情報事故の内容を広めるつもりはないので、内容やURLをこの記事に掲載することはしませんが、簡単な検索で発見できる程度には広まっているでしょう。

PDFには文章の一部を墨塗りする機能があるのですが、完全に隠した情報を削除するには、「非表示情報の削除」を行わねばなりません。試しに、差し替えられる前のPDF文書を確認したところ、非表示情報が削除されずに残っていました。

海自PDFの非表示情報 削除されていない
非表示情報の削除を行わないと、見た目は墨塗りされていてもPDFに文書情報は残っており、中身を見ることができます。PDF情報の保全の基礎的な事なんですが、どうも徹底されずに掲載されてしまったようです。

ただ、今回の情報事故は艦名がちょっとばかし早く公表されただけに過ぎず、被害はまずありません。 しかしながら、このような初歩的なミスを公示してしまう、というのはかなりマズイのではないかと思います。

官公庁に対しては、情報公開法に基づく情報公開請求が可能です。
その際、個人のプライバシーに関わる情報や、公開することで政策の実施に影響を与える情報(防衛機密等)は墨塗りにして部分開示を行うこともあります。近年は電子情報を出力したPDFファイルで開示も行われるようになっており、開示されたPDFの墨塗り処理が今回のように非表示情報削除を忘れていたら、隠すべき情報を逆に目立たせる情報事故になると思われます。

海上幕僚監部のチェックと、大臣官房付きの情報公開室でのチェックのスキームは当然異なるものなのでしょうが、こういう情報事故が起きないようなチェック体制をしっかりしてほしいものです。


※2013/7/17,01:24改題

2013年7月15日月曜日

艦これおじさんになって考えた

この連休、巷で話題のDMMのブラウザゲー、「艦隊これくしょん」を時間を見つけてはやっておったのですよ。


ツイッターのTLではGW前後から話題になっていたのだけど、その頃はWorld of Tankに熱中していたので、艦これは気が向いたらやろうとしばらく放っといてました。ところが、艦これがプレイヤー急増のために新規受付が停止になるなどの過熱ぶりが伝わってきたので、「ビッグウェーブに乗り遅れた!?」と慌てて新規受付再開と同時に登録を行い、ぼちぼちとプレイ始めてみました。



ゲーム性は高いものではない。しかし……

ゲームとしての艦これについて、嘘偽りのない評価としては、上の小見出しの通りです。ゲーム性が特に秀でているゲームではありません。

ゲームの進行について少し説明しましょう。
プレイヤーは「提督」となり、駆逐艦、軽巡洋艦、重巡洋艦、戦艦、空母、水上機母艦の艦種(潜水艦は未実装)の擬人化ユニットである「艦娘」6人からなる艦隊を編成し、敵艦隊との戦闘を行い、敵主力に勝利することで次のステージに進みます。

この戦闘が少々厄介で、提督に与えられる裁量は非常に少ない。下に列記してみよう。

出撃前:    ・艦隊の編成
         ・個艦装備の変更
戦闘開始時: ・艦隊の陣形
戦闘終了時: ・残敵を掃討する夜戦に突入するか否かの選択
               ・ステージ探索を終えるか続行するか選択

実質、提督が戦闘に影響を及ぼせる要素はこれしかない。戦闘そのものは完全にオートバトルで、どの艦娘がどの敵をどうやって攻撃するか、なんてことは一切出来ない。陣形を選択し終えたら、お茶している間に戦闘は終わってしまっている。

艦これ 出撃前の艦隊編成

艦これ 敵との戦闘。完全にオートバトル

この点のみを挙げるならば、「『戦闘は始まる前から勝敗が決まっている』、という事のゲーム的表現なんだな。うんうん」と物知り顔で納得することもできたかもしれない。
しかしそうはいかない。このゲーム、ステージ内の艦隊進路は全てランダムで決まる。提督は運を天に任せて進むより他ない。艦隊が明後日の方向へと進み、目標に到達出来ないことはザラにある。初回でステージ攻略もできるプレイヤーがいる反面、何度チャレンジしてもダメなプレイヤーもいる。

このように、戦闘は指揮の采配ではなく、艦隊編成の妙、そして運で決まる。戦闘での駆け引きが好きなプレイヤーは、このあたりにストレスを感じることだろう。



では、艦これプレイの妙である、艦隊編成はどのように行うのか。
母港の艦隊司令部で秘書艦(第一艦隊の旗艦)のサポートの下、石油、弾薬、鉄鋼、ボーキサイト(アルミ)の資源を活用し、新造艦の建造や装備開発、艦の修繕が行われる。

母港画面

重巡や戦艦等の重量級艦艇は建造や修繕に多くの鉄鋼が必要で、航空機を運用する空母はボーキサイトが大量に必要となる。石油と武器弾薬は戦闘の度に使われ、連続した戦闘を行うと激しく消耗する。これら資源配分を塩梅よくこなすことが、効率的に艦隊を出撃させる鍵になる。
なお、上のキャプチャ画像の右上部分に保有資源が表示されているが、ここでは鉄鋼が他の資源より相対的に少なく、逆にボーキサイトが大量に余っている状態となっており、戦艦・重巡の運用に支障が出ている。新規提督はこうならないように気をつけてほしい。

このように、提督が持てる裁量のほとんどは、母港での艦隊編成や建造・開発等の後方分野に限定されている。戦闘での駆け引きや、爽快感を期待している向きには、かなり肩透かしを喰らうことだろう。

さて、ここまでざっと艦これのシステムについて軽く触れましたが、何か違和感を覚えた方もいるかもしれない。

「そのシステムで、擬人化する必然性あるの?」と。



艦娘たちの興亡

艦これの最大の特徴は、擬人化/キャラクター化された実在の戦闘艦にある。
この記事を書いている2013年7月15日現在、100隻以上もの艦艇が擬人化された艦娘として登場し、艦砲や艦載機などの武装も、三頭身くらいのチビキャラとして表現される。

驚かされるのは、この同型艦を含めた100隻以上全てにキャラクターを設定していることだ。同型艦は類似の制服を着用し、駆逐艦は若く、戦艦は年長者と言った具合に、同型艦や艦種で統一感を出しつつも、史実での活躍や戦歴を反映した各艦固有のキャラクター付けがなされている。

戦闘に影響する性能パラメータは同型艦ではほぼ同じだが、艦固有のステータスが付けられていることもある。例えば、運パラメータは数々の戦闘を経験しつつも終戦まで生き残った重巡青葉は高く設定されているのに対し、不遇な戦歴の戦艦山城は低く設定されており、これが戦闘の命中率や被弾率にも影響してくる。

艦これ 戦艦山城の説明。実艦の戦歴の不遇っぷりから、僻みっぽい性格

各艦固有のキャラクター付けは、戦闘や母港でのボイス付きのセリフにも現れている。前述の戦艦山城を修繕のためにドッグに入れると、「私……ドッグにいる時間の方が長いですよね……」と愚痴をこぼす。山城は戦前から改修を繰り返しており、艦隊よりドッグにいた時間の方が長いと揶揄されたネタを引っ張ってきている。こういう小ネタは知っていればニヤリとさせられるし、当該艦のWikipediaを見ていて気付かされる事もあるが、なにより艦娘達の個性を際立たせる事に成功している。これは上手い。

そしてこの艦娘達、戦闘で中破以上の判定を受けると、服がボロボロになったカットが表示されるお色気シーン(?)がある。東方Projectのボス戦で勝つとボスの服がボロボロになる事に似ているが、あざとさでは艦これが遥かに上である。それはそれはボロッボロッになりますよ、ええ。

ところが、これを積極的に見ようとするとリスクが伴う。
本番の戦闘で撃沈判定を受けた艦娘は、二度と戻ってこない戦没艦となる。下手に下心や収集欲を満たそうとして過酷な戦闘に投入すると、彼女らの死に際の恨み事と引き換えに二度と戻らないこともあるのだ(同じ艦娘が戻ることはあっても他人だ)。

このような背徳感・罪悪感を伴ったゲーム設計はリアルな艦艇では難しい。人の形をした艦娘でないと出来ないだろう。ハーツ・オブ・アイアンで戦艦が沈んで「畜生!」とは思っても、数千人いるであろう乗組員への憐憫の情が沸く人はあまりいないだろう。もちろん、艦これで撃沈されても艦娘1人の死でしかないとも言えるが、統計上の死が1人の死として認識されるようになるだけでも結構な進歩じゃなかろうか。

ところが、これとは真逆の事象も起こる。同型艦で名前も全く同じ艦艇が、何隻も配備されることが非常に良くある。川内型軽巡洋艦那珂が何隻も登場すると、速攻で廃艦処分でスクラップにしたくなってくる。スクラップにされる艦娘は、セリフこそ無いものの”カンカンカン”という解体音と共に消え、僅かばかりの無機質な資源と化す。

那珂ちゃん、君の事は忘れないよ。次来てもまたスクラップにするけど__。
なんなんでしょうね、この倫理の二律背反は。
こんなふうに愛着と効率の間で、己の業と向き合い楽しむゲームです。



艦これムーブメントのその前に

ところで、昨今の艦これムーブメントについて、ツイッターで相互フォローさせて頂いているa_park@偏読日記さんがこんな事を仰ってました。
そうだ。艦艇というか兵器擬人化は、艦これが生まれるより遥か昔からMCあくしずがあったじゃないか……。しかし、艦これが非軍オタを巻き込んだ一つのムーブメントになりつつあるのに対し、MCあくしずは必ずしも広範な支持を得ている訳ではない。同じ擬人化なのに……ナンデ?

ここからはあくまで自分個人の感想でしかなく、根拠もかなり薄い。実際にMCあくしずに携わっている方でツイッターでのやり取りの有る方や、実際に面識のある方もいらっしゃるが、その方は良い顔をされないだろう。
少なくとも、自分はa_park氏の思う所にかなり首肯できる部分があった。特に露出の部分について。

MCあくしず表紙の露出率はかなり高く、胸も強調されている。それに対し、艦これは露出過剰な艦娘もあるものの、全体的な傾向として通常時の露出はかなり少ない。中破以上の損傷を受けて初めて露出が多くなる。
良く言われることだが、“萌え”という価値が差異・ギャップから生じることを考えれば、通常時からあけすけなのはあまり宜しくないだろう。

ただ、そういう不毛な論争になりかねない「萌え」を巡る話は一旦置いといて、艦これのリリース元のDMMと、MCあくしずのイカロス出版社のポリシーの違いも、大きな影響を与えているのではないかと感じます。

イカロス出版の主力事業は、航空機等の乗り物系軍事系出版事業が核で、そのスピンアウト的な位置に萌え系・擬人化系のMCあくしずがある。一方、DMMはアダルトビデオ通販サイトを起源に持つ、今もエロ関連が事業の中核を占める通販・配信サイトだ。
一方はマジメな出版社、もう一方はAV販売業者。ところが、同じ擬人化キャラを出してみたら、マジメな出版社は露出過多で、AV販売業者は露出抑え目だった。
この違いは色々と示唆に富むものがあると思います。

DMMの成人向けページを閲覧していて思うのは、秋葉原のアダルト系店舗が表店でもどギツイエロ装飾しているのに対して、DMMはかなりあっさりしたインターフェースと表示なんですよね。エロのサムネイルも標準は小さく設定されている。
このように販売ページのエロ露出は控えめなのに、それでもやっぱり売れていて、ECサイト業界の中でもかなりの急成長を遂げ、ついに自社製作のゲーム(注:艦これが初めてのDMM内製ゲームと言われている)まで出してきた。

平時と非常時のギャップ(着衣と露出)に加え、それを生み出す過程に背徳感・罪悪感を持たせたる設計。
あるいは、個性的なキャラ付けで愛着を持たせると共に、非情な解体もプレイヤーに行わさせる。
こーゆー差異を生み出す構造をゲームに取り込むことに成功したのが、艦これが面白がられる一因じゃないかと思うんですよね。
それと同じで、普段から露出高いと通常時からの落差が生じない。普段からの差異を大きく、数多く用意しとかないと、人は麻痺しちまうんじゃないかと思った次第。

私の大好きな作家である秋山瑞人(新刊は……新刊はまだですか……)のストーリー展開は、「持ち上げる」「くすぐる」「突き落とす」と評されていましたが、こういう構造を取り入れた艦これ、やっぱすげえなあ、と思うのですよ。



さて、資源も回復した艦これおじさんは、金剛ちゃん出させる作業に戻ります。
コミケの事は忘れた。 



【関連】
DMM:艦隊これくしょん

2013年7月9日火曜日

海上自衛隊のソマリア沖海賊対処、護送船団方式も変更?

海上自衛隊がソマリア沖に派遣している海賊対処部隊ですが、本日7月9日の閣議において、1年間の派遣延長が決定されると共に、かねてから報道されていた米国主体の多国籍部隊CTF151へ護衛艦1隻を合流させることになりました。

海賊対策 多国籍部隊に参加へ NHKニュース
政府は、9日、海上自衛隊がアフリカのソマリア沖で行っている海賊対策について、活動の期限を1年延長することを閣議決定しました。
小野寺防衛大臣は、近く自衛隊に命令を出し、ことし12月をめどに船舶を護衛する方法を改めて、一部の護衛艦を多国籍部隊の活動に参加させることにしています。
これまでの海上自衛隊のソマリア沖海賊対処行動は、航行する船舶で船団を組み、船団を2隻の護衛艦で護衛する「エスコート方式」、つまりは護送船団方式でした。

昔のブログ記事から引っ張って来ましたが、海上自衛隊の護送船団方式(2010年時点)は、船団を高速で乾舷の高い「低リスク船」と、低速で乾舷が低いために海賊に襲われる可能性の高い「高リスク船」のグループに分け、海賊出没時には護衛艦1隻は海賊船に対処し、高リスク船は高速で退避、低リスク船を残る護衛艦1隻が護衛するという方法を取っていました。
海上自衛隊の船団護衛
しかし、今回のCTF151へ護衛艦が1隻参加することに伴い、船団をエスコートする護衛艦は1隻のみとなります。このため、船団護衛の内容は大きく変わるものと考えられます。

この背景として、商船への武装警備員の搭乗に伴って海上自衛隊が護衛する船舶の数そのものが減少傾向になることと、各国の海上警備が功を奏して襲撃件数は減ったものの海賊の活動範囲が広範囲化していることが考えられます。
このため、これまでのエスコート方式による直接護衛のみの方針から、ゾーンディフェンス方式で海賊を積極的に抑制しようとする動きに変更したと考えられます。

では、新たに行うエリアディフェンス方式の護衛とはどのようなものでしょうか?
エリアディフェンスはソマリア沖で対海賊活動している各国軍のうち、有志連合軍や欧州主体の国際部隊が採用しており、海賊が出没する海域をパトロールするものです。エスコート方式との違いを分かりやすく言えば、エスコート方式が専属のボディガードで、エリアディフェンス方式は地域の治安を維持する警察みたいなもんです。

有志連合のエリアディフェンス海域「安全回廊」

上図は有志連合が設定した安全回廊と呼ばれる海域で、イエメン沖30〜40マイル・長さ490マイルの海域のエリアディフェンスが行われ、各国の船舶は警備が行われているこの回廊を航行するようになっておりました。

エスコート方式が襲撃してくる海賊船への受動的な防御であったのに対し、エリアディフェンスでは特定海域での警戒活動や不審船舶への臨検活動などの能動的な活動になります。

これまで、日本独自の活動として行なってきた海賊対処が、国際部隊と協調して行う活動へと変化したことは重要な意味を持つものと考えられます。
参加艦艇は他国軍の指揮下に入ることになるため、臨検活動などを命じられ、そこで戦闘となる可能性も否定できず、派遣隊員の危険度も増してくるものと思われます。

また、派遣されている部隊のうち、P-3C哨戒機の扱いがどうなるかも気になるところです。現在、広範囲を捜索できる固定翼哨戒機を派遣している国は少ないことからも、かなり重要な戦力になると考えられますが、今後に注視したいと思います。

【関連記事】
dragoner.ねっと: 自衛隊の海賊対処活動とその実情 前編
dragoner.ねっと: 自衛隊の海賊対処活動とその実情 後編

【関連書籍】


2013年7月6日土曜日

赤旗記者はツイッターはできてもネットには繋げない上、赤旗本紙すら読めないらしい

前に週刊金曜日はバカだなあ、って記事を書いたんですが、同じ左派でも週刊金曜日とは微妙な関係にある赤旗が同じネタ飛ばしてくれましたよ。
自衛隊が毒ガス製造/周辺に学校・保育所、説明せず/化学学校でサリンなど7種類/防衛省認める/大宮駐屯地
毒ガス製造をめぐっては、「週刊金曜日」(5月17日付から6回連載)が、64年にサリン合成に成功し、自衛隊内部でも極秘扱いの下、毒ガスの製造と研究が続いていたとの元化学学校長の証言をスクープしています。
赤旗にしろ週刊金曜日にしろ、特定思想の持ち主だけ相手にする商売して、事実上市場競争に晒されていないと、こんな20年前の週刊誌ネタでも商売になるんだなあ、美味しい商売だなあ、と羨ましい限りです。

前にうちでも書いたことですが、1964年からサリン合成していたことは読売新聞が2005年に記事にしているし、こんなことがスクープになる左翼おじさん相手の商売、僕もしたいです。

また、赤旗政治記者は国際法違反だのなんだの騒いでますが、とうの赤旗記事本文中に、
1997年に発効した化学兵器禁止条約はこれらの物質の製造・使用を原則として禁止しましたが、研究・防護を目的とした製造は例外扱いとなっています。
とか書かれちゃっているんですが、赤旗記者なのに記事本文読んでいないんでしょうか。ひょっとして、赤旗政治記者は左翼おばさん相手の商売だと割りきっている思想ノンポリで、赤旗なんぞプライベートで読まない商業アカ(Red for pay)の可能性も微粒子レベルで存在する……? 
だとしたら、実に美味しい商売につかれているようで羨ましい限りです。

念の為に防衛省が化学兵器等の製造に関する内部規定でも貼っときますか。
ちなみにこれ、普通にネットで見れます。
第1条 この訓令は、化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約の適確な実施を確保するため、化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律(平成7年法律第65号。以下「法」という。)の規定に基づく特定物質の製造、使用その他の取扱い(以下「特定物質の製造等」という。)について定めるものとする。
2 特定物質の製造等に関しては、法令又はこれらに基づく特別の定めのあるもののほか、この訓令によるものとする。
法律に規定され、かつその法令に準拠した訓令がございますね。はい解散。

「大きな嘘でも頻繁に繰り返されれば、それ聞かされた人間は信じるようになる」とはナチスドイツの宣伝相ゲッベルスの言葉ですが(余談だけど「嘘も百回繰り返せば真実になる」とゲッべが言った、というネタ話は根拠無いそうです)、赤旗政治記者みたいに思想に凝り固まった人達相手の相手していると、書いている自身の視野と思考すら狭めてしまうのだなあ、と思ってしまいました。コワイね!

お金は大好きですが、人間的にどうにかなってしまうのはイヤなので、赤旗を反面教師にして、人間性を保ちつつ、楽にお金を集めるシステムの構築を日々考えたいと思います。

2013年7月2日火曜日

10式戦車のタッチパネルは何方式なんだろうね、というおはなし

iPhoneの登場以降、すっかり携帯電話はタッチパネル式が主流になってしまいました。日本で発売になってから、まだ5年も経ってないのに凄い変化です。

携帯がタッチパネルになってからというもの、 情報取得の効率が飛躍的に高まったと体感している方も多いのではないでしょうか。大画面で直感的な操作が行えるタッチパネルは、大量の視覚情報を処理するのに向いたインターフェースなのです。

軍事の世界では、iPhoneの普及よりもずっと早くからタッチパネルが普及していました。高機能化・複雑化する兵器に対して、物理的なスイッチの煩雑さを回避し、操作や情報取得をシンプルにするための手段として、タッチパネルが採用されました。

アナログ計器・物理スイッチが多いF-15コックピット(Wikipediaより

タッチパネルに多くの機能が統合されたF-35のコックピット(Wikipediaより


特に航空機は、表示計器の液晶ディスプレイ化、グラスコックピット化が進んでおり、最新戦闘機のF-35でもタッチパネルが重要な操作インターフェースになっています。




陸上においても、最新の10式戦車では情報の迅速な伝達、共有のためにタッチパネルが使われており、車長、砲手用モニタ等がそれにあたります。電子地図で場所、進路を示したり、射撃目標を指示することがタッチパネルで可能です。

ところで、10式で採用されたタッチパネル操作は、当然のことながらいきなり採用されたものではなく、10式の開発が始まる前からの研究で実証済みの技術でした。

10式戦車の開発がスタートするのは2002年ですが、その前の1998年から2000年にかけて、将来車両装置の研究試作が行われており、そこでタッチパネルを利用した戦車の操作の実証試験が行われていました。


将来車両装置(2010年度防衛省技術研究本部パンフレットより)


将来車両装置の研究では、将来戦闘車両評価用テストベッド(ややこしいですが、「将来車両装置」とは別の研究です)での研究成果を踏まえ、将来の戦闘車両開発のための技術資料を得るための実証と評価が行われました。

具体的には、遠隔操作式の視察照準装置、動力装置についての実証評価が行われ、視察照準装置の一部としてタッチパネルが採用されております。
ここでタッチパネルが採用された理由としては、画面上の点を確実に指示できるインターフェースであることが、視察照準に重要なポイントだった事が挙げられます。

ところで、現在のスマートフォンで利用されているタッチパネルは、静電容量式が主流です。少し前は指の圧力を感知する感圧式のスマートフォンもありましたが、今は静電容量式が多くを占めます。
静電容量式は、軽く触れるだけで動き、分解能も高いので細やかな操作が出来るのが特徴です。
では、戦車に使われるタッチパネルはどのようなものが使われているのでしょうか。


将来車両装置の研究では、下表のように赤外線、超音波、静電容量、抵抗膜の4種類のタッチパネル方式が検討されました。

タッチパネル比較
ここで重視されたのは、耐環境性、傷による誤検知の有無と、手袋着用時の使用についてで、比較の結果、 赤外線方式が採用されることになりました。

赤外線方式は、赤外線のビームが画面前方に出ており、それを指が遮る事で、画面上のどこにタッチしたかを検出するものです。
表示画面そのものに細工をするものではないので、耐環境性や耐久性に優れます。また、分解能は4方式中最も低いものの、どうせ乗員は手袋をして操作しているので、分解能が高くてもあまり意味は無いでしょう。
乗員は外に出ることも多いので、手袋の汚れも十分に考えられるため、誤作動の心配が無い赤外線方式になったのは当然でしょう。

では、今現在の10式のタッチパネルは、何を使っているんでしょうか。

上の比較が作成されたのは10年以上前ですので、今現在は事情が少々異なります。
スマートフォンで主流の静電容量式は、タッチ面がガラスになり、透過性、耐久性も優れたものが登場しました。しかし、それでも手袋使用時の操作が困難なのがネックとなります。(ごく最近、静電容量式でも普通の手袋で操作OKなのが出たそうですが)

将来車両で採用された赤外線方式も進歩し、当時は横軸・縦軸に赤外線ビームを発振する素子がズラリと並んでいたものが、今現在は画面上部左右に赤外線発振機を2個設置するだけで、指が触れた点を三角測量して位置を割り出す方式が開発されています。

ここでは、手袋での使用を考慮して、10式戦車のタッチパネルも、赤外線方式が採用されていると考えるのが妥当な気がします。

戦車乗員員の手袋の指先を導電性の素材に変えれば、静電容量式でも手袋を嵌めたままで操作はできるでしょう。しかし、整備で電機機械を扱う作業もする乗員の手袋に、導電性のある素材を指先に使うとは少々考えにくく、 従来通りの手袋だと考えられます。


もし、10式のタッチパネルの方式を確認したいのでしたら、駐屯地祭などで説明している乗員の手袋をそれとなく確認してみるのも手だと思います。指先だけ別素材が使われていたら、静電容量式の可能性もあるのかもしれません。

スマフォ使いの隊員の私物である可能性も捨てきれないけど。