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2013年10月9日水曜日

機動戦闘車試作車公開!

防衛省技術研究本部で開発が進められている、陸上自衛隊向けの新型戦闘車両「機動戦闘車」の試作車が、神奈川県相模原市の防衛省技術研究本部陸上装備研究所で初めて報道陣に公開されました。


機動戦闘車はクローラー(キャタピラ)ではなく、タイヤで走行する装輪装甲車と呼ばれるタイプの装甲車で、路上での高い機動性を持ち、戦車に迫る105ミリライフル砲を搭載し高い火力を持つことが特徴です。輸送性も配慮されており、航空自衛隊で配備が始まっているC-2輸送機で空輸可能。また、現在艤装中のいずも型護衛艦にもランプ(車両用スロープ)を利用して、自走して艦内に搭載可能です。



現在、防衛省・自衛隊では、部隊を迅速に展開する機動展開能力向上を目指しています。大幅な防衛費増額が望めない財政事情の中では、今ある部隊を有効に活用する事が防衛力向上の鍵となります。部隊の機動展開能力を高め、必要な場所に必要な時に、必要な戦力を投入する体制を築くには、陸海空の自衛隊の密接な協働と、円滑な輸送・機動を可能にするシステムを構築する事が重要です。そのためのシステムの構成要素として、機動戦闘車は開発されたと考えられます。



軽量な割に高い火力の機動戦闘車は、戦車が投入されるまでの繋ぎとして、あるいは戦車の投入・輸送が出来ない地域においては限定的に戦車の様な運用がされると考えられます。現在、中国は軽量戦闘車両の開発に力を入れており、03式空挺歩兵戦闘車、05式水陸両用戦車、09式装輪歩兵戦闘車といった、多彩な車両を開発していますが、特に09式装輪歩兵戦闘車は装輪式で大口径砲を搭載する型もあり、機動戦闘車に近い性格を持つ装備です。

中国軍の09式装輪歩兵戦闘車
昨今、島嶼部を巡る問題が盛んに報道されていますが、仮に島嶼部で武力衝突が発生した場合、展開能力に優れた戦闘車両が双方で先陣を切ると考えられます。防衛省の運用構想図でも島嶼部での戦闘が強調されており、こちらも展開力に優れた機動戦闘車が真っ先に派遣されると考えられますので、同じ様な戦闘車両同士で戦闘が発生する事になるでしょう。



さらには都市部での対ゲリラ・特殊部隊との戦闘も考慮されています。都市部では普通科部隊(歩兵部隊)との協働が重要で、建物を制圧する隊員を屋外から支援する能力が求められます。また、都市部での戦闘で従来有効だと考えられていた小中口径の機関砲による攻撃が、弾の貫通力が高いために意図しない場所に被害を及ぼしてしまう例がイラク戦争で報告されている反面、大口径砲の砲弾は大きな爆発こそしますが、貫通力の低い破片は屋内に留まる事が多いため、意図しない場所への付帯被害を防ぐのに向いているとされています。



機動戦闘車の総開発経費は173億円と見積もられており、実車試験を経て、平成27年度に開発が完了の予定です。部隊配備はもうちょっと先になりますね。

意味深














【速報版のため、随時更新します】

2013年9月10日火曜日

平成25年度 事前の事業評価評価書を読む

平成25年度の防衛省、事前の事業評価の評価書が公開されました。事業評価とは省庁が行う政策事業について、各事業毎に事業前・中間段階・事業後の3段階で効果を評価し、事業にフィードバックすることで効率的で質の高い事業を目指す政策評価のことで、その結果は国民に公開されています。防衛省の場合、事前の事業評価で新たな装備品開発や技術研究が明らかにされるので、数年後に配備される新装備がどういったものかを知る事の出来る機会でもあります。

では、今年度に行われた事前の事業評価はどのような物があるのでしょうか。表にまとめてみました。


平成25年度 防衛省 事前の事業評価一覧

今年度は装備開発が1件、技術研究が10件の計11件で、前年度が装備開発6件、研究11件の計17件と開発ラッシュだったためか、大幅に少ないものとなりましたが、いくつか興味深いものをご紹介しましょう。



パワーアシスト技術の研究

パワーアシスト技術は分かりやすく言うと、SF映画などで登場するパワードスーツと同じ技術です。日本ではパワードスーツという言葉が知られていますが、英語ではPowered exoskeleton(強化外骨格)という言葉が一般的です。人間が装着することで、筋力を補助・増強する装置で、重量物の運搬や重機車両が入らない閉所での重作業等を行います。商業用でも力がいる介護用や、原発事故のような特殊災害での活動を想定した物が研究されていますが、軍用でも歩兵の能力向上・維持のために研究が行われています。

防衛省の研究するパワーアシスト技術イメージ(評価書より)


防衛省の公開した評価書とイメージ図を見ると、研究の焦点は民間のパワードスーツが使用できない不整地で行動し、隊員が携行する重量物を増大させることにあるようで、軍用パワードスーツの基礎的な研究と言えます。防衛省がこの研究に乗り出した背景としては、隊員が携行する装備品や電子機器は増えても、人間が長時間運搬することの出来る重量は変わらないという人間の限界から来る問題があります。携行品の小型化は進んではいるものの、人間が長時間携行するには重い物も多く、だったら人間の能力を上げようとパワーアシスト技術の研究が各国でも各国でも行われていますが、問題は稼働のためのバッテリーが短時間しか持たないことで、実用化には省電力化とバッテリー容量の増大が鍵となります。



高出力マイクロ波技術に関する研究

高出力マイクロ波技術の研究は、高出力のマイクロ波を照射する事で、敵のミサイルの電子回路等にダメージを与えて無力化する技術についての研究です。高出力マイクロ波の利用については、車の電子機器を破壊して停車させたり、暴徒に照射して強力な痛みを与えて鎮圧する非致死性兵器としての研究も海外では行われており、ミサイルの破壊以外にも応用性が高い研究になると考えられます。



水中無人航走体長期運用システム技術の研究

近年、無人航空機についてのニュースをよく見るようになりましたが、海中の無人機(UUV:Unmanned Underwater Vehicle)の研究も各国で盛んに行われています。本研究ではUUVを長時間稼働させるための、燃料電池をUUVに搭載する技術について研究されます。

防衛省が研究するUUVシステム(評価書より)

燃料電池は発電効率に優れ、家庭用や自動車用に研究が進められていますが、燃料の水素は爆発性の気体であると共に、どんなに密封しても原子半径が小さい為に容器をすり抜けてしまう特性のため貯蔵が難しく、燃料電池実用化の大きな壁になっています。UUVの稼働時間の増大は、作戦の柔軟性と省力化に繋がるので、良い成果を期待したいところです。

2013年7月24日水曜日

ミリオタ宮崎駿の少年時代

宮崎駿監督最新作の風立ちぬ、公開されましたが評判良いですね。

風立ちぬ サウンドトラック[共通特典CD付き]

私はまだ観ていませんが、ツイッターでも評判が良いので、時間が出来たらすぐにでも観たいと思います。

ところで、風立ちぬが零戦設計者の堀越二郎の話であることから見ても分かるように、宮崎駿はかなりのミリオタです。それも、ミリオタロリコン社会主義者と、1つでも業が深いモノを3つも抱えた3重苦です。恐ろしく業が深い人間です。

こんなたくさんの業を抱える前、若き日の宮崎少年はどんな人物だったんでしょうか。
それを窺わせるものが、ネット上で話題になったことがありました。
それは、若き日の宮崎駿(17歳)の「世界の艦船」誌への投稿です。

世界の艦船 1958年5月号より

この投稿は「世界の艦船」1958年5月号の読者欄に掲載されたものです。ネット上では、この部分しか出まわっておらず、何故宮崎駿がそれを書き、その後どうなったのかの経緯は明らかにされていませんでした。
今回は、宮崎駿がこの投稿を書いた背景と、その後の展開についてご紹介したいと思います。



世界の艦船創刊

戦後日本で初めての艦船総合雑誌、「世界の艦船」が創刊されたのは、1957年8月でした。
宮崎駿が初めて投稿したのは、1958年5月号ですから、かなり初期からの読者になります。当時、世界の艦船は発行部数も少なく、地方では手に入りづらかったそうで、かなりの筋金入りのマニアが集っていました。

当時の読者投稿欄を見ると多彩な顔ぶれで、中学生から旧軍人ら、様々な人達が投稿していました。著名な投稿者には、堀元美(海軍技術中佐。空母・駆逐艦の設計に従事)、黛治夫(海軍大佐。戦艦大和副長)、小松崎茂(イスラストレーター)などがおり、非常に活況に満ちておりました。

投稿欄以上に本文記事でも、旧軍人や現役の技術者らによる投稿が行われており、1958年4月号には、防衛庁技術研究所第五部(現・防衛省技術研究本部艦艇装備研究所)の丹羽誠一氏による投稿論文「魚雷艇の話 その価値と効用」がありました。宮崎駿が投稿するきっかけになった論文です。

論文の趣旨は以下のようなものです。
  • 現在(1958年時点)の日本の情勢は、日清日露戦争の時代と著しく似ている。
  • 平和憲法により他国に脅威を与える軍備は持てないし、持つための財源もない。
  • 第二次大戦の戦訓(多くの事例を提示)に基づけば、魚雷艇は多目的に使え価値は高い。
  • 魚雷艇は機敏なため、意外と航空機からの攻撃に強い。
  • よって、我が国における魚雷艇の価値を再考すべきではないか。
という問いかけの論文でした。

この論文に対し、宮崎駿少年はネットでよく知られる疑問を呈する訳です。

 4月号の「魚雷艇の話」、非常に興味深く拝読しました。ただ、ちょっと感じたのですが、これからの魚雷艇の価値を判断するのに、第2次大戦中の戦訓に基いてするのでは、ずいぶん不合理な点も出て来るのではないかと考えさせられました。魚雷艇の兵装はたいして変わらないが、その相手になる艦船と航空機の、火器の精度と電子兵器の進歩は、すさまじいものがあると思います。これからの魚雷艇は局地戦闘において、敵航空機の跳梁下に行動することも多いと思います。しかしMTB、MGBの40ミリ機砲および4.5インチ短身砲は、第2次大戦中の速力300浬/時の攻撃機、あるいは浮上潜水艦との戦闘ならともかくも、これからの超スピードの攻撃機に、どの程度の対空威力を発揮しうるといえるでしょうか。
現在ミサイルは各方面に急速な進歩をとげつつあり、着着実用の域に達しつつあります。魚雷艇は高速航海時に多量の熱放射線を出し、それは空対艦の熱線ホーミング装置のミサイルに、良好な感度をあたえます。魚雷艇の火器の射程外から安全かつ正確な攻撃が可能です。こうなると魚雷艇の被弾率は少なく、対空火力は有力だということはいえなくなります。駆逐艦は火器を対空ミサイルに改装することが可能ですが、50~100トンの魚雷艇ではミサイルを装置すれば、MTB、MGBの役は、果たすことが不可能になります。結局大型化の必要が生じてきます。これからは敵航空機の優勢な局地における駆逐艦と魚雷艇の経済度云々は成立しなくなるのではないでしょうか。魚雷艇はやはり潜水艦に対する沿海における攻撃と警戒に主要な価値があるのだと思います。
魚雷艇は対潜一本に進むべきでしょう。その点わが国の魚雷艇が派手ではありませんが着実にその道を歩んでいるのを見ると嬉しく思います。生意気な意見をのべましたが、私もわが国の艦艇の進歩を祈る1人です。愚見御笑覧下さい。
(東京都杉並区永福町 宮崎駿)

宮崎少年の疑問を要約してみましょう。
  •  これからの魚雷艇の価値を論じるのに、二次大戦の戦訓をあげるのは不合理でないか?
  •  魚雷艇の装備で、急激に進歩する航空機に対抗できるのか?
  •  魚雷艇は大量の熱を出すので、熱線追尾式空対艦ミサイル(ASM)に追尾されやすく、魚雷艇の被弾率は少ないとは言えないのではないか?
  •  小さい魚雷艇に対空ミサイルを積めば、結局大型化してしまうのではないか。
  • よって、敵航空機の優勢な局地における魚雷艇の経済性は成立しないのではないか。
  • むしろ、魚雷艇は沿岸の潜水艦対策に注力すべきではないか。
以上が宮崎少年の疑問です。

この宮崎少年の疑問に対し、1958年6月号に丹羽氏より回答がありました。

世界の艦船 1958年6月号より

◆5月号読者交歓室 宮崎駿氏へ
第2次大戦中の戦訓のみに基いて、これからの魚雷艇の価値を判断することは不合理だとの御説、まことにもっともだと思います。今日考えうる最新式の装備を持った魚雷艇と、最新式の艦艇・航空機との間の戦闘力・建造費等々を比較することができれば、これに越したことはないのですが、新型兵器の多くはその性能が公表されず、また魚雷艇はその性質上、戦況に応じて兵装を変えて行くので、やむなく過去のある時期におけるものを採って、経済的戦備としての魚雷艇の可能性を指摘して、研究の手がかりとしたのが4月号の小論です。
なおあなたの論旨が、魚雷艇の兵装がたいして変わらないということ、空対艦のホーミング・ミサイルに対して魚雷艇が駆逐艦以上の感度があるという前提に立っている点には問題があります。あなたの取り上げている熱線ホーミングに対して考えると、魚雷艇のエンジンは完全に艇内に装備され、その排気は艇外に排出する前に海水を注入されて40℃程度に冷却されており、飛行機のエンジンや駆逐艦の煙突などとは比べものにならないほど熱線の輻射は少ないのです。兵装については対潜用魚雷艇がソーナーを持ちホーミング魚雷を持って非常に有力なものになっていると同様、局地戦闘兵力としての魚雷艇も必要とあればいつでも新しい兵装に切りかえることが出来ます。 DDGは味方部隊の防空用として敵攻撃機が射点に入る以前にこれを撃墜しなければならないので、あのように大がかりな艦対空のミサイル装置を持っていますが、魚雷艇が敵機と対等にわたりあうためであれば、戦闘機の持つ空対空ミサイルに多少の改造を加えるだけで使用可能でしょう。局地水上戦闘力としては大型で装甲厳重な軍艦を攻撃するというような機会は、非常に少なくなり、主な対手は駆逐艦以下の防御力の弱い艦艇、上陸用舟艇類、輸送船等となると考えられますので、魚雷艇はむしろ不経済で、ロケット砲・有線誘導ミサイル等の野戦兵器に、比較的軽量で効果が大きく、しかも弾数の多く搭載できる魚雷艇向きのものがあるのではないでしょうか。これによって第2次大戦中期まで500メートルぐらいまで近づかねば必中と言えなかった対水上艦艇攻撃は、その数倍の距離から可能となります。
(防衛庁技術研究所第5部 丹羽誠一)
ここでの丹羽氏の回答を要約しましょう。
  • 第二次大戦の戦訓のみに基づくのは不合理という指摘はもっとも。
  • ただ、新型兵器は性能が公表されず、魚雷艇は兵装を変えることができるので、やむなく2次大戦の戦訓を用いて魚雷艇の可能性を指摘した。
  • 魚雷艇は大量の熱を出すので熱線ホーミングミサイルに狙われるという指摘だが、魚雷艇の排気熱は40℃まで冷却して排出されるので、その指摘は当たらない。
  • 魚雷艇の装備もまた新しいものに切りかえることができる。
  • 魚雷艇に積む艦対空ミサイルは、DDG(ミサイル搭載護衛艦)よりも小さなもので良いので、重量増には繋がらない。
  • 魚雷艇の相手は大型艦ではなく、駆逐艦以下の小型艦が相手になるので、魚雷は不経済。魚雷艇にロケットやミサイル等の兵器を搭載することで、従来より遠距離から攻撃が可能になる。
丹羽氏は戦訓の引用例が不適切であることは認めたものの、宮崎少年の熱線ホーミングミサイルに魚雷艇は弱いのではないかという論拠に反論し、また魚雷にこだわらず魚雷艇に様々な新装備を積むことでの可能性について言及しています。

ところで、この魚雷艇のあるべく姿を巡って2人は議論しているわけですが、現実はどうなったでしょうか? 答えから言ってしまうと、2人共微妙に外して微妙に当たっています。

まずそもそも、魚雷艇という種別自体が、今現在は絶滅危惧種です。少なくとも、自衛隊から魚雷艇は消え、ミサイル艇に変わりました。丹羽氏は魚雷に拘っているわけではなく、ミサイルなどのより適した装備を積めば良いとしているので、 その点で言えば当たっています。
しかし、宮崎少年は敵航空勢力下で活動ができるのか? と疑問を呈しています。これは宮崎少年の言うとおりで、今現在のミサイル艇は、ほぼ対空攻撃能力を諦めています。あまりに空対艦ミサイルが長射程化しており、プラットフォームとして小さすぎるミサイル艇では、攻撃機に対抗できる対空ミサイルを運用できないからです。この点は宮崎少年の言う通りになりました。

海上自衛隊の“はやぶさ”型ミサイル艇(Wikipediaより)

丹羽氏の回答に対し、宮崎少年は1958年8月号で反論を試みます。

世界の艦船 1958年8月号

5月号本欄での小生の質問に対し、早速丹羽さんから親切な御回答があり、感謝しております。魚雷艇の熱線放射の件、小生の不勉強でした。
しかしASMの誘導方法は、熱線ホーミング式でなくとも、他の方法(たとえばビームライダー式と全アクティブ式の組み合わせ等)でも、正確な命中は期待出来ます。また魚雷艇にAAMを改造して搭載したとしても、攻撃機のASMとほぼ同じ性能のものであったとしたら、速力の関係から結局航空機の優勢はあらそえないことになると思います。魚雷艇は魚雷という破壊力の強大な、しかも特殊な艦艇にしか搭載できない兵器を機敏な小艇に装備したところにその成功の原因があったのであり、またその攻撃の目標となる艦の、攻撃と防御の対手が魚雷艇ではなかったところに、戦果を収めるチャンスが生まれたのであり、対手のハンディキャップにおいてはじめて勝利を獲得し得たのではないかと思います。
よって局地戦闘において、その対手が仮に防御力の弱い艦艇であったとしても、魚雷が不経済だからというので、他の野戦兵器を搭載したとしたら、その兵器は同時にその対手にも搭載可能であり、魚雷を持つときのような攻撃力の差はなくなってしまいます。少しぐらい優速であったとしても、敵制空圏下の局地防衛など不可能になるのではないでしょうか。また局地戦闘で充分に使える魚雷艇が出来たとしても、敵制空権下で戦闘するのでは、小型原爆くらいに対して安全な基地が必要であり、それにはトンネル式にするとかして特殊な基地を全国各地に多数配備しなければなりません。従来の基地は開戦の第1日に破壊されてしまい、使用出来なくなるでしょう。補給が困難になったら活動出来ません。結局経済的に魚雷艇が有利であるということで、ただそれを多数配置するというのでは意味がありません。もし充分活用出来る魚雷艇が出来、信頼しうるものであったなら、基地建設と並行して整備すべきでしょう。日本の防衛庁は魚雷艇の使用にあたって局地防衛戦闘と対戦戦闘のどちらに重点を置いているのでしょうか。前者ならば特殊基地の建設を現在計画しているのでしょうか。当局者ならびに読者の方々のご意見をも期待しています。
(東京都 宮崎駿)

この負けず嫌いで食い下がるところ、いかにも若いマニアっぽくて既視感あります。皆こうだったよね?

さて、この反論での宮崎少年の言い分はこうです。
  • 魚雷艇の熱線放射の件に関しては不勉強でした。
  • しかし、熱線追尾以外の誘導方式のミサイルでも魚雷艇には当たる。
  • 魚雷艇にAAM(空対空ミサイル)を改造して搭載しても、航空機の方が遥かに速いので魚雷艇は不利である。
  • 魚雷に特化したからこそ魚雷艇は成功したのであって、今までの戦例で戦果があったのは、相手側にハンディがあったからではないか。
  • 魚雷が不経済なので他の装備を積んでしまったら、もし相手がその装備を積んでしまったら優位性は無くなってしまう。
  • 敵制空圏下での戦闘は、小型原爆に耐えられる基地が必要になる。経済的に有利という理由だけで魚雷艇を大量配備するなら、核攻撃に耐えられる基地をその分用意しなければならないだろう。
この宮崎少年の指摘はまさにその通りで、敵制空権下での魚雷艇(ミサイル艇)は困難が伴い、湾岸戦争ではイラク軍のミサイル艇が一方的に米軍攻撃機に撃破されてしまいました。

もっとも、先に述べたようにこの後に魚雷艇は姿を消し、ミサイル艇に変わることになります。そういう意味で、宮崎少年の5番目の指摘は外れた事になります。レーダー反射面積の小さいミサイル艇として、今でも存続し続けています。

この9年後の1967年、エジプト海軍のミサイル艇の攻撃によりイスラエル駆逐艦エイラートが撃沈されたエイラート事件が発生し、ミサイル艇は水上艦艇に対しては、一定の効果があることが認識されました。

しかし、現代におけるミサイル艇は、途上国が経済的理由により配備したという要素が強く、中東戦争でのミサイル艇同士の小競り合いがその主な戦例なのもそれを裏付けます。
そして、近代的な駆逐艦に対して、魚雷艇の価値は大きく損なわれています。2008年のグルジア紛争で、グルジアのミサイル艇がロシア艦隊に攻撃を仕掛けましたが、戦果なく撃退されています。

じゃあ、今の自衛隊が装備しているミサイル艇はなんなんだ、と言うと、海上警備目的の要素が強く、不審船対策等の多用途性が求められ、はやぶさ型ミサイル艇は建造されました。その意味では、丹羽氏の主張のように多目的性が認められた形になります。

1人はマニアの学生、1人は本職の研究者が、魚雷艇のあるべき姿について意見を戦わせていたわけですが、 結局2人共微妙に当たって微妙に外れていたところに、未来予測の難しさがあるのかもしれません。

ちなみに、 「当局者ならびに読者の方々のご意見をも期待しています。」と結んだ宮崎少年ですが、この後の読者投稿欄における魚雷艇議論は確認できませんでした。「このガキ、理屈ばかりコネやがって」とでも思われたのではないでしょうか。

三つ子の魂百まで、とはよく言ったものです。






確信を持って言えるけど、宮崎駿が現代で少年時代送っていたら、スゲー文句つけつつ艦これやってるぜ絶対……