2013年9月10日火曜日

平成25年度 事前の事業評価評価書を読む

平成25年度の防衛省、事前の事業評価の評価書が公開されました。事業評価とは省庁が行う政策事業について、各事業毎に事業前・中間段階・事業後の3段階で効果を評価し、事業にフィードバックすることで効率的で質の高い事業を目指す政策評価のことで、その結果は国民に公開されています。防衛省の場合、事前の事業評価で新たな装備品開発や技術研究が明らかにされるので、数年後に配備される新装備がどういったものかを知る事の出来る機会でもあります。

では、今年度に行われた事前の事業評価はどのような物があるのでしょうか。表にまとめてみました。


平成25年度 防衛省 事前の事業評価一覧

今年度は装備開発が1件、技術研究が10件の計11件で、前年度が装備開発6件、研究11件の計17件と開発ラッシュだったためか、大幅に少ないものとなりましたが、いくつか興味深いものをご紹介しましょう。



パワーアシスト技術の研究

パワーアシスト技術は分かりやすく言うと、SF映画などで登場するパワードスーツと同じ技術です。日本ではパワードスーツという言葉が知られていますが、英語ではPowered exoskeleton(強化外骨格)という言葉が一般的です。人間が装着することで、筋力を補助・増強する装置で、重量物の運搬や重機車両が入らない閉所での重作業等を行います。商業用でも力がいる介護用や、原発事故のような特殊災害での活動を想定した物が研究されていますが、軍用でも歩兵の能力向上・維持のために研究が行われています。

防衛省の研究するパワーアシスト技術イメージ(評価書より)


防衛省の公開した評価書とイメージ図を見ると、研究の焦点は民間のパワードスーツが使用できない不整地で行動し、隊員が携行する重量物を増大させることにあるようで、軍用パワードスーツの基礎的な研究と言えます。防衛省がこの研究に乗り出した背景としては、隊員が携行する装備品や電子機器は増えても、人間が長時間運搬することの出来る重量は変わらないという人間の限界から来る問題があります。携行品の小型化は進んではいるものの、人間が長時間携行するには重い物も多く、だったら人間の能力を上げようとパワーアシスト技術の研究が各国でも各国でも行われていますが、問題は稼働のためのバッテリーが短時間しか持たないことで、実用化には省電力化とバッテリー容量の増大が鍵となります。



高出力マイクロ波技術に関する研究

高出力マイクロ波技術の研究は、高出力のマイクロ波を照射する事で、敵のミサイルの電子回路等にダメージを与えて無力化する技術についての研究です。高出力マイクロ波の利用については、車の電子機器を破壊して停車させたり、暴徒に照射して強力な痛みを与えて鎮圧する非致死性兵器としての研究も海外では行われており、ミサイルの破壊以外にも応用性が高い研究になると考えられます。



水中無人航走体長期運用システム技術の研究

近年、無人航空機についてのニュースをよく見るようになりましたが、海中の無人機(UUV:Unmanned Underwater Vehicle)の研究も各国で盛んに行われています。本研究ではUUVを長時間稼働させるための、燃料電池をUUVに搭載する技術について研究されます。

防衛省が研究するUUVシステム(評価書より)

燃料電池は発電効率に優れ、家庭用や自動車用に研究が進められていますが、燃料の水素は爆発性の気体であると共に、どんなに密封しても原子半径が小さい為に容器をすり抜けてしまう特性のため貯蔵が難しく、燃料電池実用化の大きな壁になっています。UUVの稼働時間の増大は、作戦の柔軟性と省力化に繋がるので、良い成果を期待したいところです。