【9月25日 AFP】ケニアの首都ナイロビ(Nairobi)で起きたイスラム過激派による高級ショッピングモール襲撃事件で、「白い未亡人」と呼ばれる英国籍の女の 存在に注目が集まっている──。ケニアのアミナ・モハメド(Amina Mohamed)外相は23日、犯行グループにこの女が含まれていたことをメディアで示唆していた。
「白い未亡人」こと、サマンサ・ルスウェイトは、2005年のロンドン同時爆破事件の実行犯の1人であるジェーメイン・リンゼイの妻で、近年はケニアに潜伏し ていると見られていました。イギリスの北アイルランドに生まれたルスウェイトは、17歳でイスラム教に改宗しますが、そのきっかけが両親の離婚にあったとされます。その後、インターネットのイスラム教徒が集まるチャットルームでリンゼイと出会い、2002年に結婚します。しかし、2005年のロンドン同時 爆破事件で妊娠8ヶ月のルスウェイトを残し、リンゼイは自爆テロにより自身を含む27名を殺害に至ります。
2005年のロンドン同時爆破事件で注目すべき点は、事件が外国人ではなく、イギリス出身またはイギリス育ちの移民を中心にして引き起こされたことです。2006年にはパキスタン系英国人による航空機爆破テロ計画、2010年にもイギリス在住バングラディッシュ人による航空機爆破テロ計画が 発覚するなど、同様の事件が相次いでいます。
これら移民によるテロが頻発する背景としては、移民コミュニティへのテロリスト・ネットワークの浸透が挙げられます。アル・シャバーブは各 国のソマリア人コミュニティに対し、積極的にテロ要員のリクルート活動を行っており、ソマリアにあるアル・シャバーブの軍事訓練キャンプへの参加を促して います。こうして集められた外国人戦闘員は、アル・シャバーブに約200名いると推計され、そのうちの50名がイギリス人と考えられており、ルスウェイトもその1人か提携関係にあるテロ組織のメンバーと思われます。
今回のテロでルスウェイトが注目を集めているのは、「白い未亡人」という呼び名からも分かるように、移民ではない白人がイスラム過激派のテロに参加したという点です。前述の通り、これまでのイギリスでのイスラム過激派によるテロは移民によるものが大半でしたが、英連邦構成国のケニアで、生粋のイギリス人(北アイルランド出身ですが)がイスラム過激派のテロに参加した事は、イギリス当局にとり大きな衝撃であったと思われます。ソマリアの他にも、現在も続いているシリア内戦でも100名以上のイギリス人が戦闘に参加しており、イギリスのメイ内務相はこれらの戦闘員が戦闘技術・テロ技術を身に付けてイギリスに帰国した場合、「大量殺人」を企図するのではないかと警告しています。
人権上の問題はあるものの、これまで治安当局が特定の民族・国出身者に対して監視を行い、テロを未然に防いできたのは事実です。しかし、ル スウェイトのような自身の出自に依らないテロリストの出現は、テロリストの発見をより困難なものにすると同時に、宗教という個人の思想をターゲットにした 捜査の可否という難しい問題に直面することになります。イギリスを含む欧米の政府機関による個人情報の収集が告発されたばかりですが、思想の自由・個人情報の保護と未然のテロ防止をどうやって折り合いをつけていくか、日本も含む民主主義国家は今後難しい舵取りを迫られる事になるでしょう。
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