2008年11月28日金曜日

ランキング?



 世間話みたいなものでエントリするのに引っかかるものがあるとは言え、当分は記事も書けそうにないので軽い話を。


 


 youtubeをちらほら見ていると、どこの国の人間も考えることは同じなんだなと思うことしばし。


 例えば、こんなんとか。


The Top 10 Best Tank in the World 



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 香港出身のChineseKungFu01による世界の戦車ベスト10ランキング。最初はArmor誌のランキングでも引用したのかと思っていましたが、「火力、装甲、機動力に基づいている」と冒頭にありますので、ChineseKungFu01の独断のようです。ランキング結果は見て頂ければ判りますし、個人が思うことは勝手ですのでここでは割愛させて頂きますが、配備も始まっていないK2をランクに据えるのはどうよ、という気も少し。


 さて、国の陸軍の象徴的装備をランキングされているわけですから、コメント欄には世界各国からの書込みがあるのは必然でしょう。再生数70万に対して5000件近いコメントが寄せられていますが、これがまた面白い。


 M1A2がレオパルド2A6・チャレンジャー2より低い評価がされていることにアメリカ人が「アメリカは真剣に新戦車を必要としている。独英より下? ファック!」と書きこむと、「いつからドイツとイギリスはアメリカの敵になったんだ。NATOの一員だろ」とスロバキア人から突っ込まれていたりと、なんかどこかで見たことあるような感じで面白いのです。


 あと、中国人が韓国戦車を貶していて、そのコメントが高評価だったりするのはお約束。





Leopard 2a6 demonstration



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 レオパルド2A6のデモンストレーションです。


 横から見て、「うわ、バランス悪ぅ!」と言ってはいけない。


 相次ぐ改良により、未だ第一線に留まっている戦車ではありますが、走行中から急制動をかけますと、停止時にかなりたゆんたゆんと動揺(特に1分49秒あたり)していることが見てとれます。ブレーキかけても、舗装路面の上で数メートル滑って勢いが削がれていてもです。


 比較として、90式戦車の機動を見てみましょう。





平成20年度 富士総合火力演習 90式戦車



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 不整地でブレーキ後、すぐに車体も停止したにも関わらず、かなり早いペースで動揺が収まっているように見えます。


 こうして比較すると、いくら火器や電装を換装したとしても、足回りやフレームの性能の差というものは埋めにくいものではないかと思われます。





ネタ


Leopard 2A6 vs. Nissan Micra



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 なんという日本車叩き……。90年代前半のアメリカ人の比じゃない……


 と思いきや、


Leopard 2A6 v.s. Volkswagen Golf



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 あら。





2008年11月22日土曜日

エンコテストを兼ねて2



92式地雷原処理車 発射・爆破シーン



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 今年の総合火力演習の映像ですが、既に同様の映像をニコニコにアップしていた方がいたので上げていなかったのですが、編集ソフト新調したのでテストを兼ねて試しにアップしました。





防衛省技術研究本部発表会 写真だけ



 各種の金属板に対し、同一のHEATを撃ち込んだ場合の侵徹状況の比較です。写真があんま良いのが無かったうえ、説明も聞けなかったので写真だけ……。


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 字が見えにくいと思いますが、左から軟鋼、チタン合金、アルミ合金(引張り強度98Mpa)、アルミ合金(539Mpa)、アルミ合金(294Mpa(注:ピントボケてて読みにくく、間違っている可能性あります)となっています。軟鋼意外と頑張ってますけど、比重考えるとやっぱりアルミ合金に分がありますよね。


 ちなみに、下が撃ち込んだHEATです。


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2008年11月19日水曜日

将来装輪戦闘車両に独MTU製エンジン?



 ろくに調べてもおりませんが、ちょうど写真が明らかになった将来装輪の話になっていたので。


 本日の日経新聞朝刊に、ディーゼルエンジン大手の独MTUが日本法人を設立するとの見出しがあり、最初は船舶用ディーゼルでも売り込むのかと思っていたら、とんでもない一節が。





 「また陸上自衛隊が海外製品としては初めて同社製品を試作中の装輪装甲車に採用。」





 これ、試作車両に比較評価として積んだだけのか、本採用になったか、はたまた恒例の日経飛ばし記事なのか、判断つかないところです。それともエンジン以外の部品か……。


 でも、自衛隊の装甲車両用エンジンは、シリンダのボアが規格化されており、整備・補給の能率化を行っていたはずなのですが、なんでそれなりの配備数が期待される車両に海外製品を……。


 ちょっと解せないところが多い記事です。





追記) 元記事はネットでは流れてしまっているようなので、関連記事だけでも。


関連記事


独ディーゼルエンジン大手、MTUが日本法人 丸紅と共同 


http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20081118AT1D1706217112008.html


更に追記)


 慌てて書いたので、タイトル間違えていました。訂正します。





2008年11月18日火曜日

防衛省技術研究本部発表会 展示セッション簡易レポ(将来統合無線機)



 将来統合無線機の研究についてのセッションです。


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 この研究は平成15年度の事前の事業評価 政策評価書によりますと、


「本事業は、様々な通信諸元の無線機の互換をソフトウェアの入れ替え等により実現でき、ネットワーク機能、秘匿機能及び対妨害性機能という無線通信上必要不可欠な機能を組み込んだ無線機を試作することにより、将来の統合無線機の構成要素に係る技術の確立を目的とするものである。」


 とのことでして、目立たない装備でありながら、極めて重要な研究である言えます。


 事前評価書に目的・効果等は詳細に書かれておりますので、ここでは実際に伺ったことを要約してみましょう。例によって、うろ覚えですので注意してください。


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質問:「この無線機は昨年も出展されていましたが、同じものなのですか?」


回答:「同じものになります」


質問:「昨年は、現有の無線機と互換性のある形状で現有の無線機との換装は容易と伺っております」


回答:「はい、取付金具等の位置は同じです。車両の他にも、航空機等も現有のものと互換性のある形状になっています。」


質問:「現有の無線機と防災無線機を中継することも可能とのことですが?」


回答:「ソフトウェアにより複数の周波数・変調方式にも対応でき、自治体の防災用無線機との交信も可能となっております。2chに対応しておりまして、両者を中継して通信させることもできます。」


質問:「映像の伝送も可能とのことですが?」


回答:「VHFユニットで送信し、右のモニタに表示させることができます。」


質問:「帯域はどのくらいでしょうか? また、圧縮方法はなんですか?」


回答:「192kbpsになります。圧縮はWindows Mediaです」


 以上が主な質問とその回答です。今思えば、ネットワーク機能についてもう少し聞いてみるべきでした。VHFですと、映像伝送もそう長距離ではないでしょうから、中継機能もあるでしょうしね。ホッピング機能や秘匿化も……。





2008年11月16日日曜日

武器学校・土浦駐屯地開設記念行事



 11月15日に行われた陸上自衛隊の武器学校・土浦駐屯地開設記念行事に行って来ました。


 会場着が遅かったので、観るのにあまり良い場所ではなかったのですが、訓練展示も行われ、なかなか楽しめました。


観閲式の様子


隊員整列中


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84ミリ無反動砲カールグスタフ。 後ろの車両にはパンツァーファウスト3も。


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12.7ミリ機関銃を搭載した73式中型トラック。アイディード派民兵のテクニカルではない。


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観閲する武器学校校長


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 さて、訓練展示の様子ですが、訓練展示の中で砲身を損傷した74式戦車の砲身を交換するという想定があり、実戦では後方に下げて交換するものなのですが、戦闘と並行して砲身交換を行っていました。資料的価値が高いと考え、戦闘そっちのけで74式の砲身交換の様子を撮影しましたのでご覧ください。長い上、途中から躍進・射撃による攻撃が始まったりしますが……。






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 砲身を取り外してから再度取り付け、戦闘に復帰して実際に射撃を行う等興味深いです。交換に要した時間は6分程度でしょうか。海外の同世代戦車の様子は見たことが無いので分かりませんが、地上の隊員が足場も使わずに砲身押えていたりと、車高が低い74式は交換が比較的楽なのかもしれません。





武器学校・土浦駐屯地開設記念行事 89式中戦車



取り急ぎ、映像まで。



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 あと、資料館が写真撮影OKでしたので、てき弾銃の写真が撮れました。


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 って、ライフリングが16条もあったのか! 安定させるためになんだろうか……。


 もっとも、去年見た時は口径が間違って書いてあったりしたんですよね、これ。





2008年11月14日金曜日

防衛省技術研究本部発表会 展示セッション簡易レポ(軽量装着型付加装甲)



 当日のレポでも触れましたが、ここで改めて軽量装着型付加装甲について書いてみたいと思います。


 まず、展示されていた装甲は3つあります。


外面取付型(空間型)付加装甲


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 チタン合金等の硬度の高い金属でできており、使用する金属にもよりますが、展示されている3つの中では安価なものだそうです。付加装甲で弾体の勢いを削ぎ、主装甲で受け止めるといった感じが展示品からは見てとれました。





外面取付型(密閉型)付加装甲


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 一般的にセラミックスは硬度は高いものの、非常に脆い特性を持っております。これを装甲として使用する場合には、強度のある金属で密閉する必要があります(90式戦車の複合装甲もチタン合金の箱にセラミックスを封入したものと言われていますね)。この装甲も内部にセラミックスを封入しており、中に入れるものはコスト重視ならアルミナを入れ、より防御の水準を上げようとするなら別のものを入れるそうです。基本的に、一回弾が当たって穴が開くと密閉の効果が無くなってしまうので、小さなタイル状の付加装甲を複数枚、ボルト留めして使うそうです。





内面取付型付加装甲


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 車両や艦艇の内側で内張りとして使用する付加装甲です。FRP(繊維強化プラスチック)の多層構造になっており、触ると思った以上に固かったです。これを用いることで、小銃弾防護の車両でも20mm弾の攻撃を受けても人命が助かるようにするといったことができるそうです(数字はあくまでも例えとのこと)。


 写真では分かりづらいと思いますが、中央部が若干盛り上がっています。では、下の写真を見てみましょう。


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 装甲を貫通した弾を内面取付型付加装甲が受け止めていた訳です。弾体が装甲を貫通しない場合でも、装甲背面の剥離により破片が内部に散ることもありますので、こういったものへの防護にも有効と思われます。


 これらの付加装甲を対象とする驚異、車両の脆弱性解析等から最適な設置箇所を割り出し、単体若しくは組み合わせて装着するそうです。





 以下はこれらの装甲について、質問したことの要約です。うろ覚えもあるので鵜呑みは危険とあらかじめ断っておきます。


質問:「装着型装甲と言いますと陸上装備と思ってましたが、艦艇にも応用できるとパネルにあるのは何故ですか?」


回答:「元々、護衛艦に防弾の概念はありませんでしたが、近年は工作船対策の必要性が出てきたため、こういったものの研究も行われています。航空機はかなり制約があるのですが、艦艇は余裕がありますので装甲を付与する余地があるのです。実際は機関や人命等を守るために重点的に装着が行われると思います。」


質問:「こういったものの研究が行われていることは聞いたことがあるのですが、陸幕からの装備化要求がないというのは本当でしょうか?」


回答:「装備化要求はありません。現在は耐弾よりもIED対策に重点が置かれており、そちらの研究も行われております。」


あんまり関係ない質問:「このパネルの装輪装甲車両は96式ではないようですが、なんなのですか?」


回答:「あくまでイメージです。」


 以上が主な質問とその回答です。私の稚拙な質問にも丁寧に答えて頂きまして、誠にありがとうございました。





防衛省技術研究本部発表会 展示セッション簡易レポ(壁透過レーダー)



 遮蔽物を透過して、向こう側の人間等を把握する壁透過レーダーの展示です。


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 アングルが悪いので全体像が掴みにくいですがご容赦ください。


 これは屋内や船内等の環境で使用を目的としており、背面のモニタに目標が表示されるそうです。現在は研究中ですのでUSB等の出力端子が付いて大柄ですが、将来的には腕に装着して携行させるようにしたいとのことです。


 「運用構想図で装置を壁に押し付けているのはなんでですか?」と質問したところ、動体を検出する為、装置自体が動いていると精度に問題が出るからであり、壁に押し付けて固定するか、写真の様に三脚を使用するのが望ましいからとのことでした。





防衛省技術研究本部発表会 展示セッション簡易レポ(トリマラン船型水槽試験用模型)



 艦艇装備研究所のトリマラン(三胴)船型水槽試験用模型です。


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 この研究は米海軍のLCS(沿岸域戦闘艦)を意識しているそうで、沿岸域を高速で航行することを目的とした研究だそうです。船体を細長くすることで抵抗を減らしますが、それによる復元力の減少を三胴により解決するそうです。


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 副次的な効果として、幅広いデッキエリアも確保でき、ヘリコプターの運用も可能になるとのこと。


 「LCSを意識しているということは、海自の次のDEはこういった形になるのでしょうか?」と質問したところ、それはまだ先の話じゃないかとのことでした。残念。





防衛省技術研究本部発表会 展示セッション簡易レポ(手投げ型情報収集ロボット)



 一度にやるとかなりの量になりますので、できた分だけレポをアップしていきたいと思います。


 まずは、テレビでも放映されたらしい手投げ型情報収集ロボットについて。


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 まず、このロボットについて聞いたことを箇条書きで。


・屋内偵察を想定。


・二輪駆動。


・開発の前の前といった段階。特に専用に開発したものは使っていない。


・稼働時間1時間は欲しいが、現状は30分持たない。


・装備化するとしたら、個人で携行できるサイズで。窓に投げ入れて使うことを考えている。


・よって、形状は球形。


といったお話でした。


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2008年11月12日水曜日

展示セッション 「軽量装着型付加装甲」



軽量装着型付加装甲について。


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現有の車両・艦艇に対して、驚異に応じて脆弱性解析により最適位置にそれぞれの付加装甲を装着。


付加装甲は大別して3種。


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外面取付型(空間型)付加装甲


チタン等の硬度のある金属によるもの。 








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外面取付型(密閉型)付加装甲


脆いセラミックスを封入した装甲。


コスト重視ならアルミナ等、特殊なものだったりしたら別のものを入れるそうです。








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内面取付型付加装甲。


車両・艦艇等の内張りとして使用。


ちなみに、下の写真はひっくり返した場合の写真。装甲を貫通しても、内張で止めています。


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これらの付加装甲は研究はしているものの、陸幕からの装備化要求は無いそうです。


弾丸や破片に対するものよりも、現在はIED対策の方に重点が置かれているからだそうです。





現場で聞いたこと(聞いた分だけ)



・TK-Xのスプロケット(出力)は90式と同じ。90式より軽量化されているので、機動性は増している。


・車両コンセプトシミュレータが開発中の段階なのに、TK-Xの開発に利用できたのは、車両コンセプトシミュレータ(その1)(その2)と、各コンポーネントのシミュレータずつ開発していたため。開発できたシミュレータから順次利用していったらしい。


・90式は発進時に結構黒い煙が出るが、TK-Xは出ない。


・最近は4サイクルでも小さいエンジンができるようになった。2サイクルと比べて熱負荷が小さくなったので、信頼性も上がる。


・エンジン自体から放出されるIRも小さくなっている。





展示セッション 「トリマラン船型」



トリマラン(三胴)船型の水槽試験用の模型。


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 伺ったところ、この船型は米海軍のLSCの様に沿岸を高速で移動して現地に駆け付けるよう、高速性を目的にしているとのことです。





平成20年 防衛省技術研究本部研究発表会 展示セッション 「車両コンセプトシミュレータ」にて



 質問にもご丁寧に答えて頂き、大変勉強になりました。


 取り急ぎ、写真まで。 


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 右上は写真としては多分初公開になると思う、将来装輪戦闘車両の振動試験の様子。左下も写真初公開かも。





平成20年 防衛省技術研究本部研究発表会 特別セッション「新戦車」要旨



取り急ぎ、ノートに書いた要旨を挙げてみます。


覚書でもありますので、判りにくいですがご容赦ください。





概要


概要は基本的には今年2月のプレスリリースと同様なので、気になったとこだけを箇条書きで。


・トランスミッションの性能向上。90式の半分の旋回半径。


・90式は基幹連隊指揮統制システムへ組み込まれるが、TK-Xは更に戦車相互の情報共有が可能。自己位置評定のみではない。


・技術の進歩に合わせ、装甲のモジュール交換可能。被弾後の交換も可。


・全備重量44トン。(一部報道にあった全備重量48トン説はやっぱガセなのか?)


・比較としてM1A2のモニタも表示。ほぼ同様のものらしい。





シミュレーション技術の活用


・ハードウェア・イン・ザ・ループ・シミュレーション(HILS)


  →数学モデルのシミュレーションを実際のハードウェアに置き換えて、シミュレーション結果を反映しつつ、コンポーネントを組み上げていく。


・現有(90式戦車)のモデルを作成、及び修正。HILSによる試験データの反映を繰り返す。


(例)モデル2(90式ベース) → 砲部 → モデル3 → 車体 → モデル4 → 車体システム と言った具合で、結果を反映させつつシミュレートして組み立てていく。


・車体、動力等の各試験装置は別棟にあり、それらを光ファイバーで結び、一つの車両システムとしてシミュレートして試験を行う。


・人間、ハードウェアを含んだ形のシミュレーション。


・不整地(上富良野、北海道大演習場等)がモデル化されており、仮想環境上で試験できる。


・逐次、試作品を仮想的に組み立てられる。


・新戦車以降の戦闘車両の開発にも応用(装輪戦闘車はまず96式のモデル化から始めているらしい)





技術試験


・戦闘車両システム研究室が主体となり、弾道技術研究部と機動技術研究部の協力を得るなど、技術研究本部の総力を挙げて行っている。


・総務課らが膨大な事務処理を行ってくれたことへの謝意。


・陸戦の王者戦車の3要素、火力・機動力・防護力に情報力を加えた試験を実施。


・火力試験:下北試験場、陸自演習場、民間企業の施設(神岡の洞窟内にある)で実施。


・機動力:陸上装備研究所、札幌試験場、陸自演習場で実施。


     防衛省規格に定める試験方法にて実施。


     俊敏性を重視した試験を行う。90式以上のとんでもない制動を行っている様子の写真表示。


・防護力:下北試験場、陸自演習場、民間施設で実施。


     モジュール装甲についても試験。


・C4I2:指揮・統制・通信・コンピュータ・情報・相互運用性について試験。


    陸上装備研究所、札幌試験場、陸自演習場にて実施。


    HILSを活用した試験も。


・現在:小隊4両編成による総合試験を実施。





平成20年 防衛省技術研究本部研究発表会



 本日のNHKとフジで流されると思うので、そこよりも早く陸上装備研究所の手投げ型情報収集ロボットのデモ映像をアップしました。



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 取り急ぎ、映像と写真まで。





2008年11月9日日曜日

TK-Xへと至る道:駆動装置編



 


エンジン


 一般的に、戦車の開発にあたって最も先行して研究が行われるものはエンジンだと言われています。事実、74式戦車に搭載されることになるエンジンは、61式戦車の開発中の昭和31年から研究が行われておりますし、TK-Xの4サイクルディーゼルも昭和59年度には単気筒エンジンとして研究試作が行われております。いったん整理するためにエンジン関連の研究について、下にまとめてみましょう。


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 ディーゼルエンジンの研究が非常に長い期間行われていますが、様々な車両に適用できる基礎技術ですので当然のことと言えます。他にも先ほど触れた単気筒エンジン研究試作の延長上に多気筒エンジン研究試作があり、更にディーゼルエンジンの小型・高出力・低燃費化を目的としたセラミックエンジンの研究も行われております。セラミックエンジンとは、エンジンのシリンダー周りをセラミックで遮熱することで放熱量を抑え、冷却装置の小型化と言った利点があります。実際に研究ではエンジンの軸出力あたりの放熱量を半分以下に抑えることに成功しており、空燃比も現有と比べ3割低減しております。これにより冷却系が小型化していることが、エンジン図からも伺えます。


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 しかしながら、セラミックスは極めて脆いことや、遮熱に伴うエンジンの高熱化による制御の困難等の問題があります。『新戦車に関する外部評価委員会の概要』でも、外部の有識者よりそれらの点に質問がなされており、今後も総合的検討が必要とされています。





変速操向機・懸架装置


 変速操向機・懸架装置の2要素は、TK-Xを語る上で避けては通れない装軌実験車(MRV)で同時に研究も行われています。


 装軌実験車(MRV)とは、昭和62年度から平成元年にかけて製作され、平成4年度まで試験が行われた実験車両のことです。MRVはシミュレーションに用いる研究開発データベースを設計パラメータと機動性能の関係を明らかにすることで確立するために製作されており、各パラメータはかなりの範囲で任意に変更可能となっております。その為、機動性能に関連する以下の13のパラメータが変更できます。


1.出力・重量比


2.設地圧


3.設地長・軌間距離比


4.重心位置


5.機関方式


6.スプロケット歯車数


7.履帯構造


8.グローサ形状


9.操縦制御方式


10.懸架ばね力


11.懸架減衰力


12.懸架ストローク


13.ばね下重量


 また、様々な新機軸―アクティブサスペンション・ターボコンパウンドエンジン・ガスタービンエンジン、電気式操縦装置等―を導入していることからも、データベース確立のためだけではなく、新技術の研究車両としての意味も持ち合わせています。ここで、MRVをTK-X,90式戦車と比較してみましょう。





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 比較してみますと、MRVで行われた研究がTK-Xにフィードバックされていることが伺えます。その他の点でも似ている点が見受けられ、MRVが製作された80年代の段階で、TK-Xの将来図は固まりつつあったのかもしれません。それを裏付けるかのように、1987年当時の三菱重工業相模原製作所(現・三菱重工業汎用機・特車事業本部)の松田敬所長は「われわれは、もう新戦車(筆者注:90式戦車のこと)の次の世代、二〇〇〇年代の戦車(のデザイン)も始めているんですよ」とインタビューで語っています。








 さて、ここで話を変速操向機・懸架装置に戻しましょう。TK-Xの変速操向機は以前も触れた通り、静油圧機械式無段階自動変速操向機(HMT)となっております。これは従来、操向装置にしか用いられなかった油圧ポンプ・モータを変速装置にも使用することで、変速装置の無段階化するものです。これにより効率的な伝達(ただし、HMTの変換効率は85%が限度と言われ、実際に『新戦車に関する外部評価委員会の概要』の図の中でも、速度と軸出力が高い領域では有段変速に分があるとしています)により、高い加速力を発揮するとともに、高い軸出力を維持しています。これを実現する鍵が小型・軽量・高出力の油圧ポンプ・モータであり、MRV用に試作された後の平成3年度には無段階自動変速機用の1500PS級油圧装置が試作され、その後の試験で良好な結果を得ました。


 また、TK-Xの懸架装置であるアクティブサスペンションは、MRVで試験が行われ、良好な結果を得たとはありますが、資料が少なく判らない点が多いです。試験を収録した映像を見た人の話では「足回りは、野越え山越えしているのに上体はまったくぶれないのだ」(防衛技術ジャーナル2008年8月号)だそうで、それはTK-Xのそれと変らないものと言われています。


 MRVの研究開発では、これらの新機軸に加え、先ほど述べたデータベースの確立も成功裏に終わったと想像され、車両コンセプトシミュレータの開発に繋がることで、TK-X他、様々な戦闘車両の開発に貢献しているものと思われます。


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 これまでに見てきたことからも明らかなように、装備の開発は官民双方が、次の次を見越して取り組むことが重要となっております。現在進められている研究をじっくりと見てみると、そこから数十年先の装備が見えてくるではないでしょうか。





参考文献


防衛技術ジャーナル編集部編『陸上防衛技術のすべて』(財)防衛技術協会


松下義宣,秋山満,城間晴輝,井上福保,志村明彦,長友尚博 『装軌実験車の研究試作』防衛庁技術研究本部技報 平成2年7月


国防編集部 『わが国の防衛装備―その技術と業界の動向4』朝雲新聞社 1987年1月


守本佳郎『無段変速機CVT入門』グランプリ出版


葛城奈海『葛城奈海の体験ルポ! 第10回“陸上装備研究所を訪ねて”』防衛技術ジャーナル 2008年8月号


防衛省 平成14年度事後の事業評価 『戦闘車両用セラミックエンジンの研究


防衛省技術研究本部 『新戦車に関する外部評価委員会の概要