2013年7月2日火曜日

10式戦車のタッチパネルは何方式なんだろうね、というおはなし

iPhoneの登場以降、すっかり携帯電話はタッチパネル式が主流になってしまいました。日本で発売になってから、まだ5年も経ってないのに凄い変化です。

携帯がタッチパネルになってからというもの、 情報取得の効率が飛躍的に高まったと体感している方も多いのではないでしょうか。大画面で直感的な操作が行えるタッチパネルは、大量の視覚情報を処理するのに向いたインターフェースなのです。

軍事の世界では、iPhoneの普及よりもずっと早くからタッチパネルが普及していました。高機能化・複雑化する兵器に対して、物理的なスイッチの煩雑さを回避し、操作や情報取得をシンプルにするための手段として、タッチパネルが採用されました。

アナログ計器・物理スイッチが多いF-15コックピット(Wikipediaより

タッチパネルに多くの機能が統合されたF-35のコックピット(Wikipediaより


特に航空機は、表示計器の液晶ディスプレイ化、グラスコックピット化が進んでおり、最新戦闘機のF-35でもタッチパネルが重要な操作インターフェースになっています。




陸上においても、最新の10式戦車では情報の迅速な伝達、共有のためにタッチパネルが使われており、車長、砲手用モニタ等がそれにあたります。電子地図で場所、進路を示したり、射撃目標を指示することがタッチパネルで可能です。

ところで、10式で採用されたタッチパネル操作は、当然のことながらいきなり採用されたものではなく、10式の開発が始まる前からの研究で実証済みの技術でした。

10式戦車の開発がスタートするのは2002年ですが、その前の1998年から2000年にかけて、将来車両装置の研究試作が行われており、そこでタッチパネルを利用した戦車の操作の実証試験が行われていました。


将来車両装置(2010年度防衛省技術研究本部パンフレットより)


将来車両装置の研究では、将来戦闘車両評価用テストベッド(ややこしいですが、「将来車両装置」とは別の研究です)での研究成果を踏まえ、将来の戦闘車両開発のための技術資料を得るための実証と評価が行われました。

具体的には、遠隔操作式の視察照準装置、動力装置についての実証評価が行われ、視察照準装置の一部としてタッチパネルが採用されております。
ここでタッチパネルが採用された理由としては、画面上の点を確実に指示できるインターフェースであることが、視察照準に重要なポイントだった事が挙げられます。

ところで、現在のスマートフォンで利用されているタッチパネルは、静電容量式が主流です。少し前は指の圧力を感知する感圧式のスマートフォンもありましたが、今は静電容量式が多くを占めます。
静電容量式は、軽く触れるだけで動き、分解能も高いので細やかな操作が出来るのが特徴です。
では、戦車に使われるタッチパネルはどのようなものが使われているのでしょうか。


将来車両装置の研究では、下表のように赤外線、超音波、静電容量、抵抗膜の4種類のタッチパネル方式が検討されました。

タッチパネル比較
ここで重視されたのは、耐環境性、傷による誤検知の有無と、手袋着用時の使用についてで、比較の結果、 赤外線方式が採用されることになりました。

赤外線方式は、赤外線のビームが画面前方に出ており、それを指が遮る事で、画面上のどこにタッチしたかを検出するものです。
表示画面そのものに細工をするものではないので、耐環境性や耐久性に優れます。また、分解能は4方式中最も低いものの、どうせ乗員は手袋をして操作しているので、分解能が高くてもあまり意味は無いでしょう。
乗員は外に出ることも多いので、手袋の汚れも十分に考えられるため、誤作動の心配が無い赤外線方式になったのは当然でしょう。

では、今現在の10式のタッチパネルは、何を使っているんでしょうか。

上の比較が作成されたのは10年以上前ですので、今現在は事情が少々異なります。
スマートフォンで主流の静電容量式は、タッチ面がガラスになり、透過性、耐久性も優れたものが登場しました。しかし、それでも手袋使用時の操作が困難なのがネックとなります。(ごく最近、静電容量式でも普通の手袋で操作OKなのが出たそうですが)

将来車両で採用された赤外線方式も進歩し、当時は横軸・縦軸に赤外線ビームを発振する素子がズラリと並んでいたものが、今現在は画面上部左右に赤外線発振機を2個設置するだけで、指が触れた点を三角測量して位置を割り出す方式が開発されています。

ここでは、手袋での使用を考慮して、10式戦車のタッチパネルも、赤外線方式が採用されていると考えるのが妥当な気がします。

戦車乗員員の手袋の指先を導電性の素材に変えれば、静電容量式でも手袋を嵌めたままで操作はできるでしょう。しかし、整備で電機機械を扱う作業もする乗員の手袋に、導電性のある素材を指先に使うとは少々考えにくく、 従来通りの手袋だと考えられます。


もし、10式のタッチパネルの方式を確認したいのでしたら、駐屯地祭などで説明している乗員の手袋をそれとなく確認してみるのも手だと思います。指先だけ別素材が使われていたら、静電容量式の可能性もあるのかもしれません。

スマフォ使いの隊員の私物である可能性も捨てきれないけど。