2013年4月20日土曜日

IED(即席爆発装置)のお話(前編)

ボストンでの爆弾事件、なんだかややこしい展開を迎えていますね。
なんだか圧力鍋製の爆弾が使われてたようですが、この手のハンドメイド爆弾によるテロというのは、イラク戦争以後の戦争においても大きな問題となっており、即席爆発装置(IED:Improvised Explosive Device)と呼ばれ、かなりの問題になっております。
今回はこのIEDについて、概要から近代の戦争における意味までを考えてみたいと思います。



最も人を殺傷した兵器って何?

さて、 戦争で最も人を殺傷した兵器ってなんでしょうか? 敵をなぎ払う機関銃? 敵を蹂躙する戦車? なにもかも吹っ飛ばす航空機の爆弾? 
少なくとも、20世紀の戦争では火砲(大砲)による死傷者が圧倒的でした。例として、米軍の原因別戦死傷者の割合について見てみましょう。


米軍の原因別戦死傷者の推移を見ると、19世紀の南北戦争はほとんど小火器による死傷であったのに対し、1次対戦から朝鮮戦争にかけては7割近くが火砲による死傷でした。以前、ジェレミー・ブラック英エクスター大学教授の講演の中で(リンク:私による講演要旨ツイートまとめ)、「大砲は最も過小評価されている兵器」という言葉がありましたが、現実の数字はそれを裏付けています。戦車も航空機も、それ自身の戦果ではなく、他の兵科に機会を与える役目が大きかったのです。

ところが、20世紀でもベトナム戦争になると事情が変わってきます。小火器と地雷による死傷者が9割以上を占めるようになって来ました。 ベトナム戦争では、大規模な戦闘が少なかった反面、ジャングルでの小規模な銃撃戦が散発すると同時に、米軍の侵攻路への地雷の埋設による被害が大きかったのです。




実は有効な対策がある地雷

ベトナム戦争で大きな猛威を振るった地雷ですが、実は地雷に対する確実な対策がありまして、道路を舗装してしまえば、輸送路の地雷の脅威は一気に減少してしまいます。

ベトナムでインフラ工事を行う韓国軍模型

 上の写真は韓国の戦争記念館の展示模型なんですが、ベトナム戦争に参戦していた韓国軍が、現地住民の宣撫を兼ねて実施していたインフラ工事の様子です。道路の舗装化は、輸送効率の向上や現地住民の支持獲得といった面でも効果がありますが、地雷予防に対しても大変有用という、実に費用対効果に優れた事業です。自衛隊でもPKOなどで海外に行くと、だいたい道路工事事業が多いのもこういう理由かもしれません。



IEDの登場


ところが21世紀になってから、地雷や小火器に代わり、多くの死傷者数を出すことになる兵器が登場しました。それがIEDです。IEDは手っ取り早くWikipedia英語版で確認してみると、2003年から2011年におけるイラクでの有志連合軍の死者の64%がIEDによるものです。Wikipedia英語版におけるIEDの項目の充実から見ても、いかにIEDが米英で脅威と見られているかが分かります。

では、IEDってなんでしょうか。 一般的な意味では”即席”という名前が示す通り、ハンドメイドの簡単な爆弾、といった所が妥当だと思います。

防衛省技術研究本部製作のIEDレプリカ

上の写真は防衛省技術研究本部が展示用に作成したIEDレプリカですが、砲弾に簡単な電子基板と無線機又は携帯電話を取り付け、遠隔操作で起爆させます。イラクでは、旧イラク軍の武器弾薬が散逸したため、砲弾から製作したIEDがよく見られますが、手製の爆薬もあったりとその種類は様々です。




IEDの猛威については、YouTubeで検索すると大量に出てきます。通常、路肩に仕掛けられたIEDが、目標の車両が通ると、遠隔・または自律的に作動して爆発し、車両や人員を殺傷します。地雷と異なり、路肩や道路上に置かれるために舗装の意味がありません。対人地雷とは比較にならないほど爆発の威力が強いので、少々道路から離れておいても効果があり、うまく偽装すれば車上からは見つけにくいという点も特徴です。

また、路肩に置くIEDの他にも、自動車自体に爆薬をしかけた自動車爆弾型のIED(VBIED)もあり、遠隔操作による爆破から、自爆要員に運転させての自爆攻撃など様々な形態がありますが、共通しているのは普通の自動車なのか爆弾なのか、非常に判別が難しいという点にあると思います。

(後編に続く)

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