2013年4月16日火曜日

撮り鉄騒動から趣味人のマナー共有について考える

鉄道ファンと軍事オタ

周回遅れの話題もいいとこですが、撮り鉄のマナー問題、相変わらず続いてますね。





自分も自衛隊写真を撮っている身なので、こういったマナーは他人事ではないのですが、自分が経験した自衛隊イベントでの集団罵声は、雨の日の総合火力演習で前方が傘を差していた時くらいのものでした。これは純然たる座席有りのショーみたいなものですので、明らかにショーの邪魔となるマナー違反に対する罵声はまあ分かるのです(異論は認める)。傘閉じたらすぐ収まったし。

もっとも、自分は軍事オタク寄りの人間なので、軍オタに甘い事を言っているのかもしれない。ただ、過去に明らかに撮影に邪魔が入っても、現場に居合わせた軍オタは黙っていた例に出くわしているし、その様子を捉えた映像もあるのだ。



上の動画の45秒付近から、撮影に割り込んでくるオバチャン(軍オタではないだろう)が出てくるのだが、このオバチャンに邪魔された自分含む10名近くの軍オタは、不満を押し殺して黙って撮影している様子が映っている。これをもって軍オタはマナーが良いと主張するつもりはないが、それでもやっぱり撮影趣味者の中でも、撮り鉄のマナーの悪さは際立っていると思う。

しかし、趣味者界隈全般から見れば、ミリタリーと鉄道はかなり親和性が高いというか、似ているジャンルだろう。趣味界隈の書籍に強い書泉グランデにおいて、ミリタリーと鉄道本コーナーは長い間6階に集約されていた(最近、6階は鉄道のみになり、ミリタリーは5階に配置換えになったが……)。また、多くの書籍チェーン店でも、だいたいミリタリーと鉄道コーナーは隣か近い場所にあるのが普通だ。ミリタリーも鉄道も、写真撮影者が多いことでも共通している。そんな似た者同士であるはずの軍オタと鉄道ファンで、どうしてこんなに違うんだろうか。

 ここで、ジャンルごとのオタクの気質とかそういったものでなくて、客観的・数値的なデータから、趣味人のマナーや組織について考えていこう。

(補足だけど、Wikipediaを見ると、どうも「鉄オタ」という呼び方は「卑称・蔑称のうち最も卑下・軽蔑の意図がこもった呼称」らしいので、鉄道ファンとここでは書く。軍オタは自称でもさらりと使うのに)


趣味界の巨人。鉄道

カメラ撮影を含む趣味ジャンルの中で、最大勢力はどこだろうか。趣味コミュニティの規模を探るため、手っ取り早くmixiのコミュニティ数を検索してみた。
その結果がこの通り。






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軍事鉄道飛行機
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mixi内関連コミュニティ数571274209


なにこれ怖い。

「鉄道」だけでは「銀河鉄道999」等のノイズが多いので、参考に「飛行機」を入れたんですが、文字通り桁違いの多さを誇ります。「自動車」は1666ありますが、半ば生活必需品であることを考えると、「鉄道」の多さが飛び抜けています。そして、Wikipediaの「鉄道雑誌の一覧」見ると、日本のみならず、21カ国の鉄道雑誌と更に国際誌がリストアップされていて圧巻ですよ。Wikipediaの「軍事関連の雑誌」カテゴリーは寂しい限りなのに!
前述の書泉グランデの6階は、鉄道ジャンル専用階になってますし、趣味界における鉄道ファンの多さを物語ります。

でも一つ気になることが。 こんなに大所帯なのに、この人達組織化されてないのん?



組織化されていない趣味

鉄道ファンがたくさんいる事分かったけど、この人達のコミュニティはどうなってんでしょう。先に挙げたmixiのコミュニティにしても、あまりに細分化されていて、統一的コミュニティが存在しているとも思えない。2chの趣味カテゴリ板では、鉄道総合、鉄道路線・車両、鉄道懐かし、鉄道(海外)、鉄道模型と鉄道関連だけで5つも掲示板が開設されており、趣味カテゴリー最大の勢力だが、同時に分裂しているとも言える。
鉄道関連の趣味団体には、1953年創設の鉄道友の会があるが、会員数は3300人ほどしかいない。鉄道ファン人口を考えると実に寂しい。
逆に目につくのが、高校・大学の鉄道サークルの多さだ。 ほとんどの高校・大学に鉄道研究会はあるし、ここが恐らくは多くの鉄道ファンが育っていくコミュニティだと思うんだけど、学内サークルは内輪の小規模団体でしかない。サークル内でのマナーやしきたりについての文化継承も、サークルにより大きく違ってくるだろう。この辺に問題の根がある気がしてならんのです。

ところで、カメラ撮影で鉄道に匹敵するか、それ以上の規模を持っている趣味ジャンルがあります。そのジャンルは、人の生活圏でもパチパチ写真を撮り、しかも決まった所にしかいない鉄道ファンと違い、何時どこに現れるのか分からない神出鬼没でありながら、悪質な問題行為の話は聞きません。カメラメーカーも鉄道ファンよりも、その趣味ジャンルを意識してマーケティングしています。
それは、野鳥観察趣味です。


日本最強の趣味団体

野鳥観察趣味というのは、日本の趣味界隈においてもかなり特殊です。商業発行されている雑誌はBILDER1誌のみ。雑誌がたった1誌無いので趣味者人口は少ないと思いきや、野鳥愛好者による日本野鳥の会は、90の支部と4万人の正会員、1万人のサポーターを抱える、日本の趣味団体でも大所帯です。
野鳥趣味の特殊性は、独自のネットワークを閉じられたサークルで構築してきた点です。いつどこに現れるか分からない希少な野鳥の発見情報を、インターネットが普及する前から迅速に伝達・共有するネットワークを築きあげてきました。これらの情報は信頼できる人間間でやりとりされており、軽はずみに不特定多数が閲覧できるネット上で、鳥がどこそこにいると書いた場合、その人には情報が来なくなることがあるそうです。
いつどこに来るのか、あらかじめ決っている鉄道趣味とは、かなり文化の異なる趣味領域です。

ここで野鳥趣味者の情報ネットワークについての実例を一つ。
ある日、長野に滞在していた時、野鳥の会会員の知人から八ヶ岳の滝にコマドリがいるという電話をもらいました。私はあまり野鳥趣味無いんですが、面白そうなので行ってみました。


ホントにいたよ。八ヶ岳の山ん中の滝に。野鳥趣味者でも滅多にお目にかかれない(らしい)コマドリ。おまけに三脚抱えた野鳥趣味者に3人もあったよ。山ん中で。

鉄道ファンと同じく撮影が重要なポジションにある野鳥趣味ですが、このようにいつどこに現れるか分からない野鳥を相手にしているので、鳥を逃がさないで撮影するようにかなりマナーに煩いとされており、情報の共有の可否にも気を配っています。雑誌が1誌しか無いのも、マナー等のプロトコール共有には有効なのだと思います。

野鳥趣味者の団体である日本野鳥の会は、1934年に中西悟堂、北原白秋らの文化人によって設立され、現在では国の環境政策にもコミットするまでの力ある団体です。現在の「原則可猟」を「原則禁猟」への転換を訴えているので、狩猟趣味者からは蛇蝎のごとく嫌われていますが、それだけ影響力のある団体なのは事実です。


趣味者のコミュニティ構築が大事なんでねえの? という話

前述のように、野鳥趣味者はどこでも撮影に出没しながらも、問題回避の術を趣味コミュニティが強いることで、撮り鉄のような悪質な問題は顕在化していません。
コミュニティによる規範の構築と加入趣味者への伝達という点で、野鳥趣味は先んじており、頭数は多いが各学校の鉄道サークルに分かれている鉄道趣味は、趣味人の統制という点で、非常にアナーキーな状況になってんじゃねえのかと思うのです。

じゃあ、解決手段はなによ、と言われるとキッツイのですが、鉄道ファンで問題意識を持っているのなら、普遍的な規範の確立と、それをベテランから新参に伝えるためのコミュニティ構築が大事なんじゃねえのか、という話だと思うのですよ。個人の規範なんてブレあるんだから(趣味者はなおさら)、趣味ジャンルで社会とどう折り合うのかの線引決めるべきなんじゃないかと。

軍事界隈でも統一されたコミュニティは無く、割とアナーキーなとこがあります。比較的情報源が限られているので、そこそこ規範的なものは共有されていると思うのですが、軍オタでも非常識な人を見かけるのもまた事実なので、そろそろ考えるべきなんじゃねえの、とも思うんですがいかがでしょうか。

以上

4 件のコメント:

  1. 我孫子市在住2013年4月17日 13:11

    鳥の場合は同じ場所でも季節によって観察できる鳥の種類も変わるから、たとえば手賀沼周辺をホームグラウンドにして撮影していても一年中楽しめるし、一年中手賀沼で観察していれば野鳥趣味者のコミュニティに加わるでしょう。
    鉄道の場合は、季節が変化したからといって運用する鉄道の種類が変わるわけではないから、変化が欲しければ活動範囲を広げる必要がある。活動範囲が広くなってしまえばコミュニティが形成されにくくなるのでは?

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    1. 私は鉄道は詳しくないのですが、鉄道も季節で変わりますよ。
      特別列車などの希少性がある列車が走るからこそ、大量に撮り鉄が集まっくるわけで。
      それに、範囲の広さでコミュニティが形成されにくいとは思わないです。野鳥趣味はそもそも範囲広いからこそコミュニティが形成されていったのですから。

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  2. 野鳥趣味の方は目当ての鳥に会うために日本全国、はたまた海外にも出かけて行きます。 範囲の広さでは鉄道趣味の方とさほど変わらないのではないでしょうか。また、鳥は鉄道と異なりその行動範囲をレールで規制されないのである意味神出鬼没ですから、こんな鳥がいたよ。。。というような情報も迅速且つ正確に伝達しなければ意味をなさないので情報提供範囲も自ずと限定されるし相互信頼が形成の基本となっているのではと思います。そこに予めネットや雑誌で列車運情報を得られる鉄道とは大きな違いがあります。

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  3. ネットや雑誌での情報の少なさで、ある意味「にわか」が発生しにくい環境もあるんでしょうね。

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