2014年4月17日木曜日

日本で火花を散らす、米ロのネットバトル

昨年末からのウクライナ問題による米ロ関係の悪化が懸念されている昨今ですが、何故か日本のインターネット上では米ロのネットバトルが勃発しております。バトルと言うより、在日ロシア大使館のTwitterアカウント(の中の人)が1人ヒートアップしています。


在日米国大使館アカウントへ在日ロシア大使館が喧嘩を売る

3月27日の在日米国大使館のTwitterアカウント(@usembassytokyo)に対し、4月17日に在日ロシア大使館のTwitterアカウント(@RusEmbassyJ)が画像とリプライを送りつけています


ロシア大使館アカウントが送りつけた画像は、在ウクライナ米国大使館のサイト内で2013年11月30日に出されたウクライナのデモ(現ウクライナ暫定政権側)に対する前政権側の暴力を米国が非難した声明文で、「Kiev」「Ukraine」等の固有名詞をロシア大使館アカウントが塗りつぶして入力フォーム形式にしたものです。ロシア大使館アカウントが言わんとしているのは、現在ウクライナで進行している現政権側の暴力に米国が抗議していない事を揶揄しており、「今こそ、このフォーム使って現暫定政権に抗議しろ」と煽っているのです。

このロシア大使館アカウントですが、元々在日ロシア大使館の活動を伝える広報アカウントとして機能していたのですが、ウクライナ問題が深刻化する中で行動がアグレッシブになってきており、日米の報道機関のTwitterアカウントに対して抗議や反論リプライを直に寄せています。


ウォール・ストリート・ジャーナル日本版への抗議


ウォール・ストリート・ジャーナル日本版アカウントに対し、ロシアの諺をリプライして皮肉っています。これは、ロシアのラブロフ外務大臣が2月20日の会見で表明した、「ウクライナ情勢に関するロシアの立場」(在日ロシア大使館訳全文)からの引用になります。


CNN.co.jpへの抗議


CNN.co.jpへの抗議も、ラブロフ外務大臣の発言を引用しています。


読売オンラインの国際ニュースアカウントに対して

読売オンラインに対しては、「自動車への放火、警官への火炎瓶の投げつけ、殺人、ウクライナの様々な地方の知事に対する暴行や、軍の武器庫の占拠未遂をやっている過激派について、抗議デモとは言えるんですか。」と非難めいた質問をしています。これはラブロフ外相の発言ではなく、在日ロシア大使館アカウント自身のリプライのようです。


朝日新聞国際報道部と朝日新聞モスクワ支局(当時)の関根和弘記者とのやりとり

また、朝日新聞国際報道部とモスクワ支局員(当時)の関根和弘記者個人にもリプライを送っています。これもまた、ラブロフ外務大臣の発言引用ですが、関根記者からの質問に対しては「的外れの論点です」と返信して以降、やりとりはありません。

報道機関は言うに及ばず、個人のTwitterアカウントに対してもリプライを投げており、政府機関公式のアカウントとしてはかなり「攻め」方針のアカウントと言えますが、不思議なのは、日本以外の在外ロシア大使館のTwitterアカウントでこんな事しているアカウントが確認されていない事です。

ロシア外務省の思惑があって、在日大使館のみSNS上での積極的な活動をさせているのか、大使館職員(あるいは大使)の個人的な方針なのかは定かではありませんが、ロシア外務省・外務大臣の公式声明を引用してリプライを送る事で、政府見解との意見の乖離が無いように気を配っている反面、ウクライナ暫定政権がスイス国旗とノルウェー国旗を間違えた事を「(笑)」とからかう等、かなり大人げない部分も見られ、大使館職員個人の暴走のような気がしてなりません。

ウクライナ問題は単純にどちらが悪いと片付けられる性質のものではなく、冷戦後に旧ソ連勢力圏で親米政権や独立国を強引に作ってきた欧米に対し、ロシアが同様にクリミアを独立・編入させたら欧米メディアがロシアを一方的に非難している事に、ロシアはダブルスタンダードであると不満を募らせています。在日ロシア大使館アカウントが、ロシアの立場から見て道理に適った主張もしており、それが欧米政府・メディアの偽善性を暴いているのも分かります。ですが、なぜ日本でだけ、こんな事になっているのでしょうか。ロシア政府或いは大使館職員は、何らかの効果があると確信しての行為のようですが、正直な所引いている日本人もいるように思えます。

さて、喧嘩リプライを直に投げられた米国大使館アカウントですが、これを書いている4月17日17時現在、反応を見せていません。米国大使館アカウントは元々、1週間に1日程度しか呟いておらず、4月12日以降呟いていないままなので平常運転なのかもしれませんが、19日頃にどういう反応をするのか注目しております。


【ロシア政治外交関連の本たち】







0 件のコメント:

コメントを投稿