2014年4月1日火曜日

「Yahoo!ニュース個人」における、ネタ記事削除要請について

本日0時過ぎに「Yahoo!ニュース個人」にアップしました「神奈川県、町田市を編入。神奈川県町田市へ」ですが、Yahoo!ニュース個人編集からの削除要請、及び編集判断の非表示処理により、現在閲覧できない状態にあります。ほぼ同じものは、当ブログ内でも収録されておりますので、ご覧になりたい方はそちらをご参照ください。タイトルを読めば分かるように、クリミア編入問題に絡めたエイプリルフールネタです。

(追記:エイプリルフールのネタの経緯としては、こちらのTwitter上のまとめをご参照下さい。「Yahoo!ニュース個人における「ネタ記事」の扱い」

ここで、本件についてお話する前に「Yahoo!ニュース個人」について簡単に説明したいと思います。Yahoo!ニュース個人は、2012年9月にYahoo!ニュースが始めたコーナー(サービス)で、個人で活動しているジャーナリストやブロガーなどがオーサー(執筆者)としてYahoo!ニュース内の「個人」というカテゴリに記事を出稿し、記事のPVに応じた広告収入を報酬として受け取るというものです。
 ヤフーは9月26日、「Yahoo!ニュース」の新コーナーとして、ジャーナリストやブロガーなど個人が直接記事を入稿し、Yahoo!ニュース読者に届けられる「Yahoo!ニュース 個人」をオープンした。まずは政治、経済、ITなど各ジャンルの書き手約50人が参加。ページビュー(PV)に応じて広告収益をシェアするなど、「個人の活動を支援する場を作る」としている。


Yahoo!ニュース個人の狙いを端的に言うと、価値観の多様化等で個人ブログへの注目が高まっている中で、それまで個人のブログに集まっていたPVをYahoo!ニュースが取り込むと共に、そこで得られた広告収入をオーサーへ還元する事で両者Win-Winの関係(なんとも死語だ!)を築こうというものです。これまでブログサービスに逃げていたPVをYahoo!内に取り込め、オーサーも報酬を貰えてニッコリ……と一見両者良いことづくめに見えるサービスで、始まった当初はネット上でも企業による新しい取り組みとして、それなりに注目されていたと思います。

当初は著名ジャーナリストや学識経験者、有名ブロガーらオーサー50名で始まったYahoo!ニュース個人でしたが、将来的にオーサーを1000名規模まで拡大する事が計画されていました。ひょんな事で零細ブロガーの私にもお声がけ頂き、2013年8月よりオーサーの末席を汚させて頂いております。私の加入以後もオーサーは順調に増え、現在は多種多様な書き手が集っております。

さて、Yahoo!ニュース個人の説明はここまでにして、本題の記事削除要請について戻りましょう。

ここで編集が提起したのは、Yahoo!ニュースという場にネタを載せる事は好ましくない、という判断です。自分でネタを上げておいてなんですが、これは全く同感です。ニュースという場にネタは相応しくない。これは程度問題こそあれ、多くの方が共通認識として同意できるものだと思います。

そんなネタ記事を許さないYahoo!ニュース編集の方針は完全に正しいでしょう。では、そのYahoo!ニュース個人でのアクセスランキング上位記事を含む、エイプリルフール以外の日に掲載された記事を見てみましょう。

ウクライナ・南部クリミア半島の空港などに突入した米海軍特殊部隊が、ロシア正規軍と交戦、全滅した(板垣 英憲) - 個人 - Yahoo!ニュース

世界の「人類削減計画派」が中国の習近平国家主席の「国防予算増大」を餌食に「第3次世界大戦」を策謀する(板垣 英憲) - 個人 - Yahoo!ニュース

北朝鮮「暗殺隊」が、私利私欲の徒・金正男と息子、張成沢・国防副委員長の手下約3万人の粛清に向かう(板垣 英憲) - Y!ニュース

日本発イノヴェーションが「トリチウム汚染水」の呪縛を解く(原田武夫) - 個人 - Yahoo!ニュース

はい、凄い「ニュース」ばかりですね。アクセスが発生してオーサーに金が入るのが嫌なので、記事にリンクはしません。

1番目については、現在は「全滅した」が「失敗した」と若干マイルドな表現になっておりますが、世界のどこを見ても報道した所はYahoo!ニュースのみです。ロシア語を読めない私が見逃しているクリミア情勢の裏ニュースがあるのかもしれません。そこでこの「全滅」記事について、クリミア情勢で連日テレビやラジオに出演されており、Yahoo!ニュース個人でオーサーもされているロシア軍事情に詳しい小泉悠氏の感想を御覧下さい。



2番目、3番目については言及を省きますが、4番目の記事も曰く付きです。この記事は元外務官僚が執筆者ですが、福島第一原発のトリチウム水問題を「原子転換」により解決するという内容の記事で、この「原子転換」は典型的なエセ科学と看做される分野です。これと全く同じ記事が東洋経済オンラインで掲載されると多方面から批判を浴び、東洋経済社は謝罪し掲載を取りやめましたが、Yahoo!ニュース個人では掲載から3ヶ月経とうという今でも閲覧可能です。

このように、今のYahoo!ニュース個人はネタ記事が大手を振って掲載され、それらがランキング上位に張り付き、真摯な記事は日の目を見ないという惨状です。当初の志の高さはどこに行ったのでしょうか。

話を記事削除要請に戻しましょう。私が「町田市編入」記事を出稿したのは、エイプリルフールだからネタをやりたいという気持ちが半分、完全に嘘だと分かりきっているネタ記事についてYahoo!ニュース編集がどう考えているのかを明らかにする狙いが半分でした。そこで明らかになったのは、Yahoo!ニュース編集部はネタ記事を許容しないという姿勢です。ですが、現実はご覧のとおりです。

そこで私は、自分のエイプリルフールネタ記事の自らによる削除を拒否する旨とその理由をYahoo!ニュース編集に送りました。以下に引用します。

いつもお世話になっております。dragonerです。

さて、メールでご依頼頂いた記事削除の件ですが、
下記の点から承服致しかねます。
  • Yahoo!ニュース「個人」において、虚偽と断定し得るニュース、あるいは似非科学に基づく記事が恒常的に見られ、それらは放置されている。
  • 多くのオーサーが真摯に記事を執筆している中、前述の虚偽・似非科学に基づく記事がランキング上位を占め、かつ執筆権限外のカテゴリランキングを汚染している。(クリミア問題が「国内」?)
  • 上述したニュースの信頼性に関わる事が放置されており、その点を懸念するオーサー、並びに外部識者は大勢いるが、一向に改善は見られない。
  • そのような現状であるにも関わらず、エイプリルフールという広く認知された日に、直近伝えられた国際ニュースを基であると誰しも理解し得るジョークが許容されない、というのは納得がいかない。
以上になります。

なお、上記点は本記事削除要請を承服しかねる理由に限らず、Yahoo!ニュース「個人」の根源的問題であると認識しています。Yahoo!ニュース「個人」の書き手であるジャーナリスト、学者、ライターにとって、信用は重要な要素であると理解していますが、Yahoo!ニュース個人の現状はニュースとしての信頼性を欠くものがまかり通り、それらが真摯な書き手に対する信用の毀損にも繋がりかねないと懸念しております。悪貨が良貨を駆逐すると言ってもよいでしょう。

今回の記事執筆も、エイプリルフールのネタ半分、もう半分は貴社編集姿勢についてのリトマス試験紙として意図しております。

もし、現在のYahoo!ニュース「個人」の上記状況を改善して頂けるのでしたら、喜んで記事を自ら削除致します。

このメールに対し、「エイプリルフールネタは他のオーサーにも遠慮頂いており、非表示にさせて頂きました」という返答がYahoo!ニュース編集より来ました。それでは、ネタ記事が本当に非表示にされているか、御覧下さい。

ネタ記事(右)
「ディビット・ロックフェラーがリーマンショック前に皇居を訪問し、天皇陛下に窮状を訴えていた」「ディビッド・ロックフェラーは、米英中心に多国籍軍を編成して世界戦争を策動する「世界新秩序派」の頂点に立ち、「第3次世界大戦」を勃発させようとした。」ってネタ記事が、未だに非表示にされていないんですけど、なんでなんですかね?


皆様もご存知の通り、Yahoo!ニュースは日本最大のポータルサイトであるYahoo!内のニュースサイトで、日本で最も影響力の大きいネット媒体です。その影響力の大きさについては、コラムニストの小田嶋隆氏がPV至上主義の問題と共に語っています。

一方、新聞記者に会って話を聞くと、最近は記事を書く際にYahoo!ニュースのトップに掲載されることを目標にし始めているというんです。これは圧倒的にPVが多いからなのですが、PVを稼ぐために記事を作るという圧力が、記者の中にも働きつつある。これは非常に不健康なことだと思うんですね。


紙媒体の部数至上主義は昔から言われていましたが、現在のネット媒体でもマスメディア記者がPV至上主義に陥っている事を指摘し、その姿勢を問題視しています。このようにYahoo!ニュースはマスメディア記者が意識するほど影響力高い媒体でありながら、あからさまな嘘、陰謀論、エセ科学に基づく記事を掲載し、それらネタ記事にYahoo!ニュースという看板・信頼を与えている事について、どのような見解を持っているのでしょうか。

Yahoo!ニュース編集部におかれましては、今後も高い影響力維持したいのであれば、よりニュースの信頼性を高めるべきあると思いますが、こんな現状を良しとしているのでしょうか? メールにも書いたように、これら恒常的に出稿される「ネタ記事」に対し、断固たるご対応頂ければ、喜んで私のネタ記事をYahoo!ニュース個人のCMSからも消す次第です。

Yahoo!ニュースから、Yahoo!ニュース編集部の方針に従い、ネタ記事が一掃される事を信じて疑いません。

0 件のコメント:

コメントを投稿