2010年の終わり頃から始まった中東の政変は、現在もシリアで内戦として継続しております。先日の記事で、シリア内戦における戦車と人間との戦いの映像を紹介しましたが、この紛争は他にも大量に動画がネット上で見れます。
そこで目に付くのが、反体制側である自由シリア軍(FSA)による自家製兵器の数々です。
現在のシリアには海外から大量に武器が流入しており、中東周辺ではどんな中古武器にも高値で取引されているそうですが、それでもなおFSA側の武器は不足しているのか、様々な自家製兵器の数々があります。
今回は多彩な自家製兵器の数々について、写真や動画で見て行きましょう。
自家製弾薬
弾薬の有無は、戦闘能力の有無と言っても過言ではありません。
弾薬の製造はFSAでも重要のようで、大量の工作機械を使って製造されます。
FSA 弾薬工場 |
しかし、シリア軍(SSA)の封鎖下にある街も多い中、資材は限られています。FSAでは鉄屑を集め、溶かして原材料として利用しています。
鉄屑 |
鉄屑を溶かして弾の原料へ |
弾殻は旋盤を用いて成型されます。これは、通常の弾薬製造と同じです。
旋盤で砲弾に加工 |
そして完成した迫撃砲弾の数々。
完成した迫撃砲弾 |
実射の様子 |
自家製擲弾銃
ビルが障害となる市街戦では、極端な弾道を描く兵器は重宝されます。FSAでも、自家製の擲弾銃を使っていました。自家製擲弾銃 |
構造は至ってシンプルで、中折れ式散弾銃の銃身の先に擲弾を入れる容器をくっつけたものです。
爆発する擲弾は導火線式 |
空砲を散弾銃に装填し、容器内に擲弾を装填。発射前に擲弾の導火線に火を着けます。
発射される擲弾 |
なお、導火線に着火後にグズグズしてたら、自分のとこで爆発しますので注意。
自家製リモート・ウェポン・システム
続いてはちょっとしたハイテクです。自家製のリモート・ウェポン・システム(RWS)です。RWSとは、遠隔操作式の無人銃システムのことで、敵の銃火に身を晒さずに攻撃でき、近年の市街戦用戦闘車両に装着される例があります。
米軍のRWS M153 PROTECTOR(Wikipediaより) |
FSAも市街戦での使用を想定してか、自家製RWSがいくつか見られます。まずは、車両搭載型。
自家製装甲車と自家製RWS |
……乗用車に鉄板を装着して対弾性を確保し、上部に銃座を据え付けています。見た目はアレですが、中から液晶画面を見ながら、プレイステーション風のゲームパッドで銃座を操作出来ます。
ゲームパッドで銃座を遠隔操作 |
さらに、設置型のRWSも存在します。
設置型RWS |
三脚銃座に自動小銃を設置し、ライフルスコープの接眼部にはカメラを装着、銃座は自動車用バッテリーからの電気で回転し、有線操作で敵を狙撃できます。
操作盤 |
ちょっと凄いのが操作盤で、木製の枠に液晶ディスプレイと操作ボタンを組み込み、蝶番でノートPC風になっています。ホームメイド感が凄い逸品。
液晶に表示される照準 |
なんか、工業高校の文化祭に置いていそうなブツですが、この通り照準可能です。操作盤の形状から、恐らく上下左右の2軸に照準可能と見られます。
遠隔で銃を操作 |
この通り、自分の身を晒さずに銃を操作することで、自身の生存性を高めています。
自家製MLRS
戦闘は火力です。短時間で大量の火力を投入できる兵器は、戦闘では高い威力を発揮します。FSAでも、ピックアップトラックの荷台にロケットランチャーを装着して、機動力を持った多連装ロケットシステム(MLRS)を作っています。自家製で。
自家製MLRS |
結構、様になっています。では、実射はどうでしょうか。
発射したロケットの発射炎にトラックが炙られる |
トラック炎上 |
自家製カタパルト(投石器)
なんだか、ダメな雰囲気が漂ってきましたが、まだまだ続きます。次は、自家製カタパルトです。カタパルトって、アレですよ。大砲が登場する以前の、攻城兵器の主役だった奴。
カタパルトのレプリカ(Wikipediaより) |
カタパルトその1 |
おっさん達が、バスケットゴールみたいな物体に取り付けられたハンドルを回し、オモリを上にあげています。
発射 |
次は車載のカタパルトです。
パチンコ型カタパルト |
導火線に着火 |
数人がかりでゴムを引く! |
これ、着火したあとにゴムが切れたらどうするんだとか、色々気になります。少なくとも、私はこれを引っ張るのは遠慮したいです。
まだまだ続くカタパルト。今度は 手榴弾を保持して……
手榴弾を保持し |
引張ります。 |
発射! |
なんでこんなにカタパルトが使われているのか、なにがFSAをここまで駆り立てるのかは正直なところ想像でしかないのですが、ここまで見てきた一連の自家製兵器から見て取れるのは、「敵に身を晒すこと無く攻撃したい」という願望です。
FSAが対峙するSSAは、軍事大国が犇めく中東においても、有数の戦車保有数を誇る軍隊で、正面から殴りあっては、FSAは多くの損害をこうむることが目に見えています。
ビルを一つ隔てた通りに爆弾を投げ込みたいという要望は、実はどこの国の軍隊も持っているもので、FSAなりに実現できる解を探している最中なのかもしれません。
こんなの見てると、内戦なんてするもんじゃないと思い知らされます。戦争もだけど。
<参考になりそうな書籍>
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