2013年5月11日土曜日

戦場の怖さが分かる動画と情報リテラシー

昨晩ツイッターで呟いた戦車が怖い動画の数々。

  そのtogetterまとめ:【グロ注意】戦車に人が立ち向かうということ

深夜にもかかわらず、かなり反響が大きかったので、改めてブログでまとめてみました。

なお、この記事中の映像は、どれも流血や四肢損傷などのショッキングなシーンがある為、再生する方はそれを承知の上でお願い致します。



弱者視点の映像

YouTubeや安価なビデオカメラが普及してからというもの、イラク戦争やアフガンなどの戦場で、米軍兵士らが撮影した映像がネット上に出回るようになりました。

Marines survive small IED


しかし、それらの映像は重装備・近代的な装備の有志連合軍兵士が、突発的な銃撃に晒されるとか、突然の爆弾攻撃を受けるような映像ばかりで、言わば強者側視線の映像でした。

2010年のアラブの春以降、中東・アフリカ地域で勃発した政府軍と反体制派の戦闘は、独自メディア(放送局)を持たない反体制側が、盛んにYouTubeなどの動画投稿サイトに映像を配信しており、最近はシリアの自由シリア軍とシリア政府軍の紛争の映像が大量に出回っています。

イラクやアフガンで撮られた映像と異なり、戦車・装甲車を有する政府軍に対して、生身で攻撃を仕掛ける反体制派という構図が多く、弱者側からの視点という今までにない映像が数々撮られています。

今までも、米軍と比較すれば弱者のアルカイダ側が撮影した車両への攻撃映像などは出回っていましたが、米軍への攻撃成果の宣伝などの意図があるものはYouTube側で削除などが行われており、見る機会はそれほどでもありませんでした。しかし、今回は西側諸国のほとんどが反体制側についている為に、YouTube側も削除は行われておらず、大量の動画が見れます。

また、これは東日本大震災での被災者が撮った映像にも共通して言えることですが、それまでの映像と違い、安価なハイビジョン撮影機材が普及したため、ハイビジョン品質の高解像度動画が大量に撮影されているのも、それまでの戦争映像との違いです。

映像ソースのハイビジョン化と共に、GoPro HEROなどのウェアラブルカメラのジャンルが誕生したのと重なり、様々なアングルで撮られるようになりました。


18+ Death of a Tank - Deadly T-72 mission OnBoard - Darayya Syria ++Sound


例えば、上の映像では、政府軍側の戦車上から撮影した動画を流していますが、7分頃から反体制側兵士が撮影している戦車の前の車両に攻撃を加えようとしているシーンに切り替わり(編集上の話。事実かどうかは不明だが、車両の位置関係等は合っている)、その後に政府軍側戦車の映像に戻ると、僚車が攻撃で爆発炎上し、戦車が攻撃地点と見られる建物(本当の攻撃地点は別)に誤射で反撃している様子等が映っています。

編集で繋ぎ合わせて、さも同じ戦闘であるように見せかけている可能性もありますが、同じ戦闘のシーンを、攻撃側と撃たれる側の双方から撮影した動画が存在するのは、今まであまり無かったんではないでしょうか。


また、戦車と比べて相対的に弱者である側の歩兵から見た戦車の動画も数々あります。


Group Of FSA Fighters Take a Direct Hit From Syrian Arab Army Tank


上の映像は、ツイッターの冒頭で紹介した映像です。対戦車兵器のRPGで、シリア軍戦車に攻撃を仕掛けようとした自由シリア軍兵士が、戦車砲の攻撃で文字通り体が消えてしまうショッキングな映像です。
最初、RPGの暴発かとも思いましたが、爆炎・爆発の位置などから、映像の説明通り戦車砲による攻撃だろうと判断しました。


Syria: SAA Tank Takes Multiple RPG Hits


また、上の映像では、開始30秒付近でシリア軍戦車に攻撃が命中して、撮影者が「アッラーアクバル!」と叫んで喜ぶも、攻撃された戦車が平然と撮影者側に砲身を向けてきて、撮影者が慌てて逃げるのが分かります。
歩兵携行型の対戦車兵器では、1発で戦車に致命的なダメージを与えるのは難しく、弾薬庫誘爆や火災等が発生しない限り、ほとんどの戦車は修理が可能です。事実、中東戦争のイスラエルは自軍の戦車のみならず、敵の損傷戦車まで回収して、修理・改造した事が知られています。
戦車のしぶとさと、人間にとっていかに恐ろしい相手かが分かる動画です。

Free Syrian army destroy russian tank With RPG hit.


今度の映像では、編集上、シリア軍戦車を捉えているカメラとそれを攻撃する自由シリア軍兵士(4分52秒あたりから)の2つのカメラによる映像です。攻撃兵器はRPGシリーズの比較的新しいバージョンで、RPG-29だと思われます。5分50秒には攻撃を受けた戦車が炎上し、戦車左から乗員と思しきボロボロの人物が脱出しているのが分かります。
戦車の炎上時の火炎の凄まじさや、炎上後もパチパチと機関銃弾が爆発しているのが分かります。ここまで派手に燃えてしまっては、スクラップにするしかなく、僚車も被弾車を見捨てて移動するところで映像が終わります(その後に回収したかは、自由シリア側の映像なので不明)。


こういったショッキングな戦場の映像を見ると、その衝撃の大きさに囚われてしまいがちですが、このような映像は投稿側・編集側の意図が働いている為、注意して見なくてはいけないと思います。

下の映像では、1分20秒あたりから自由シリア軍の兵士が、戦車の砲身に手榴弾を投げ込んで、爆発炎上させるシーンがあります。ですが、戦車はずっと止まったままな上、もっと強力な対戦車兵器持っている兵士が映っているのに、誰ひとり使っていない不自然さがあり、恐らくは遺棄車両に主榴弾投げ込んだヤラセだと考えられます。


Raw Footage Syria: FSA destroys a T-72 Tank with a grenade


YouTubeやニコニコ生放送など、マスメディアの編集を経ずに、直接発信者が配信する映像を目にする機会が多くなりました。メディアの恣意的な選別を経ない為、それを歓迎する向きがあります。しかし、それらは視聴者は発信者の意図をそのまま見せつけられる事に繋がる上、マスメディアが使うような専門家による解説も期待出来ません(胡散臭い解説者も多いけど)。

このような発信者の意図に直接視聴者が晒される時代においては、視聴者ひとりひとりのリテラシーが問われてきます。情報の渦に巻き込まれず、考えるためのツールとして利用するスキルを高めていきたいものですね。