2013年12月18日水曜日

韓国が鍵となる、新しい日本の防衛計画

17日に、「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱について」(防衛大綱)が閣議決定されました。防衛大綱とは、概ね10年ほどを想定した中長期的な安全保障政策の指針の事で、日本を取り巻く安全保障環境に変化が無ければ10年以上経っても改訂されない事もありましたが、今回の改訂は平成23年度に防衛大綱が定められたばかりでしたので、わずか3年という短期間での改訂になります。防衛大綱の閣議決定と同時に、今後5年間の防衛力整備、つまりどれだけ装備を調達して人員を割り当てるかを定めた、中期防衛力整備計画も明らかになりました。

さて、これら中長期の安全保障政策と防衛力の整備計画では、陸上自衛隊はこれまで地域ごとで独立した指揮権を持っていた方面隊の上に陸上総隊を新設して、陸上総隊に指揮を一元化する組織改編を行い、機動力の高いMV-22オスプレイや機動戦闘車、水陸両用車両を新たに配備します。水陸両用団と呼ばれる島嶼部戦闘に特化した部隊も新設されます。海上自衛隊や航空自衛隊でも同様に、戦闘機部隊の増勢や、多用途性とコンパクトさを両立させた新たなタイプの護衛艦の導入、警戒監視能力の強化などが謳われています。


今後5年で99両が新たに配備される機動戦闘車今後5年で99両が新たに配備される機動戦闘車

一方、これらの新たな装備の配備や増強の反面、陸上自衛隊の主力装備である戦車・火砲を大幅削減し、戦車の配備は北海道、九州のみとし、これまで各師団に配備されていた火砲も方面隊直轄とするなどの方針が明らかになっています。

このような新しい防衛大綱は「南西シフト」であると各種報道は伝えています。冷戦期にソ連を仮想敵として北海道に重点配備していた自衛隊を、中国を睨んで九州・沖縄等の島嶼部の防衛に注力すべく、日本の南西部に防衛力の再配置するというものです。

近年の中国の軍事力整備の方向性は、圧倒的な経済力を背景にした正面装備の充実を図っています。2013年に中国が建造した水上戦闘艦の数は、自衛隊がこの10年間に建造した護衛艦の合計を既に上回っており、急ピッチで拡大し続けています。また、中国海軍は空軍とは別に海軍航空隊を保有しており、現在の増強ペースを見れば、あと数年で海軍航空隊だけで航空自衛隊より強力な戦力になると見られます。中国海軍は陸上部隊を運搬し、上陸させる揚陸艦の整備も今後進めると見られ、かなりの水陸両用戦力もいずれ持つ事になるでしょう。

これら中国の軍事力の拡大に、日本一国のみで対抗するのは不可能で、日米同盟の強化や周辺諸国との軍事的連携、国際的な協調による紛争防止等、多国間の協力が必要となります。新しい防衛大綱でも、アジア太平洋地域の国々との連携や、国際社会との協力を推進することが謳われています。

ところが、新しい防衛大綱では、日本が今後連携推進を目指すとされた国の中に、外交的に険悪な状況にある国があります。韓国です。


複雑に入り混じる日中韓の防空識別圏

新しい防衛大綱では以下のように韓国との関係強化を謳っています。


 我が国と共に北東アジアにおける米国のプレゼンスを支える立場にある韓国との緊密な連携を推進し、情報保護協定や物品役務相互提供協定(ACSA)の締結等、今後の連携の基盤の確立に努める。



ところが、ここで謳われている情報保護協定の締結は、本来は昨年に締結が予定されていたものですが、締結直前になって韓国から延期の申し入れがあり、それ以降は進捗が見られません。また、そもそも今回の新しい防衛大綱策定の基本概念である国家安全保障戦略について、韓国外務省は竹島問題が明記されていることを遺憾とし、削除を要求するなど抗議しています。


韓国外務省の報道官は17日の記者会見で、日本政府が閣議決定した国家安全保障戦略に竹島の領有権問題を外交努力で解決すると明記したことについて「極めて遺憾」と表明、「日本政府は不当な主張を即時に中断すべきだ」と訴えた。



韓国との協力関係構築を目指すとする日本の新たな安全保障政策ですが、当の韓国が様々な問題から乗り気ではありません。その背景には領土問題や反日感情と言ったものが挙げられていますが、一番大きな問題は中国への配慮にあるでしょう。国内市場が小さい韓国経済は、貿易依存度が極端に高く、韓国最大の貿易相手が中国であることからも、中国の韓国に対する経済的影響力は計り知れないものがあります。また、北朝鮮と関係の深い中国と良好な関係を築くことで、北朝鮮の暴発を抑える事も期待されており、韓国としては中国の機嫌を損ねる日米との連携強化を表立ってできない状況にあります。

日本、ひいてはアメリカにとって、韓国を日米側に引き留める事が重要になってきます。先日、訪韓したバイデン米副大統領は朴槿恵韓大統領との会見で、日本との関係改善を促した上、「米国の反対に賭ける(betting)のは良くない」と発言し、中国と関係を深める韓国に釘を差したと、韓国国内では大きく取り上げられました。日本も韓国が「反対側に賭ける」のを阻止する為、米国と強調して、日米側に留める努力を強める必要があるでしょう。

歴史を振り返れば、日清・日露の両戦争は、日本が大陸勢力からの緩衝地域として朝鮮半島を日本側勢力に留めようとした為に起きています。更に遡れば663年に白村江の戦いで唐・新羅連合軍に日本軍が敗れ、朝鮮半島における日本側勢力が一掃された後、日本が九州に防衛用の城を多数築いて防人を置き、首都を海沿いの難波宮から内陸の近江宮に移すなどの防衛力強化に努めた事が知られていますが、これは朝鮮半島における緩衝地帯が無くなった事で、日本本土が最前線になった為に防衛力強化が必要となった為と言えます。今、朝鮮半島に緩衝地帯を無くすと、1300年前を繰り返す事になりますが、これは避けねばなりません。

前述した通り、新しい防衛大綱と中期防衛力整備計画では陸上装備が大幅に削減されます。これは我が国が島国であり、直接的な陸上戦力の侵攻を海が阻んでいる為に可能になったものです。ですが、韓国が「反対側」に賭けた場合、日本は大陸勢力と対馬海峡という狭い海峡を挟んで対峙する事になり、大幅に防衛への負担が高まります。

防衛大綱で示された他国との連携では、アメリカ、オーストラリア、ASEAN諸国、インドといった国々との連携も謳われ、それらの国々とは成果も出ておりますが、韓国だけはうまくいっていません。防衛大綱で示された安全保障環境の実現の、最大の障壁にして鍵が、韓国と言えるでしょう。韓国では中国との関係は良好と考えられていましたが、中国が防空識別圏を韓国が管理権を主張する蘇岩礁上空に設定した事への反発や、張成沢氏処刑による中国の北朝鮮への影響力についての疑念などで、メディアが日本との関係改善を主張し始めるなどの兆しを見せています。ここでどう韓国側をこちらに取り込むかが、日本外交の見せ所になるでしょう。


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2013年12月11日水曜日

韓国が新防空識別圏を設定

韓国国防部が新しい防空識別圏(KADIZ)を設定したと発表しました。

【ソウル聯合ニュース】韓国の国土交通部関係者は11日、国防部の要請を受け、防空識別圏の拡大を盛り込んだ航空情報(ノータム)を各国の航空当局に送ったと明らかにした。航空情報は防空圏が拡大される15日午後2時から発効する。


ところが、韓国国防部のサイトや国土交通部AIS見ても、新KADIZの座標が載っていない。困ったなあと頭抱えつつ、韓国メディア探したら座標があったんですが……







あのー。2つとも聯合ニュースがソースなのですが、KADIZ東の座標が30分違うのですがそれは……。

とりあえず、AISにあった過去の座標からデータから、下の白地図の方の座標が正しいなと仮定して、Google Mapsに追加しておきました(色分け見難くてすみません)。とりあえず、過去のKADIZも残しておきます。いずれ消すかも。




さて、これを見ると分かりますが、大変だ。日本の防空識別圏もむちゃくちゃ広いのですが、韓国のも南に伸び、厳密に対応してしまうと、韓国本土南西にある光州基地がめんどい事になるかもです。

※(12/11,20時追記)新KADIZに少し誤りがありました(対馬海峡の一点を入れ忘れ)。修正しましたが、見た目はほとんど変わりません。

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オオカミ少年は死なず ~民主主義は何回死んだか~


特定秘密保護法が成立しましたね。

この法案を巡っては、反対論陣を張ったメディア、特に朝日新聞と毎日新聞が批判的な報道を連日繰り返していましたが、法案成立時に毎日新聞は「民主主義死す」とまで題した見出しをつけています。
特定秘密保護法:成立 軽々と、民主主義死す 「息苦しい世になるのか」

出典:毎日新聞 12月7日朝刊

民主主義が死んだとは穏やかではありませんね。本当に民主主義が死んだのであるならば、メディアによる政府批判や、私のような一介のブロガーが呑気にブログ書いてたりは出来ないと思うのですが、「民主主義が死ぬ」というフレーズは、昔から色んな政治家が、揉めた法案がある度に発言していた記憶があります。

そこで、平成以後に国会議員が発言した「民主主義の死」に類する発言をいくつかピックアップしてみた。(肩書はいずれも発言時)

自自公の数の横暴で民主主義が死にかけている。一日も早い解散を迫っていく。

出典:羽田孜(民主党幹事長)
2000年 福岡市内のホテルで開催された「新春のつどい」にて

理念なき妥協であり、有権者を愚ろうし議会制民主主義の死滅にもつながりかねない

出典:土井たか子(社民党党首):1999年 衆院比例定数削減について

PKO協力法案は平和的な国際貢献の名に値しない。自衛隊の海外派兵を最優先する悪法だ。全力で阻止する。参院での強行採決以来、我々が考えてきた国会のルールが踏みにじられ、議会制民主主義が死滅せざるを得ない。

出典:田辺誠(社会党委員長):1992年 党内の朝の代議士会挨拶にて

採決は無効だ。自公民3党で決めたことで国会が動くようでは議会制民主主義は死滅だ

出典:田辺誠(社会党委員長):1992年 PKO法案特別委員会の採決後に

皆さん、軽々しく民主主義を殺しすぎですね。もう20年以上前のもあるんですが、死者に鞭打ちすぎだと思います。

さて、このように「民主主義の死」と煽る人物に共通するのは、代議士制における民主的意見集約手段である選挙結果を無視し、審議の打ち切りと強行採決を持ってして「死んだ」「死ぬ」と言っている点ですが、民主党が与党時代に強行採決を繰り返した事は周知の通りですし、社会党の田辺委員長に至っては、PKO法案を巡り2回も「民主主義の死」を発言していますが、その後に社会党は自社さ連立政権を組むにあたり、自衛隊合憲・PKO派遣も認めるように方向転換しました。「民主主義は死んだ」と抜かす人に限って、民主主義を「殺す」側に入る事には躊躇しないのはどういうことなんでしょうか。

今回の秘密保護法を巡っては、反対論陣側はいたずらに危険性を煽り立てるものばかりで、法案そのものを完全否定するあまり、法案が抱える問題点そのものの議論が尽くされず、非常に残念なものとなりました。もっとも、法案は改正することが出来ますし、今後に非自民党政権が成立する可能性だって十分ありますから、その際に改正を議論してくれれば良いと思います。しかし、過去に「民主主義の死」を連呼したオオカミ少年たち(オオカミ爺さんと婆さんですが)が、その後に民主主義を殺して回った事実を見ますと、あまり期待できそうにないと暗澹たる思いがあります。




2013年12月6日金曜日

難しいSNS時代の秘密保全

特定秘密保護法が成立秒読み段階に入っていますね。秘密保護法が成立・施行された場合、行政の長が特定秘密に指定した情報は部外者には秘密にされ、その情報を外部に漏洩させた者は罪に問われる事になります。そういう点で秘密保護法は、情報へのアクセスを制限することで、秘密を守るというアプローチと言えます。

ところが、指定された秘密自体が漏れてなくても、秘密でない一般情報から、秘密をかなりの精度で推測する事は可能です。近年はその為の技術も発展し、各国情報機関ではその活用が行われています。秘密保護法の成立の前に、秘密でない情報から秘密を明らかにする方法と、その手法から秘密を守る方法を考えてみましょう。



情報機関も活用するSNS

最近は「ビッグデータ」と呼ばれる巨大なデータの集合を強力なコンピュータで解析し、消費者動向等を掴もうとする試みがビジネスの世界で盛んですが、諜報の世界でもビッグデータの活用が行われています。米国家安全保障局(NSA)では、フェイスブックやツイッターなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で流れている情報を解析し、対テロ情報の収集に役立てていると言われています。例えば、SNSに要注意人物がアカウントを持っていた場合、その人物がどこでどんな行動をしているのかを把握することが可能ですし、SNSの全情報から怪しい行動をしている人間を抽出して、犯罪を防止することも可能です。人がどういうネットワークを持っていて、そのネットワークはどういう集団なのかも判明し、犯罪・テロネットワークの把握にも繋がります。このようなSNSのビッグデータ解析による情報収集のミソは、SNSで発信される情報はWeb上で公開されているものなので、これを情報機関が収集・解析するのは全くの合法だという点にあり、NSA等の情報機関では大規模コンピュータによる解析を進めています。

中二を刺激するNSAのオペレーションセンター

しかし、個人がSNSで情報発信していたとしても、秘密に指定された情報さえ書かなければ、秘密は守られるからいいのでは、と思われるかもしれません。実際、秘密保護法案は秘密そのものを保護対象としているので、秘密を漏らさなければ問題無いのです。法的には。



秘密でない情報から秘密を探る

ところが、秘密情報そのものは守られていても、周囲の情報から秘密を推測する事は可能です。実際に、私の身近で最近あった例を挙げましょう。ある作家の方があるゲームにハマり、ツイッターでゲームの事を頻繁に呟いていましたが、ある日を境にゲームに言及することが無くなりました。この変化を見て取った一部のフォロワーは、作家がそのゲーム関連のノベライズ担当に決まったからゲームへの言及を控えているのではないかと推測しましたが、後日行われた公式発表により、予測の正しさが裏付けられた事がありました。ここでは身近な例を挙げましたが、このように秘密を一切明らかにせずとも、普段からの観察と分析で秘密を明らかにする事は、ほとんどの分野でも可能なのです。

諜報の世界では、普段との行動パターンの違いから異変を察知する事は昔から行われてきました。しかし、個人の普段からの行動を監視するには多くのリソースが必要で、まして集団の構成員全員を対象とする事は不可能でした。ところが、SNSの普及によって、リアルタイムの個人情報が容易にかつ大量に把握可能となった今、その難易度は下がったと言えます。個人が秘密を一切書いてなくても、艦艇勤務の海上自衛官が長時間呟いていないから航海任務に出たなとか、日本時間は夜なのに昼の写真ばかりアップロードしたら海外にいるなとか、いくらでも秘密の推測は可能です。大規模コンピューターを用い、さらに大きなレベルから複数人の情報の紐付けを行った場合、特定の集団(自衛隊部隊や、警察etc...)になにが起きているかも推測可能になるでしょう。秘密を知る鍵は、そこら辺に転がっているのです。



知る必要のある情報か? を考える

このように、秘密を守ろうとしても、秘密以外のところから明らかになってしまっては、秘密保護法も意味を持ちません。これを防ぐにはどのようにすればよいでしょうか。この対策についてのヒントが、インド海軍の艦艇内に貼られていた、情報保全を啓発するポスターにありました。

インド海軍の情報保護啓発ポスター

海軍艦艇乗員の娘が「パパは長期航海に出てて、6月27日に帰ってくるの!」と電話で話している微笑ましい様子を描いたポスターですが、子供の下には「機微情報を知る必要のない人間と共有しない。それは不用意な開示かもしれない」と注意を促す文章があり、このポスターは乗員が子供に帰宅する日を教えてしまったため、艦艇がいつ作戦から戻るのかといった情報が、他人にも伝わっていく事への注意喚起だと分かります。このポスターにある「知る必要のない人間と情報を共有しない」は重要な事で、普段から周囲に伝える情報が、その人が本当に知る必要のあるものかを考えてから伝える事が秘密保全には重要です。これは、'''流れる情報量を減らす'''事で、秘密保護を行うアプローチと言えます。


制限による漏洩防止が難しいSNS時代

ところが、普段の自分の様子を伝えるSNSでは、情報量を減らすアプローチによる秘密保護は難しいものです。前述したように、ビッグデータによる解析が行われるようになった今、些細な情報でも他の情報と容易に紐付けが可能となり、そこから何らかの秘密に繋がるかもしれません。そして、自分の「つぶやき」に、それがどういう意味を持っていて、そこから推測できる秘密は何か? なんて考える人はほとんどいません。こうなると、SNS経由で秘密を推測されないようにするには、秘密取扱者のSNS利用を制限するか、匿名SNSのみにする必要もあるかもしれません。しかし、個人の活動でしかないSNS利用を制限するのは難しいですし、なにより「秘密」でもなんでもない情報を発信する事を止めさせるのは無理でしょう。

一般情報からの秘密の推測を防ぐには、流す情報の中に欺瞞情報を混ぜるアプローチが、古くから行われている手法であります。そして、公文書に虚偽情報を載せると問題になりますが、個人利用のSNSで自分の行動について嘘を載せても罪には問われません。秘密取扱者が個人SNSを利用する場合は、発信する情報に適度に嘘を混ぜておくことで、推測の精度を落とす事が出来ます。秘密取扱者に欺瞞情報の発信についての教育訓練を行う事で、秘密保護に役立てるしれません。もちろん、不自然な情報を検出するフィルタリング技術も存在するでしょうから、欺瞞情報を自然に見せるための手法の研究も必要になってくるでしょう。もしかしたら、この方法は既に行われているのかもしれませんが、自衛官と思しきSNSアカウントを複数観察していると、情報に「ムラ」が感じられる事があるので、現状は個人の情報意識による所が大きいのではないかと思います。組織としてSNS時代に則した欺瞞手法の研究と、秘密取扱者に対する教育を行う必要があると思われます。

もちろん、前述した情報アクセス制限情報流量制限による秘密保護アプローチも重要です。一つの手段で万全なものはあり得ませんから、重層的な対策によって、秘密保護を行うことが重要となります。秘密保護法は秘密へのアクセスを制限して、秘密自体が漏れる可能性を減少させるには有効なのですが、一般情報からの秘密の推測には効果がありませんので、その他の手段も用いて秘密を守る他ありません。秘密保護は法案が出来たから解決する問題ではなく、ここから始まる問題だと考えるべきでしょう。


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2013年12月3日火曜日

ニコ動にもデアリング来航動画をアップしました

12月1日の段階でニコ動にもデアリング来航の動画を上げる予定だったんですが、急用で遅れていました。ようやっとPCに触れる環境になったので、ニコ動にアップロード。



取り急ぎ、ご報告まで。

2013年12月1日日曜日

HMSデアリング来日

英国のジェームズ1世の国書が徳川家康に捧呈され、日本と英国の間に正式に国交が結ばれてから今年で400年目を迎えます。これを記念して、英国海軍の最新鋭艦である45型ミサイル駆逐艦”デアリング”が12月1日に東京港に来航し、晴海埠頭にて記念行事が行われました。


晴海埠頭に接岸する45型駆逐艦デアリング




2008年の”ケント”来航以来、英国海軍の艦艇が来日するのは5年ぶりとなります。今回のデアリング入港前には、日本側のホストシップ(相手を出迎えるホスト役の軍艦)で、自衛隊の最新鋭艦である、あきづき型護衛艦”てるづき”と親善訓練を行い、てるづきが先導する形で一緒に入港しました。


ホストシップのあきづき型護衛艦てるづき

最新鋭駆逐艦であるデアリングは、統合電気推進と呼ばれる先進的な推進機関を持っています。これはガスタービンで発電し、その電力でモーターを駆動させて航行する推進機関で、推進の為の電力と、艦内で使われる機器の電力の電源を共用・一元化することで電気利用の効率性を高め、これにより高い静粛性と緻密な操作制御を実現しています。搭載されるガスタービンも、あきづき型が搭載する”SM1C”(これも英国が開発したものです)よりも新しく、燃料消費の少ない”WR-21”を搭載しており、このガスタービンを搭載した船は45型駆逐艦以外にまだありません。


デアリングに搭載されているWR-21(ロールスロイス社パンフレットより)

エンジン開発に高い技術力を持つイギリスですが、今年に入って、日本との間で防衛装備品の共同開発やテロ情報の共有を行うための情報保護協定が調印されました。まずは防護服などの開発から初め、将来的には艦艇用エンジンの開発まで行うとされています。このような防衛装備品の技術情報やテロ情報の共有は、高い秘密性が求められているため、現在の国会で騒がれている秘密保護法案も、元々はこのような海外との防衛関連情報の共有の為に成立が急がれた背景があります。同様の情報保護協定は、アメリカとNATO、オーストラリアの間でも結ばれております。なお、韓国とも昨年に締結する予定でしたが、締結直前に韓国側から延期の申し入れがあり、以降進展がありません。

現在、防衛装備品の開発は、開発費の高騰によって、費用や技術を出し合う国際共同開発が世界的な潮流になっております。開発費の減少が続く日本でも、その波に遅れないように国際共同開発に取り組むため、武器輸出三原則の緩和や秘密保護法の制定などを行い、環境を整えている段階にあります。そういうことを踏まえて、今回のデアリング来航を見てみると、ただの親善目的の来航以外の、また違った面が見えるかもしれません。


【写真コーナー】

レインボーブリッジを通過するデアリング
前部アップ

艦橋上左右に1基ずつある光学系っぽい何か

艦首4.5インチ単装砲

雄々しいとしか言い様がない

自衛隊の暗号携帯はAndroidスマホ?

秘密保護法案成立を巡って、色々と騒がしい昨今ですが、秘密保護法の保護対象となる自衛隊暗号に関連する、ある情報が防衛省から公開されました。

陸海空の3自衛隊を束ねる組織である、統合幕僚監部が11月25日付けで公告した入札情報に「秘匿携帯電話プログラムの改修等」というのがあり、入札対象となる携帯端末の性能要求仕様が書いてありました。主な部分を抜粋してみましょう。

  1. OS:Android4.x以上
  2. CPU:1.7GHz以上、クアッドコア以上
  3. メモリ:RAM 2GB以上、ROM 32GB以上
  4. 外部メモリ:microSD、microSDHCに対応していること。
  5. 通信方式:GSM、3G(HSPA)、LTEに対応していること。
  6. GPS:GPS機能を有すること
  7. ディスプレイ:解像度720×1280ピクセル以上
  8. 専用線対応:専用線データ通信サービスが利用できること

Android4.x以上で1.7GHzのクアッドコアと、最新のフラッグシップ・モデルには届かないものの、液晶の解像度以外は高いスペックが要求されています。ハードウェアとしては、市場モデルに若干の改修と暗号化プログラムがインストールされたもので、3G通信はHSPAを使うので、キャリアはNTTドコモ・ソフトバンクのどちらかと思われますが、国とNTTグループとの関係から、恐らくドコモがキャリアでしょう。

様々な機能が要求されていますが、一方で情報漏洩対策で、制限も課せられています。管理装置からの遠隔操作により、携帯端末の通話やメールの送受信、Wi-FiやBluetoothといった無線機能等を制限できることを要求しています。もちろん、電話帳や履歴などのデータを遠隔消去することも要求に含まれています。

結構色々細かいところまで書かれているのですが、秘密保護法案が成立すると、このような情報も公開されなくなるのでしょうか?

もし、法案が正しい運用をされるのであるならば、このような情報は秘密の対象とならないと考えられます。と言うのも、既に自衛隊法によって、「我が国の防衛上特に秘匿することが必要」とされるものは防衛秘密に指定されており、「防衛の用に供する通信網の構成又は通信の方法」と「防衛の用に供する暗号」は防衛秘密に該当します。ですが、暗号化のキモである秘匿用規約(プロトコル)の仕様は公開されておりません。つまり、この程度の情報を公開したところで、暗号の健全性への脅威にはならないので、国家の安全には問題ないと判断されているのです。また、競争入札である以上は公示の必要があるため、今後もある程度詳細なスペックが公開されることでしょう。むしろ、これまで公開に問題がなかったこのような情報まで秘密にされた時は、秘密保護法が不健全な運用をされている可能性があります。

秘密保護法の理念としては、秘密により国家・国民の安全を担保することですが、秘密指定の乱用は逆効果に陥る事がしばしばあります。実際、アメリカでは同時多発テロ以降に爆発的に秘密指定を受ける情報が増加し、情報のチェック機能は失われ、有益な情報が組織間で共有されることもなく、却って秘密がアメリカの政策と国益に深刻なダメージを与えていることが、ワシントン・ポスト紙のチームによって明らかにされています(詳細はデイナ・プリースト「トップ・シークレット・アメリカ: 最高機密に覆われる国家」を参照)。

我々が注意すべきは、秘密保護法案がその理念から外れ、ただただ失敗を糊塗するための法案に成り下がってしまうことです。このような事態に陥らないためにも、これまで公開されてきた情報と法案施行後の公開情報にどのような違いがあるかを比較し、なにが秘密にされているかを明らかにし、その秘密指定の妥当性を検討する働きが重要になってくるでしょう。第三者機関を政府内に置くことを安部総理は考えているようですが、秘密を作る当人である政府よりも、国民の代表である議会による機関と、規則に基いて秘密情報をチェックする国の機関として設置するのが望ましい形になると思われます。


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アブグレイブ刑務所での虐待をスクープし、ピューリッツァー賞を受賞したワシントン・ポスト記者と、冷戦時代に電話帳などの公開情報のみで在欧米軍の核兵器貯蔵庫を明らかにした元米軍情報アナリストの共著。911以降のアメリカで、秘密情報の飛躍的増加と、情報機関の相次ぐ拡大により、アメリカの国益は損なわれていく様を克明に明らかにしています。必読。