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2014年8月13日水曜日

嫌韓系まとめブログの6割以上が、韓国系ブログサービスを利用し広告収入を得ていた件

以前からギクシャクしていた日韓関係ですが、最近の朝日新聞の慰安婦強制連行証言の検証報道により、より混沌とした情勢になっていますね。

慰安婦問題と言えば、先月もこんな報道がありました。国連人権規約委員会による、日本政府への勧告です。


【ジュネーブ時事】拷問禁止、表現の自由などに関する国連人権規約委員会は24日、日本政府に対し、ヘイトスピーチ(憎悪表現)など、人種や国籍差別を助長する街宣活動を禁じ、犯罪者を処罰するよう勧告した。また、旧日本軍の従軍慰安婦問題についても、「国家責任」を認めるよう明記した。



慰安婦問題と並んで、ヘイトスピーチなどの差別を助長する街宣活動の禁止を日本政府に求めています。ここでも念頭にあるのが、韓国・中国に対するものです。レイバーネットの報告に取り上げられた経緯が書かれていますので、ちょっと見てみましょう。


 ヘイトスピーチについて、イスラエルのシャニイ委員が取り上げた。「韓国人を殺せ」などと叫ぶデモが全国で350件も報告され、広範に起きていることが委員会の場でも確認された。:


シャニイ委員が指摘するように、近年の嫌韓国・中国のデモ活動が行われているのは事実です。今年1月に公安調査庁が出した「内外情勢の回顧と展望」においても、右派グループのヘイトスピーチについて触れています。


排外主義的主張を掲げ,インターネットで活動参加を呼び掛ける右派系グループは,領土・歴史認識問題など韓国や中国との諸問題を捉え,在日公館に対する抗議活動を実施したほか,「国交断絶」を訴える集会やデモ行進を行った。
特に,「反韓国」を掲げた活動では,東京や大阪のいわゆる「コリアンタウン」周辺で「韓国人を日本海にたたき込め」などと訴え,デモ行進を繰り返し実施した。こうした中,同グループの訴えを「ヘイトスピーチ」(憎悪表現)と非難する勢力(「対抗勢力」,下記のコラム参照)との間で小競り合いが頻発し,暴行事件も発生した(5〜6月,東京)



嫌韓デモ(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)

これら排外主義を掲げる右派グループについて、公安調査庁はインターネットで参加呼びかけが行われていると指摘しています。確かに、近年の嫌韓・嫌中ムードの高まりは、ネットの存在抜きには語れないでしょう。「韓国」、「中国」といった単語で検索をかけると、ネガティブな予測検索結果やサイトばかりが出てきます。ここで大きな役割を果たしているのが、いわゆる「まとめブログ」です。

まとめブログについては、ご存知の方も多いと思います。メディアの報道等を引用し、それについての反応を2ちゃんねる等のネット上から転載してまとめているブログの事です。まとめブログは著作権無視、恣意的な編集、扇動的な内容等、数多くの問題が指摘されていますが、有名どころになると月間アクセス数(PV)が1億を超えており、そのPVから莫大な広告収入を得ている運営者もいると言われています。

このように莫大なPVを持つまとめサイトの影響力は、少なからぬ物があると見るべきでしょう。そして、大手まとめブログでも、嫌韓ネタはよく出てきます。韓国のどーしようもないネタは、読者の溜飲を下げるコンテンツとして価値が認められているようで、嫌韓専門を謳うまとめブログもあるくらいです。海外から見て、ヘイトスピーチが隆盛していると思われても仕方ないかもしれません。

ところで、扇動的な内容で人を集めるまとめブログで利益を得ている人は誰でしょうか。もちろん、第一はブログ運営者がいますが、ブログサービスを提供しているサービスプロバイダやポータルサイト運営企業にも広告収入等が入ります。企業側がブログ運営者に対し、特別なアフィリエイトプログラムを提供する事もあるなど、両者は極めて密接な関係にあると言えるでしょう。言わば商業ヘイトスピーチの共犯です。

では、嫌韓ブログはどうでしょうか。ブログ運営者のみならず、企業も嫌韓・ヘイトスピーチで儲けている事になります。そこで、嫌韓ポータルサイト「嫌韓ちゃんねる」に登録されている66の嫌韓ブログを調査し、まとめサイト形式で扇動的な内容の44のブログについて、どの企業がブログサービスを提供しているのかを調べてみました。その結果が下の円グラフです。

嫌韓ブログが利用するブログサービス

嫌韓ブログ44のうち、3分の2近い28がlivedoorブログを利用していました。(一覧については、リンク参照)。ランキング変動と入れ替わりがあるため、現在のランキング内にいるブログと若干異なりますが、あっても大勢にほぼ影響はありません。

livedoorと言えば、堀江貴文氏が経営していた企業だと記憶している方も多いと思います。しかし、堀江氏の逮捕後にlivedoorは解体が進み、現在は企業としてのlivedoorは消滅しています。現在のlivedoorはブランドとして各種サービスで使われていますが、そのブランドを保持しているのは、あのLINEです。そう、韓国のインターネットサービス会社ネイバーの日本法人のLINEです。

韓国に対するヘイトスピーチを扇動するまとめブログの相当数が、韓国系企業のサービス上で嫌韓を煽り、その利益をブログ運営者と韓国系企業で分け合うという、大変グロテスクな光景が広がっています。嫌韓を煽る活動を韓国企業が支援しているんですから、煽っておいて世話になるブログ運営者にも、LINEにも恥という概念が存在しないようです。

ところが、やっぱり自覚しているブログ運営者もいるようで、韓国資本で嫌韓ブログやっている事を目立たないようにしたいブログ運営者もいるようです。先ほどの44の嫌韓ブログの中には、URLを独自ドメインやlivedoor以外のドメインを使う事で、URLに”livedoor”が含まれないようにしているブログも多く存在していました。

嫌韓ブログのlivedoorドメイン使用率

全体の4分の3がlivedoorだと一見して判らないURLを使っていました。HTMLソースを見たりすればlivedoorだと分かるんですが、そこまでする人もあまりいないでしょう。

何故、韓国系企業が自社サービスで自国へのヘイトスピーチ・誹謗中傷を行わせるばかりか、それにより利益まで得ているのでしょうか。もちろん、利益という面も大きいと思いますが、気になるネット記事がありました。


実は、2009年以降、韓国政府内では大統領直属の「国家ブランド委員会」という組織を設立して、例えば地図を「日本海」ではなく「東海」と世界地図を表記するようにロビイングするなどの、国際社会での韓国の相対的な地位向上を目指している。そしてアプリに気をとられないで、LINE社の日本国内での煽動的なサイト運営は結果として「韓国を侮辱する下品な日本人」のイメージを作り出している。そして韓国に対する日本のイメージを相対的におとしめるという意味では、韓国政府の意に沿ったものとなっている。
エコーニュース:通話アプリのLINE社 HPにない「ゴースト韓国系役員」が登記簿で発覚 親会社ネイバーのCEOは韓国政府・元司法官僚


LINEの親会社である韓国ネイバーの第2位株主は韓国政府系ファンドで、CEOは元地方裁判所判事。国家保安法により反国家活動が厳しく制限されている韓国では「親日的」なサイトですらアクセス遮断対象となるのに、韓国系企業で行われる韓国への侮辱は野放しという不自然さについて上記記事では指摘しています。その上で、ネット上のヘイトスピーチが日本の国際的地位を毀損している事実と、韓国系企業がネット上のヘイトスピーチを助長している活動は、韓国政府の意に沿った形になっている事を示唆しています。

もちろん、これは傍証からの憶測に過ぎず、確固たるものではありません。しかし、結果的にヘイトスピーチが日本の国際的地位を毀損し、その助長に韓国系企業が関わっているという構図は確かにあります。

しかしながら、ここで韓国けしからん、みたいな結論に導く事に意味は無いと思います。ヘイトスピーチを行っているのは紛れも無く日本人で、それは煽られたとしても自発的な行動である事に変わりありません。ここで韓国の意図通りに踊らされたと主張しても、韓国の掌でいいように踊らされたと泣き言を喚いているようなもので、実に情けなくありませんか? 理由がなんであれ、自分の行動は自分しか責任を持てません。

そして、そのLINEについても、先月16日に東京証券取引所への上場を申請し、今秋には上場すると言われています。しかし、上場企業になろうという会社が、こんな扇動的で法的にも危ういサービスばかり展開して、PV荒稼ぎして儲けてますと有価証券報告書に書くんでしょうか。

嫌韓ブログ運営者も、LINEも、自分らがしている事を考えて見た方がいいのでは。






※この記事が、同じくLINE系列のブロゴスに転載されるかどうか、wktkして見守っております。

※念のため書いておくけど、除外した22のブログの半数以上もlivedoorでした。まとめブログではないので、アメーバが若干目立つくらい。


【関連書籍】





2014年2月10日月曜日

韓国軍を嗤う新聞。ソースはネット

最近、やたら韓国・中国ネタが雑誌記事を賑わせていますが、新聞でも盛り上がりを見せているようです。特に最近の産経新聞は韓国軍ネタを多く取り上げてますが、「それって、何年か前に2chで話題になった話よね?」としか言い様がない、古いネタを引っ張ってくる安い紙面作りだったりします。週刊誌ならともかく、新聞社様がそれをやるのはどうよという気がしないでもないですが、今回の産経は韓国を嘲笑おうとして、とんでもない墓穴を掘ってしまったようです。


一方、圏内に入ってきた不審機にスクランブルをかける戦闘機はというと、最新の「F-15K」は機体の安定を保つピッチトリムコントローラーなどの部品不足で共食い整備が常態化しているうえ、運用面でも問題が山積。07年には有名な「マンホール撃墜事件」も起きている。
機体修理のため滑走路から整備場へ移動させていたF-15Kがマンホールに左主脚を突っ込み、左主翼が破損、大破したという事件だ。
誘導路から外れてわざわざマンホールの上を通過させる運用も問題だが、現地報道でこのマンホールの工事が手抜きだったことも判明。周囲の隙間をセメントで充填(じゅうてん)しなければならないのに、適当に板を張って上にセメントを塗っただけだったのだ。そこへ重さ約15トンの戦闘機が乗ったのだから、陥没するのも当然。普通の道路でも大問題だが、こんな手抜き工事を空軍基地で施工するのが韓国水準だ。



2007年に韓国空軍のF-15Kが基地内を移動中にマンホールに脚を突っ込んだ事故です。これは韓国軍のお粗末な状況を示す例としてよくネットで挙げられています。ところが、この記事中にある「事故を起こしたF-15」の写真ですが、これはどう見ても韓国軍が持っているF-15Kでありません。



この写真は米空軍が保有するF-15の脚がトラブった写真なのですが……。韓国を馬鹿にする記事で、まさかのアメリカを馬鹿にする記事。天下の産経新聞が、ネットで見つけた韓国話に付いてた写真を裏取りもせずに紙面に載せるほどお粗末だとも思えないので、実は韓国軍をバカにするつもりで米軍をコケにしたいという、岡田敏彦記者の高度な深謀遠慮が働いているのかもしれません。


韓国軍のF-15K戦闘機

さて、産経新聞の仰るとおり、韓国空軍が高価な戦闘機の脚をマンホールに突っ込ませたのは、実にお粗末な事故です。ただ、機体の損傷は軽微なレベルで、事故としての程度は重大なものではありません。ここで、ここ20年間に起きた、お粗末な原因による航空機の重大事故を振り返ってみましょう。

  • 1995年。訓練中、僚機のF-15を撃墜。全世界のF-15で、唯一の公式被撃墜記録。
  • 1996年。環太平洋合同演習(リムパック)中、標的を曳航していた米海軍のA-6曳航機を誤って撃墜。
  • 2007年。F-2支援戦闘機の配線を逆に挿したため、離陸直後に墜落、炎上。

いずれも死者が出なかったのが不幸中の幸いでしたが、機体は修復不可能なまでに破壊された重大事故です。問題はこれ、全て日本がやらかした重大事故なんですが……。

韓国の軽微な事故を嗤っていると、日本はもっと重大な事故を複数回起こしている事でブーメラン喰らいますよ? F-15が1972年に初飛行してから2014年の今日に至るまで、「世界唯一のF-15撃墜国(ただし味方の)」が日本だという事実の重大さを、少しは冷静になって考えてみる必要があるでしょう。


世界で唯一「撃墜」されたF-15。千葉のゲーセンに転がっている(提供:MASDF)

さて、ここまでコケにする調子で書いてきましたが、真の問題は無関係の写真を載せたことでも、実は日本の方が重大事故起こしている事でもありません。産経新聞は盛んに日本を「平和ボケ」とする論調の記事を出し、安全保障についての危機意識を国民に喚起しており、安全保障について一言ある新聞のはずです。

昨年末、我が国の安全保障政策の基本となる「国家安全保障戦略」が策定されました。この中で、アメリカとの関係強化に続き、韓国との軍事的協調関係を築くことが下記の通り強調されております。


隣国であり、地政学的にも我が国の安全保障にとって極めて重要な韓国と緊密に連携することは、北朝鮮の核・ミサイル問題への対応を始めとする地域の平和と安定にとって大きな意義がある。このため、未来志向で重層的な日韓関係を構築し、安全保障強力基盤の強化を図る。

このように、現状の日本の防衛政策は、韓国が味方か、最低でも敵対しない関係にある事が大前提になっています。しかし、現実には日韓関係は冷えきっており、首脳会談の見通しすら立っておらず、日本が韓国を味方であると一方的に決め付けている状況です。中国の影響力増大により、「韓国は味方」と言う前提が崩れるかもしれないと近年言われている中で、韓国軍を嘲笑する記事を日本の新聞社が書く事を「平和ボケ」と言わないのならば、何を平和ボケと言うのでしょうか。こちらが味方だと見做している国の軍隊に対し、軽微の事故をあげつらう産経新聞の姿勢はあまりに無節操です。

韓国をバカにするネタを出す一方で、日本唯一の韓流エンタメ新聞"韓Fun”を発刊し、好韓嫌韓双方から搾取してきた愛されてきた産経新聞社。今月一杯で韓Fun休刊を決定したことで、より一層嫌韓相手の商売に邁進されるんでしょうか。


2013年12月24日火曜日

南スーダンで進展している虐殺の危機

国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)に派遣されている自衛隊が、同じく派遣されている韓国軍の要請により、小銃弾1万発を韓国軍部隊に提供することになりました。


南スーダンのPKO活動に関連し、政府は、陸上自衛隊の銃弾1万発を、PKO協力法に基づき、国連を通じて韓国軍に提供する方針を決めました。
PKO協力法に基づき国連に武器が提供されるのは初めてで、政府は、緊急性が高いことから、いわゆる武器輸出三原則の例外措置として実施したとする官房長官談話を発表することにしています。


今回の措置は緊急性が強く、武器輸出三原則の対象外となるようです。韓国軍が弾薬提供を求めるまでに至った南スーダンで、どのような事態が進行しているのか、南スーダンの事情から現在の状況、韓国軍が提供を求めた背景について解説したいと思います。


南スーダン共和国の概要と内紛

南スーダン共和国は、2011年7月9日にスーダン共和国から分離独立した「世界で最も新しい国家」と言われ、国連を中心とした国際社会が協力して国造りを行っている最中です。日本も自衛隊の2012年1月から施設部隊を国連PKOに派遣し、インフラ整備に協力するなどの活動を行っております。

かつてイギリス植民地であったスーダンは、1956年にイギリスからスーダン共和国として独立しました。しかし、スーダン共和国は北部はアラブ系のイスラム教徒、南部はアフリカ系黒人の土着信仰・キリスト教徒といったように、人種・宗教の地域差が大きい国家で、アラブ系に占められていた政府と南部住民の間で対立していました。南北スーダンの対立は2度の内戦と和平を経て、2011年1月の住民投票により南部の独立が決定し、7月9日の独立に至ります。この時、南スーダンの政権を構成したのが、独立運動を主導したスーダン人民解放運動/軍(SPLM/A)でした。

南スーダンで見られる暴力の特色として、スーダン政府と南スーダン間の暴力に加え、南スーダン内部で住民同士でも苛烈な暴力が行われていた点にあります。

SPLA はディンカとヌエルと呼ばれる2つの民族が主流ですが、かつてスーダン政府は他の部族にSPLAと対立する民兵組織を結成させるなど、南スーダン内の民族分断対立を構造化させたため、現在でも南スーダン内にはSPLAに反発する部族がいます。また、当のSPLAも、ディンカ人が立ち上げた当初は、ヌエル人のアニャニャIIと呼ばれる反政府組織と敵対していた過去があります。SPLAは幾度もディンカ人の主流派(トリット派)とヌエル人の反主流派(ナシル派)の離散集合を繰り返していましたが、2002年1月にナシル派はSPLAに復帰し、南スーダン独立に至るまでは協力関係が続いていました。しかし、2013年7月に、ナシル派のトップであるマシャール副大統領が解任され、12月14日にはマシャール前副大統領によるクーデター未遂事件が発生に至ります。現在の南スーダンの状況は、このように複雑な民族間対立を背景にしたSPLAの内紛と言えそうです。



韓国軍の事情

さて、韓国軍が自衛隊に弾薬を求めてきた背景としては、韓国軍が活動している東部ジョングレイ州の州都ボルに反乱軍部隊1000名が接近しており、防衛体制を強化する必要に迫られた事と、日本と韓国が共に北大西洋条約機構(NATO)で標準化された5.56x45mm NATO弾と呼ばれる弾薬を使用している点にあります。UNMISSに兵力を派遣した国は、NATO弾を採用していない国が多く、大量に融通できる部隊が自衛隊しかなかった為とされます。なお、少数名展開中の米軍からも韓国軍は少量の弾薬の提供を受けています。

UNMISS参加部隊と展開地域(防衛省資料より

今回の小銃弾の提供は、国連を通じて行われます。これは、PKO協力法案で物資提供を国連組織に認めていますが、個別の国家に対しては認めていないためです。実は2012年に自衛隊と韓国軍の間で物資を相互に提供できる、物品役務相互提供協定(ACSA)を締結する予定でしたが、締結直前になって当時の李明博政権から延期の申し入れがあり、以後進展しておりません。ACSAでは弾薬を含む武器の提供は認められていませんが、今回のPKO協力法に基づく提供もこれまでの政府答弁で武器を含まないとしてきたため、仮に日韓ACSAが結ばれていたら、日韓で直にやりとりしていた可能性もあります。今回の事態を受けて、日韓ACSAに進展が出てくるかもしてません。

提供される小銃弾が1万発と聞いて「そんなに大量に!」と驚かれる方も多いと思いますが、派兵されている韓国軍兵士273名に1万発を均等に分けると、1人あたり40発以下で一般的な小銃の30発入り弾倉2個分にも満たないものです。全員が連射すると、数秒で撃ち尽くしてしまう量です。それほどの量でも弾薬を集めている韓国軍の状況は、かなり切迫しているのではないかと考えられます。元々、政府軍であった反乱軍はかなりの重装備を持っているものと思われますが、対するPKO部隊は重装備は限られています。現に避難民を保護していたインド軍が攻撃を受け、死者も出ているなど予断を許しません。



スレブレニッツァの虐殺に似た状況

軽武装の国連PKO部隊に重武装の武装勢力が迫る展開は、1995年のスレブレニツァの虐殺を彷彿とさせます。ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争中、オランダ軍を中心とする軽武装の国連PKO部隊が展開してたスレブレニツァで、8000名以上が虐殺されたスレブレニツァの虐殺は戦後ヨーロッパで最大の虐殺事件と呼ばれ、大きな衝撃を与えました。軽武装で人員、物資共に足りていなかった国連軍部隊は、重武装の武装勢力を前にして抑止力足りえず、虐殺を制止することが出来なかった事も問題になりました。今回、南スーダンで国連キャンプには難民が集まっているとされ、国連PKO部隊はその保護を行っており、状況はかつてのスレブレニツァをなぞっています。事態の進展によっては、比較的安定している首都ジュバに展開している自衛隊にも脅威が及ぶ可能性があります。

スレブレニッツァの虐殺被害者の墓地(写真:MichaelBueker)

今回の提供は、法的には問題が残るものの、その緊急性・重大性を鑑みれば妥当な判断と思います。韓国は25日には装備を空輸するとしており、それまで事態が急激に悪化しなければ、ある程度の抑止力として期待できるかもしれません。しかし、事態が好転しない限り、国連PKOと反乱部隊の衝突、あるいは住民虐殺の恐れは燻り続けるでしょう。

自衛隊、韓国軍を始めとする派遣国要員、そしてなにより南スーダンの人々のため、事態の一刻も早い収拾を望みます。



【参考】

大林一広「内戦後の暴力と平和構築  ―南(部)スーダンの予備的分析と研究課題の模索―」

栗本英世「「上からの平和」と「下からの平和」―スーダン内戦と平和構築」

また、スレブレニッツァの虐殺に関しては、長有紀枝「スレブレニツァ―あるジェノサイドをめぐる考察」
が多分、日本語における唯一の専門書籍。

また、Wikipediaの「スレブレニッツァの虐殺」の項目は、無料で読めるにしては信じられないくらいクオリティが高いので必読。


2013年12月19日木曜日

中韓を嘲笑う前に、我が身を振り返ろうよ

少し前の話になるが、ある人(A氏)と何気なく政治について会話をしていた時、相手からこんな話題が出た。


「ところで、○○(ある野党政治家)って、在日らしいですね」


あまりに唐突で驚いたが、聞けばインターネットでその政治家の名前を検索すれば、在日外国人だという結果が出てきたからだという。確かに、その政治家の名前を検索エンジンにかければ、予測検索で「在日」「帰化」と言ったワードがすぐにサジェストされる。しかし、その政治家が在日外国人だという信用に足る記述はついぞ見たことがない。ネット上では他にも、左派・リベラルに近い政治家や文化人が在日外国人だとする書き込みも多く見られるが、彼らがそうだという話も同様に根拠が薄い。その話の根拠についてA氏に聞くと、ただネットに書いてあったから、というだけで、自分で来歴や家族関係を調べた訳ではないという。A氏は他にも、韓国や中国についての、ネガティブな話題を私に振って来た。

ここまで読んで、A氏は思慮も経験も足りない、ネット右翼被れの若者だと思われた方も多いかもしれない。ところが、A氏は初老と呼べる年齢で、海外経験も豊富で多くの外資系大手企業で勤務した経験を持つ取締役社長であり、左派・リベラルの文化人が(侮蔑を込めて)主張する「低所得・低学歴の若者」というネット右翼像からかけ離れていた人物であった。経営について深い洞察力を有しているはずのA氏が、ネット上の根も葉もない噂を何の疑問もなく他人に開陳した事に驚いたが、ある特定集団についてのネガティブな噂を、幅広い層の日本人が受容し、好んで「消費」されているのではないか、とこれ以後危機感を持つようになった。


中韓叩き記事が売れる今、戦争煽り記事が売れる戦前

現代中国に詳しいノンフィクション作家の安田峰俊氏が、最近の週刊誌事情について、こんなことをツイートされていた。

最近、複数の週刊誌関係の方に共通して出た話。「中韓叩き記事、正直僕らも大してやりたくないけど毎週のアンケートの人気高くて外せない。ここ一年ほど特に顕著」「『中韓はこんなに劣っている』か『日本は実はこんなにすごい』が受ける。毎回似た中身でも」。フリーの中国ライターには有難いけれどさ

2chのまとめサイトもそうだけど、情報の受け手がみずから望んで偏った情報を求めているんだもの。売る側はそういう人にお金落としてもらうために、偏ってるのを承知で煽り情報を売る。うーむ


そしてITか紙媒体かというギャップも意外とない。家でPCに張り付いてるアラサーニートも定年前後の不安におびえるおっちゃんも、「あまり考えずに気持ちよく消費する娯楽情報」についてはみんな(=少なくともビジネスが成り立つ規模の人数)欲するところは大して変わっちゃいねえとも言えるのよな


最近の週刊誌は、中国・韓国を叩く記事ばかり売れて、週刊誌側もそれを分かって中韓叩き記事ばかりを載せており、その傾向がこの1年が特に顕著だという。確かに、中国・韓国との外交問題による反発感情を受けてか、最近はその手の記事が誌面に載るのを多く見るし、書店に行けば中韓叩きの本と、日本がいかに素晴らしいか・他国から賞賛されているかという内容の本ばかりが平積みされているのが目立つ。相手を貶し、自分(が属する集団)を称える本が売れる傾向は、はっきり言えば自慰的で気味が悪い。

このように特定の記事ばかり売れるので、マスメディアもそれに追随した例は過去にもあった。先日の池上彰氏の戦争番組でも触れられていたが、第二次世界大戦前のマスコミは威勢のよい好戦的な記事が売れるからと、好戦的な戦争を煽る記事ばかり書いて国民を煽り続け、マスコミは未曾有の好況に湧いていた。当時のマスコミについて、社会学者で京都大学大学院の佐藤卓己准教授によれば以下の様な状況であった。

雑誌が売れて売れて仕方ない、しかも統制のおかげで返品がまったく無い、つまり出版社にとっては儲かって笑いが止まらないという状況でした。一方、新聞界でも、読売新聞の発行部数が100万に到達した時期であり、国民が戦況報道を求めて新聞に飛びついた時代です。メディア経営にしては好景気のバブル時代だったということです。



戦前の主要雑誌年間発行部数推移(佐藤卓己「教育将校・鈴木庫三の軌跡」より引用)

戦争を煽り続けた報道でバブルを味わったマスコミ人は敗戦後、軍にその責任をおっかぶせ、自分たちは言論統制の被害者であると装ったのだ。

また、現代中国の話ではあるが、ジャーナリストの福島香織氏のツイートによれば、中国でも日本をネタにした好戦的な記事はウケているらしい。
中国人が戦争をどう思っているかということについて、彼の意見が多数派を代表するものではありませんが、環球時報の1面に対日軍事強硬記事とかのると、売り上げがぐんと伸びるのは事実です。環球時報の編集者が言っとったよ。環球時報は低層社会に人気のある安価な新聞。


環球時報の話のみで、中国のメディアが全てが対日強硬論で売れていると言うつもりはない。しかし、日本の週刊誌に溢れる日中軍事衝突のシミュレーション記事を見て、これと同じことが中国でも起きていたら、と考えるのはあまり気分のいいことではない。現代史家の秦郁彦氏によれば、第二次世界大戦前の長い期間、日本とアメリカ双方のメディアでは、日米もし戦えばといった日米戦シミュレーション記事が賑わっていたとされる。秦氏はそれらの報道が当時広まりつつあった地政学概念と結びつき、日米必戦の雰囲気が醸成されたのではないかと指摘している。この指摘と、かつての日本のマスコミの大衆迎合の事実を合わせて考えると、それが意味するものは重い。



心地よい隣人のネガティブ情報

しかしながら、最近の中韓叩き記事はいささか事情が異なる。戦前はマスコミが記事需要を判断して自発的に煽ったものだが、近年の中韓叩きはネットが先導し、マスコミがそれを追随する形となっている。「在日特権を許さない市民の会」の会長も、元は韓国叩きサイトの管理人で、出版社から著書が刊行されるようになったのは最近のことである。

韓国叩きサイトが目立つようになったのは、2002年の日韓ワールドカップ前後からであるが、今や10年以上の蓄積によって、検索エンジンで「韓国」を検索すると、ネガティブ情報ばかり表示されるまでになった。安田氏も指摘しているように、「あまり考えずに気持ちよく消費する娯楽情報」として、韓国のネガティブ情報はネット上でその地位を確固たるものにしている。近年は尖閣問題・反日デモによる反中国感情も加わり、中国のネガティブ情報も消費されるようになったと見られる。仲間内でする他人の悪口は心地よいもので、その悪口の真偽も問われる事は無い。冒頭のA氏も、なんとなくネットで出会った情報をよく考えずに気持よく消費し、私との話題にも心地よい話題として取り上げようとしていたのではないか。



全国紙も中韓を侮る姿勢

もっとも、ここまであげてきた例は個人の会話だったり、ゴシップネタ・叩きネタは日常茶飯事の週刊誌の話だ。ところが、最近は中韓叩きが全国紙にまで見られるようにってきている。その最たる例が産経新聞だ。

安倍政権を「軍国主義の復活」などと非難する韓国だが、軍事費が国家予算の10%に上るなど自らは軍備増強にまっしぐらだ。ただその中身は何ともお寒い。新型の国産戦車「K2」は開発開始から18年を経てもエンジンが作れず、部隊配備は延期に次ぐ延期。水陸両用の装甲車は川で沈没するなど技術不足による欠陥品ばかりで、首都防衛の機関砲がパクリのコピー品で使い物にならないことも明らかになった。大阪では町工場が人工衛星を作る技術を持つが、“お隣り”は国家の威信をかけた軍備もパクリや偽造、ポンコツのオンパレードだ。(岡田敏彦)


かつての産経新聞と言えば、冷戦期は日本の全国紙きっての韓国擁護論陣を張っており、韓国の軍事政権に批判的でともすれば北朝鮮擁護も見られた他の全国紙と異なり、一貫して韓国擁護の“親韓”新聞だったが、今は韓国叩きの先頭を走っている。パクリ、ポンコツのオンパレードと扇情的な本文に加え、見出しには「無謀ウリジナル、放熱できぬ戦車」とある。この”ウリジナル”という言葉は、韓国がなんでもオリジナルを主張するのを揶揄したネットスラングであるが、ネットスラングを説明無しで載せており、明らかにネットを意識した記事となっている。

自衛隊に納入した機関銃5,000丁以上のデータを、メーカーの住友重機械工業が1970年代から改ざんしていた事が発覚したばかりなのに、こういう記事載せる産経新聞はブーメランが怖くないのかと心配になるが、この記事の問題はこれ以外にある。韓国が装備品をパクリ・剽窃しているのは事実で、それが多くの問題を生んでいるのも事実だ。だが、かつて韓国の電気製品をパクリだと陰口叩いていた日本の電機メーカーのうち、サムスン電子に対抗できるメーカーは1社も残っているだろうか? このことは、あらゆる分野に言える。我々が嘲笑っているうちに、抜かれつつあるのは、国家の存続を左右する国防の分野も例外ではない。



防衛研究開発費で既に中韓に抜かれている日本

中国もロシア製兵器のコピーを臆面もなく行い、中露間で問題となったが、それでもまた新たにロシアから兵器を購入している。中韓は共に装備の国産化に関しては手段を問わないマキャベリ的姿勢であり、他国製兵器のリバースエンジニアリングから、情報活動による他国からの設計情報入手を含めた広範な活動を行っており、それを国産兵器開発にフィードバックしている。その結果、中国は戦闘機、艦船、戦車等の主力装備の開発能力を獲得し、韓国は武器輸出額をわずか5年で10倍にまで拡大させた。パクリを含めた、彼らの手段を問わない努力を上から目線で嗤うのは正しい姿勢だろうか。

パクリや情報活動なんて卑怯な手段で得た技術は身につかない、と反論する人もいるかもしれない。だが、自力の軍事技術の研究開発(R&D)においてすら、中韓は日本を越えようとしている。下のグラフは、各国の国防研究開発費の推移を表すものだ。2007年の段階で、日本は韓国に抜かれている。韓国は今後もR&D費を増額する方針であり、右肩下がりの日本との差はますます開くだろう。また、中国は国防予算とR&D費は別立ての為、その正確な額は推測になるが、既に相当前には日本を抜いていると見られ、現在は日本の遥か上の水準に達していると思われる。


各国の国防研究開発費の推移(防衛省技術研究本部資料より



民間におけるR&D費は、企業の今後の成長性・競争力の指標となっているが、それと同じことが国防にも言える。たゆまぬ技術開発と研究により、軍事技術をより洗練・発展させる事は、自国の戦力を向上する事に繋がる。年々、R&D費が減少している日本を尻目に、R&D費を増額させている中韓。日本の軍事技術の優位性は過去の蓄積で持っている状況であり、このままでは早晩、中韓に抜かれ、優位性は失われる事になるだろう。いつか、見下して嗤っていられた時代を懐かしむ日が来るのかもしれない。



隣国を嗤う前に我が身を見直そう

冒頭のA氏のような人が、日本企業の経営者で一般的なのかは分からない。だが、A氏が中韓を嘲笑する話を私に振って来たのは、他の経営者との会話で通じるネタだったからとしたら、それは憂慮すべき事態ではないか。「あまり考えずに気持ちよく消費する娯楽情報」に曝され続け、偏った情報ばかりを摂り続けて、正常な判断が出来るのだろうか。全国紙ですら中韓を嘲笑する記事を出すようになった今、多くの購読者が同じ認識を持ち、実態を知ろうともしないで侮り続けていたら、この先どうなるのだろうか。少なくとも、良い結果は生みそうにない。

日本が衰退の方向に向かっているのは事実である。こんな状況にありながら、他国を見下し、いかに日本が優れているかの本が売れている現状は、まさに現実逃避と言えるだろう。だが、その先に待ちかまえているのは破滅でしかない。まず、目の前の問題を解決し、競争者の実力を把握して、追い抜かれない努力をする方が良い未来に繋がるのではないでしょうか。


※中国のR&D費について、「10年前には日本を抜いている」としましたが、正しくはもっと以前から抜かれていましたので、表現を訂正いたしました。


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2013年12月18日水曜日

韓国が鍵となる、新しい日本の防衛計画

17日に、「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱について」(防衛大綱)が閣議決定されました。防衛大綱とは、概ね10年ほどを想定した中長期的な安全保障政策の指針の事で、日本を取り巻く安全保障環境に変化が無ければ10年以上経っても改訂されない事もありましたが、今回の改訂は平成23年度に防衛大綱が定められたばかりでしたので、わずか3年という短期間での改訂になります。防衛大綱の閣議決定と同時に、今後5年間の防衛力整備、つまりどれだけ装備を調達して人員を割り当てるかを定めた、中期防衛力整備計画も明らかになりました。

さて、これら中長期の安全保障政策と防衛力の整備計画では、陸上自衛隊はこれまで地域ごとで独立した指揮権を持っていた方面隊の上に陸上総隊を新設して、陸上総隊に指揮を一元化する組織改編を行い、機動力の高いMV-22オスプレイや機動戦闘車、水陸両用車両を新たに配備します。水陸両用団と呼ばれる島嶼部戦闘に特化した部隊も新設されます。海上自衛隊や航空自衛隊でも同様に、戦闘機部隊の増勢や、多用途性とコンパクトさを両立させた新たなタイプの護衛艦の導入、警戒監視能力の強化などが謳われています。


今後5年で99両が新たに配備される機動戦闘車今後5年で99両が新たに配備される機動戦闘車

一方、これらの新たな装備の配備や増強の反面、陸上自衛隊の主力装備である戦車・火砲を大幅削減し、戦車の配備は北海道、九州のみとし、これまで各師団に配備されていた火砲も方面隊直轄とするなどの方針が明らかになっています。

このような新しい防衛大綱は「南西シフト」であると各種報道は伝えています。冷戦期にソ連を仮想敵として北海道に重点配備していた自衛隊を、中国を睨んで九州・沖縄等の島嶼部の防衛に注力すべく、日本の南西部に防衛力の再配置するというものです。

近年の中国の軍事力整備の方向性は、圧倒的な経済力を背景にした正面装備の充実を図っています。2013年に中国が建造した水上戦闘艦の数は、自衛隊がこの10年間に建造した護衛艦の合計を既に上回っており、急ピッチで拡大し続けています。また、中国海軍は空軍とは別に海軍航空隊を保有しており、現在の増強ペースを見れば、あと数年で海軍航空隊だけで航空自衛隊より強力な戦力になると見られます。中国海軍は陸上部隊を運搬し、上陸させる揚陸艦の整備も今後進めると見られ、かなりの水陸両用戦力もいずれ持つ事になるでしょう。

これら中国の軍事力の拡大に、日本一国のみで対抗するのは不可能で、日米同盟の強化や周辺諸国との軍事的連携、国際的な協調による紛争防止等、多国間の協力が必要となります。新しい防衛大綱でも、アジア太平洋地域の国々との連携や、国際社会との協力を推進することが謳われています。

ところが、新しい防衛大綱では、日本が今後連携推進を目指すとされた国の中に、外交的に険悪な状況にある国があります。韓国です。


複雑に入り混じる日中韓の防空識別圏

新しい防衛大綱では以下のように韓国との関係強化を謳っています。


 我が国と共に北東アジアにおける米国のプレゼンスを支える立場にある韓国との緊密な連携を推進し、情報保護協定や物品役務相互提供協定(ACSA)の締結等、今後の連携の基盤の確立に努める。



ところが、ここで謳われている情報保護協定の締結は、本来は昨年に締結が予定されていたものですが、締結直前になって韓国から延期の申し入れがあり、それ以降は進捗が見られません。また、そもそも今回の新しい防衛大綱策定の基本概念である国家安全保障戦略について、韓国外務省は竹島問題が明記されていることを遺憾とし、削除を要求するなど抗議しています。


韓国外務省の報道官は17日の記者会見で、日本政府が閣議決定した国家安全保障戦略に竹島の領有権問題を外交努力で解決すると明記したことについて「極めて遺憾」と表明、「日本政府は不当な主張を即時に中断すべきだ」と訴えた。



韓国との協力関係構築を目指すとする日本の新たな安全保障政策ですが、当の韓国が様々な問題から乗り気ではありません。その背景には領土問題や反日感情と言ったものが挙げられていますが、一番大きな問題は中国への配慮にあるでしょう。国内市場が小さい韓国経済は、貿易依存度が極端に高く、韓国最大の貿易相手が中国であることからも、中国の韓国に対する経済的影響力は計り知れないものがあります。また、北朝鮮と関係の深い中国と良好な関係を築くことで、北朝鮮の暴発を抑える事も期待されており、韓国としては中国の機嫌を損ねる日米との連携強化を表立ってできない状況にあります。

日本、ひいてはアメリカにとって、韓国を日米側に引き留める事が重要になってきます。先日、訪韓したバイデン米副大統領は朴槿恵韓大統領との会見で、日本との関係改善を促した上、「米国の反対に賭ける(betting)のは良くない」と発言し、中国と関係を深める韓国に釘を差したと、韓国国内では大きく取り上げられました。日本も韓国が「反対側に賭ける」のを阻止する為、米国と強調して、日米側に留める努力を強める必要があるでしょう。

歴史を振り返れば、日清・日露の両戦争は、日本が大陸勢力からの緩衝地域として朝鮮半島を日本側勢力に留めようとした為に起きています。更に遡れば663年に白村江の戦いで唐・新羅連合軍に日本軍が敗れ、朝鮮半島における日本側勢力が一掃された後、日本が九州に防衛用の城を多数築いて防人を置き、首都を海沿いの難波宮から内陸の近江宮に移すなどの防衛力強化に努めた事が知られていますが、これは朝鮮半島における緩衝地帯が無くなった事で、日本本土が最前線になった為に防衛力強化が必要となった為と言えます。今、朝鮮半島に緩衝地帯を無くすと、1300年前を繰り返す事になりますが、これは避けねばなりません。

前述した通り、新しい防衛大綱と中期防衛力整備計画では陸上装備が大幅に削減されます。これは我が国が島国であり、直接的な陸上戦力の侵攻を海が阻んでいる為に可能になったものです。ですが、韓国が「反対側」に賭けた場合、日本は大陸勢力と対馬海峡という狭い海峡を挟んで対峙する事になり、大幅に防衛への負担が高まります。

防衛大綱で示された他国との連携では、アメリカ、オーストラリア、ASEAN諸国、インドといった国々との連携も謳われ、それらの国々とは成果も出ておりますが、韓国だけはうまくいっていません。防衛大綱で示された安全保障環境の実現の、最大の障壁にして鍵が、韓国と言えるでしょう。韓国では中国との関係は良好と考えられていましたが、中国が防空識別圏を韓国が管理権を主張する蘇岩礁上空に設定した事への反発や、張成沢氏処刑による中国の北朝鮮への影響力についての疑念などで、メディアが日本との関係改善を主張し始めるなどの兆しを見せています。ここでどう韓国側をこちらに取り込むかが、日本外交の見せ所になるでしょう。


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2013年11月30日土曜日

日中韓台三カ国+1の防空識別圏と係争地域をGoogle Maps上にプロットしてみた

焼き直し続きで申し訳ないですが、「Google Mapsで見る日中の防空識別圏」に更に追加して、韓国の防空識別圏(KADIZ)を見れるようにしました。


より大きな地図で 日中の防空識別圏 を表示

KADIZのデータを探すのに苦労しましたが、韓国政府のAeronautical Information Serviceに座標がありましたので、それを使いました。

これで、日中韓3カ国の空の具合が分かるようになるかもだ。特に、日本の防衛省の図資料とかだと、微妙に抑え気味だった範囲がくっきりわかり、KADIZと元々重なる部分もあったことが分かります。

※12/1,00:20、@pelicanmemo氏からの依頼により、台湾の防空識別圏も追加しました。初めて知ったけど、大陸の奥まで防空識別圏なのね……。

※さらに追記!。台湾のADIZは本当にこれなのか、ソースを再度確認中です!

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2013年9月18日水曜日

「イプシロン軍事転用」報道のロジックの過誤

イチャモンのロジック

2回の打ち上げ延期があった新型ロケット”イプシロン”ですが、9月14日に打ち上げに成功し、搭載されていた宇宙望遠鏡も予定の軌道に乗りました。いくつかの教訓を残しつつ、打ち上げミッションとしても成功という、結果的にかなり恵まれた初回打ち上げだったと思います。

イプシロンの打ち上げ(JAXAデジタルアーカイブスより)

イプシロンは従来のM-Vロケットより低コストであること、運用面での手間を大幅に削減した事が特徴とされています。M-Vと比べ、打ち上 げコストは半分(今後の目標は3分の1)、射場にロケットを設置してから発射までにかかる日数は42日から7日に短縮し、管制もパソコン数台で行うなど、 M-Vからコスト・運用面で飛躍的に改善がなされた事が分かります。
ところが、この運用面での進歩について、こんな報道が中国、韓国でされてます。


ロケットとミサイルは技術的にさほど差はない。一般的に、宇宙飛行 体に人工衛星を搭載すれば「ロケット」、弾頭を搭載すれば「ミサイル」と呼ぶ。韓国の「羅老号」のように、液体燃料を使用するロケットは燃料の注入に長時 間を要するのに対し、固体燃料ロケットは打ち上げの準備が容易で、燃料を長期間保管することもできるため、軍事用のミサイルに転用する上ではるかに有利 だ。日本は2006年9月にM5の最後の打ち上げを行って以来、約7年ぶりに固体燃料ロケットを再び打ち上げたことになる。
打ち上げ成功「イプシロン」はICBM転用可能」 | 朝鮮日報
固体燃料ロケット技術は大陸間弾道ミサイル(ICBM)に使用される技術と基本的に同じだ。このため固体ロケット打ち上げの経済性を高めたイプシロンの開発 は安保・軍事戦略的にも意味が大きいと分析されている。 朝日新聞は「搭載物さえ変えればイプシロンはミサイルに速やかに転用可能」とし「韓国など周辺国はイプシロン打ち上げの背景に日本の右傾化があると懸念し ている」と報じた。また「日本は1969年の国会決議などを根拠に宇宙開発を平和的な目的にのみ限定してきたが、08年に防衛に活用できる宇宙基本法を制定した」とし「今回の打ち上げはこの法に基づく最初の固体ロケット打ち上げ」と伝えた。
日本、固体燃料ロケット「イプシロン」打ち上げ成功…ICBM技術確保 | 中央日報
打ち上げが延期されていた日本の小型ロケット「イプシロン」が14日午後、打ち上げに成功した。中国メディア・華商網は15日、「大陸間弾道ミサイル技術につながる」とする専門家の意見を伝えた。
日本の「イプシロン」打ち上げ、ミサイル開発だ=中国メディア [サーチナ]

中韓の報道でよく見られるイプシロン軍事転用論の根拠としては、イプシロンが即応性の高い固体燃料ロケットであることがその核心にあるようですが、これはイチャモンに近い話です。そもそもの話、今現在も韓国に向けられている北朝鮮のミサイルの多くは液体燃料式で、例えばノドンは1時間で燃料注入可能で即応性が高いものです。その北朝鮮のミサイルの即応性を脅威として、韓国は射程300km又は500kmの玄武-2短距離弾道ミサイルを開発したのですから、燃料が液体か固体か、ということは関係無いと言えます。なお、玄武-2は固体燃料ミサイルです。

しかしながら、ロケットとミサイルに技術的共通点が大きいのは事実です。冷戦時代の米ソの宇宙開発競争は、同時に弾道ミサイル開発競争ともリンクしていました。ですが、中央日報が記事で引用している朝日新聞の「固体ロケットは、ICBMと共通の技術が使われ、積み荷を換えればミサイルに早変わりする」 という報道は暴論です。例えば、ブルドーザーと戦車は技術的共通点が多くあり、ブルドーザーメーカーが戦車を作っている事も多々ありますが、「ブルドーザーに大砲を積めば戦車になる」と言うのは暴論の極みでしょう。このように、「ミサイルと共通する技術がある」ことと、「その技術でミサイルが作れる」ことは、全く別の問題です。従来より短縮されたと言っても、射場に設置してから発射に7日もかかる”ミサイル”に軍事的実用性があると考えているのでしょうか。イプシロンを巡る中韓メディアのイチャモンは、この点を意識的・無意識的に混同しています。

ところが、こんな馬鹿げたロジックを誰であろう日本の政府・マスコミもこぞって使っています。近年、よくメディアで聞かれる「人工衛星と称する事実上の弾道ミサイル」という言葉です。



日本政府の崩壊したロジック

北朝鮮が2012年12月に打ち上げた飛翔体についても、日本は一貫して「人工衛星と称する事実上の弾道ミサイル」と呼んできました。つまり、「北朝鮮は人工衛星打ち上げロケットだと言っているけど、あれはミサイルだ」と主張していた訳です。あれ? どっかの国が日本のロケット打ち上げにつけるイチャモンに似ているぞ?

しかし、飛翔体が太陽同期軌道に衛星と見られる物体を投入したことが確認され、北朝鮮の主張通りに人工衛星打ち上げが事実と証明されると、北朝鮮を非難していた日本のロジックが崩れてしまいました。「人工衛星が衛星軌道に乗ったけど、あれは事実上の弾道ミサイル」になってしまうのは、ロジックの建て方としてはいかにもマズイと思います。

ここで念を入れて書いておきますが、私は北朝鮮を擁護している訳ではありません。北朝鮮は国連安保理決議で弾道ミサイル関連技術に繋がるロケットの打ち上げが禁止されており、ロケットに積んでるのが衛星であっても明白な安保理決議違反です。日本は打ち上げがロケットかミサイルかに関わらず、最初から「打ち上げたら国連安保理決議違反」と主張すればよかったのに、自ら破綻するロジックを選んでしまったのです。2012年12月の発射が人工衛星の打ち上げだと明らかになっても、未だに「人工衛星と称する事実上の弾道ミサイル」という言葉は使われていて、日本政府はこの言葉を変えるつもりはないようです。また人工衛星打ち上げられても使うんでしょうか、この言葉。



国家の信用が国際社会の反応を分ける

先ほども述べましたが、ロケットとミサイルに技術的共通点が多いのは事実です。しかし、同じロケット打ち上げであっても、日本の打ち上げは国際社会からは何も言われないのに対し、北朝鮮が打ち上げると大量破壊兵器 開発だ、国連決議違反だと国際社会から抗議を受けます。この違いは北朝鮮が核やミサイル等の大量破壊兵器開発について、過去に国際的取り決めを破り、違反 を繰り返していたため、北朝鮮に対する国際社会の信用が皆無な点から来ています。北朝鮮のロケット開発は、大量破壊兵器開発を意図したものであると国際社会から見做されており、その為にロケット発射も弾道ミサイル関連技術だとして安保理決議で禁止されているのです。

国際社会から信用を失っている北朝鮮に対し、幸いなことに日本は信用に恵まれ、ロケット開発にあたっても、直ちに大量破壊兵器開発に繋がらないと国際社会は認知しています。警官が持っている拳銃と全裸中年男性が持つ出刃包丁、どちらも凶器であることには変わりありませんが、どちらが危険であるかは明白でしょう。日本政府は北朝鮮の飛翔体発射を非難するにしろ、日本の宇宙開発の正当性を主張するにしろ、どちらも矛盾の無いロジックを用意し、それを世界に説明することで、信頼をより強固にする必要があるかと思います。既に一度ロジックが崩れたのは痛いですが、このまま「人工衛星と称する事実上の弾道ミサイル」を続けるのもよろしくないでしょう。

なお、イチャモンつけてきた当の韓国ですが、ロケット開発についての信用が特にアメリカからありません。韓国の宇宙開発の始まりである盧泰 愚政権時の人工衛星打ち上げ計画公表の際、アメリカは韓国へのミサイル部品の輸出を一時取り消しています。また、韓米ミサイル覚書と呼ばれる2国間協定により、韓国の弾道ミサイル開発は大きな制約を受けていますが、この協定を韓国は度々破っており、アメリカからその度に抗議を受けています。この他にも玄武-2の開発にあたり、ロシアから諜報活動で入手した技術情報を基にしたとされており、なかなか手癖がよろしくありません。

韓国も隣にイチャモンつける前に、まずは自分の手癖の悪さを治して信頼を得るのが良いと思います。