2014年6月6日金曜日

イギリス軍事博物館巡りの旅 バロー・イン・ファーネス編

コスフォードに続き、今回はバロー・イン・ファーネスの紹介に移りたいと思います。

バロー・イン・ファーネスはアイルランド海に面した港町で、イギリスでも有数の景勝地である湖水地方の南にあります。



ロンドンからは鉄道の場合、ランカスター経由で片道4時間以上はかかるので、訪れる際は現地か、片道1時間のランカスターに宿泊される方が良いと思います。湖水地方に泊まる手も考えましたが、微妙にバローからの鉄道の便はよろしくありません。バローから湖水地方までのバスも出ていますが、運行状況がよく分からなかった為、今回はパスしました。

今回のイギリス旅行で、一番ロンドンから離れた場所がここバローです。

バロー・イン・ファーネス 中心部

バロー・イン・ファーネスは産業革命期に急拡大した街で、イギリスの重工メーカーだったヴィッカースの造船所がありました。そして、日本の戦艦三笠や金剛もこの街で建造されました。そういう意味で、日本とも関係のある街です。


バロー・イン・ファーネス 中心部その2
バローはそれほど大きくありませんが、大変良く整備されている綺麗な街です。ヴィッカースが消滅した後も、世界屈指の防衛航空宇宙企業BAEシステムズの造船所が置かれ、イギリス海軍の原子力潜水艦は現在ここで建造されており、イギリスの安全保障上、重要な街でもあります。


BAEシステムズ敷地の注意書き

企業城下町として栄えたバローは、今もなお街に資金が投下されているようで、町並みも奇麗なものです。


街の中心にあるBAE造船所

BAEシステムズの造船所は街の中心部にあり、その巨大な外観は街の色々な場所から目にすることになります。

バローを訪れたのは5月15日でしたが、17日にはアステュート級原子力潜水艦2番艦アートフルの進水式がありました。これ事前に知ってれば見れたのに……。進水の様子はBAEシステムズがYouTubeに公開しており、映像からは造船所内部も見ることが出来ます。





このバローには、街と造船所の歴史を展示しているドックミュージアムがあります。小さな博物館ですが、色々と見るべきものがありますのでご紹介します。

ドックとドックミュージアム

ドックミュージアムはバロー・イン・ファーネス駅から歩いて15分ほどの所にあり、BAE造船所の裏手にあります。

ドックミュージアム

建物が建っているのは、かつてのヴィッカースの造船ドック跡地で、ドックの上に博物館を建てています。


建造リスト

BAEシステムズと博物館が道路挟んで向かい合わせとなっている側に、このドックで建造された艦艇の名前を刻んだ碑があります。


三笠、金剛等の日本艦の名前も

碑には戦艦三笠や金剛の名前も記されており、他にも著名な艦艇がズラリと並んでいます。


ドック跡

現在のドックは海と繋がっていますが、博物館の部分で堰き止められており、博物館地階がドックの最下部となっています。


ドック最下部の取水口?

ドックミュージアムはバローの歴史や、ここで建造された艦艇を紹介しています。


バローの成り立ち

一次大戦後のリストラっぷりが泣ける

日本関連では、戦艦三笠や金剛を建造した事が紹介されており、展示物もいくつかあります。


金剛の昼食メニュー

上の写真は1912年の金剛の進水式のプログラムです。左奥にあるのは、1911年にバロー・イン・ファーネスを訪れた東郷平八郎に供された昼食メニューです。


金剛の進水

金剛進水時の写真と絵葉書です。この写真は、ドックミュージアム公式サイト内にある、The Vickers Photographic Archiveでも見る事ができます。


金剛の模型

そして驚いたことに、金剛の模型がミュージアム内に展示されていました。三笠も無いのに、金剛がです。英国軍艦も数隻しか置いてないのに、ちょっと驚きました。建造当時は最強クラスの巡洋戦艦でしたが、このドックでもそれだけ重要な艦になるのでしょうか。


後ろから

立派な模型です。


模型のネームプレート

模型のネームプレートを見ると、ん? 艦種がBattlecruiser(巡洋戦艦)じゃなくて、Armoured Cruiser(装甲巡洋艦)になってね?

見なかった事にしよう……。

※1911年の段階で議会から「装甲巡洋艦4隻」と認可されており、 建造時の類別では装甲巡洋艦で正しいと教えて頂きました。


金剛解説

そして、せっかく金剛の模型があるので、

新旧金剛ツーショット

新旧金剛ツーショット。

そして、何事もなかったかのように、その他の展示へ……。

ノルデンフェルト式潜水艦

うわ、ノルデンフェルト式潜水艦ですよ。トルコに輸出されたこれも、ここバローで建造されたそうです。


BAE造船所 VSEL時代の模型

実物の写真を載せてますが、こちらはVickers Shipbuilding and Engineering時代の造船所の模型です。今と同じ建物ですね。変わっているのはVSELがBAEになっているだけ。


快晴のドック

ミュージアムを出て、近くのファミレスで昼を食べたら、朝方は小雨振ってた天気も晴れていました。気持ちのよい雨上がりですので、街をぶらつくことにしました。


ウォルニー島

ミュージアム前のA590道をそのまま西に進むと、バロー・イン・ファーネスの西にあるウォルニー島への橋を渡って行けます。このウォルニー島には、その名も"ヴィッカーズ タウン”と呼ばれる住宅地があります。




橋を渡り、ヴィッカーズタウンの住宅地を15分ほど歩きます。

ヴィッカーズ タウン

すると目的地に着きました。

ミカサ ストリート

戦艦三笠の名前から付けられた、ミカサストリートです。


ミカサストリート

とは言うものの、Wikipediaにある通り、本当にただの通りです。特に何か説明しているものはありませんし、単なる住宅地の道路以外の何者でもありません。

私は散歩ついでだったので良いのですが、なにか期待していると肩透かし喰らいます。ドックミュージアムからは徒歩20分ほどですが、よほどの物好き以外オススメしません。バスは頻繁に通っているので、利用されるのも手かと思います。

ウォルニー島から戻り、バローを散策します。

BAEシステムズ 建物

BAEシステムズ 新部品倉庫

街は企業城下町だけあり、至る所にBAEシステムズの建物があります。あまりぱちぱち写真撮ってもマズそうですが。

BAEの警備車両

そして、BAEの警備車両のハイラックスが走っています。企業傭兵!と思ったものの、スウェーデンの警備会社セキュリタスのマークがある。


BAE造船所前

そしてバローをほぼ一周する形でBAE造船所の前まで来る。この水面はデヴォンシャードックで、あのBAE造船所建物もデボンシャー・ドック・ホールと呼ばれている。このデボンシャードックと橋を挟んで隣接するブックルークドックは、三笠や金剛の艤装を施した場所らしい。

あと2日遅ければ、ここで進水式見れたんだよなあ……。

橋を渡りきろうとしたところ、下でなにか動くものがいる。

橋の下
カモメとウサギ

ウサギ

あ、ウサギだ。それも野生の(多分)。原子力潜水艦作っている工場のすぐ脇で、ウサギが寝っ転がってます。よく見たら、1匹や2匹どころじゃなく、えらい数います。なんだこれ。

イギリスでは、ウサギを十分に殺傷できる腕があるという条件付きでパチンコ猟が合法と聞いていたけど、イギリスの猟期ってあったっけか……としばし考える。

なんでこんなとこにいるんや……と思いつつ駅へと向かい、ランカスター行きの始発電車に乗って、バロー旅行は終了。

バロー~ランカスター間は、湖水地方が近い事もあってか、海と湿地の風景が素晴らしく、飽きのこない車窓でした。今度来る時は、湖水地方含めてじっくり回りたいものです。

ダックスフォード帝国戦争博物館へ続く




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