さて、今回がコスフォード博物館のラストになるハンガー1の展示機の紹介です。
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ハンガー1 外観 |
ハンガー1は練習機や輸送機、旅客機、エンジン、ミサイルを中心に展示してある棟で、戦闘機が展示されてある他と較べて見物客は少なめです。ですが、置かれている展示物はなかなかのものです。
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ハンガー1内部パノラマ 結構ファイルサイズデカい |
ここまで来ると、情報が少ない旅客機・輸送機、ミサイルになるので、検索で見つかった怪しい知識で紹介を補完しつつ進みます。間違ってたらコメント下さい。
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ホーカー・シドレー アンドーバー |
ホーカー・シドレーの双発ターボプロップ輸送機、アンドーバーです。原型は旅客機のアブロ748で、これは軍用の戦術輸送機型になります。
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ホーカー・シドレー ナットT1 |
ウォープレーン館でもありましたナットの練習機型です。すごい小さい。
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デ・ハビランド コメット |
世界初のジェット旅客機、デ・ハビランドのコメットです。就役当初は事故多発という不名誉を得ますが、事故原因の究明によって、その後の航空機設計に多大な貢献もしました。
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ヴィッカース ヴァーシティ |
ヴィッカースの双発練習機ヴァーシティです。双発旅客機ヴァイキングを元に、軍用の練習機として開発されました。
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コンペア スイフト |
なんか、昨夜発表されたAppleの新言語と同じ名称ですが、コンペアのスイフトです。1930年代のイギリスで開発された一人乗りスポーツ機です。
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アームストロング・ホイットワース アーゴシー |
うわー……。
B747の機首を潰して、後ろに巨大なP-38の後部をつけて4発機にしたかのような異形は目立ちます。アームストロング・ホイットワースのアゴシーです。
展示機は訓練機に改装されたものです。
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ユンカース Ju52 |
今ではまず見れない、3発レシプロ旅客機・輸送機のユンカースJu52です。戦前のドイツを代表する航空機で、ルフトハンザの主力旅客機でもありました。スペイン内戦では爆撃機、戦時中は輸送機としても活躍しています。
旅客機・輸送機をひと通り見た後は、壁際に並ぶエンジン各種です。めぼしいものを見て行きましょう。
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居並ぶエンジン |
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航空機用ディーゼルエンジン ユモ205 |
いきなりレアです。世界でも珍しい航空機用ディーゼルエンジンのユンカース ユモ205です。最近は民間機でディーゼル航空機も増えているようですが、これは戦前の作です。ドイツの偵察機や輸送機などで使われました。
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双子エンジン DB610 |
ドイツのダイムラー・ベンツのDB610です。これは、日本でもライセンス生産され三式戦闘機飛燕や、彗星艦爆にも搭載されたDB601の発展形であるDB605を2つ組み合わせ、1つのシャフトを回すエンジンです。
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GE T700 |
これは日本でも見る機会があるかもしれません。GEのT700。UH-60やAH-64アパッチなどに搭載されているターボシャフトエンジンです。かなりコンパクトです。
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ワルターエンジン |
こ、こんなのまで…。ロケット戦闘機Me163に搭載された、ロケットエンジン(またはワルター機関)のワルター109-509Cです。過酸化水素とヒドラジン・エタノール混合液の化学反応により推進力を得ます。有毒物質満載なのでこわいこわい……。
そして、続いては歴史的なブツが大量に出てくるミサイルコーナーです。
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ドイツの数々 |
すげー! なんか無造作に色々置いてある!
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フリッツX |
世界初の誘導爆弾フリッツXです。ドイツが開発した無線誘導の滑空爆弾で、初陣でイタリア戦艦ローマを撃沈した大戦果を挙げた事でも知られています。
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フリッツX 後ろから |
緒戦で大戦果を挙げたフリッツXですが、桜花と同じように、発射母機の損害が大きく、制空権を失われてからではほとんど戦果が出せませんでした。合掌。
しかし、その後の誘導爆弾の端緒となる歴史に残るものです。なお、イギリスでは結構いろんなとこで見ました。
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Bv246 |
ブローム・ウント・フォスの無線誘導滑空爆弾、Bv246です。フリッツXが有名な反面、こちらは知名度低いですが、フリッツXのように目標直上近くまで行かなくても、高高度からなら母機から200キロ以上の先まで届くグライダーです。もっとも、無線誘導なので、そんな遠くまで行ったら固定目標しか狙えないけど。
これを開発したリヒャルト・フォークト博士は、日本の川崎航空機で主任設計士をしていたことがあり、弟子に三式戦闘機飛燕の設計者の土井武夫がいます。
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地対空ミサイル Hs117 |
怒涛のドイツ。続いては地対空ミサイルHs117です。固体ロケットブースターにより地上から発射され、初期加速を得た後は液体燃料ロケットで推進します。誘導方式は無線誘導ですが、これ当たるんかいな? 実戦には出ていないので、効果のほどは不明。
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空対空ミサイル Hs298 |
上のHs117に激似ですが、こちらは空対空ミサイルHs298です。爆撃機迎撃用の空対空ミサイルとして開発されたものの、後述のX4に破れて、開発が中止となりました。下のプロペラは無線誘導システムのための発電機です。
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地対空ミサイル Enzian |
まだまだドイツ。地対空ミサイルEnzianです。
ここまで来るとミサイルというより航空機ですが、500kgの爆薬で重爆撃機も吹っ飛ばすという豪快極まりないブツです。戦争末期ということもあってか、木製です。
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ライントホター R3 |
地対空ミサイルシリーズ、ライントホターのR3です。全体像は分かり難いですが、宇宙ロケットみたいな外観です。
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ライントホター R1 |
こちらの方がミサイルしてますね。地対空ミサイル、ライントホター R1です。
戦争も末期になると、翼も木製とみみっちくなり、ところどころDIY感が溢れています。こう見えても、2段式ロケットなんです。
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Feuerlilie |
なんと読めばいいのだろうか…。これもドイツの地対空ミサイル、Feuerlilieです。こちらは他と較べて随分と小型で、固体ロケット式です。洗練度から言えば、こちらの方が上かも。
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短距離弾道ミサイル Rheinbote |
ものっすごく長いので、上の方が見えません。短距離弾道ミサイルのRheinboteです。射程は160kmあるとありますけど、ものっすっごく細いので、弾頭はショボイ事うけあい。実戦投入されても、あまり意味無かったんじゃないかなあ。
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地対空ミサイル ヴァッサーファル(1/4模型) |
地対空ミサイルヴァッサーファルの空力特性等を調べる為に作った、1/4の模型です。木の胴体に鋼の翼がくっついてます。
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空対空ミサイル X4 |
地対空ミサイルばかり続いてましたが、今度は空対空ミサイルのX4です。空対空だけど、有線誘導という怖い仕様。
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Feuerlilie F55 |
情報少なし。これはFeuerlilieの試験開発用の機体のようです。
怒涛のドイツが続きましたが、ここでイギリス機で一服しましょう。ライントホターが置いてある場所の裏の別室に、イギリス製ミサイルを中心にした展示があります。
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分離試験機 |
イギリス最初の空対空ミサイル、フェアリー ファイアフラッシュの分離試験機です。ブースターの切り離し機構の試験のための機体だそうです。
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フェアリー ファイアフラッシュ |
そしてこれがイギリス初の空対空ミサイル、フェアリー ファイアフラッシュです。ブースターがミサイル本体前方にあるという、どうしてこうなった感が強い構成。
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艦対空ミサイル シーキャット |
イギリスの艦対空ミサイル、シーキャット。艦対空ミサイルにしては太いなあと思ったら、原型は対戦車ミサイルとか。
さて、そろそろ主役級に行きましょうか。ドイツコーナーに戻ると…。
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弾道ミサイル V2(A4) |
世界初の弾道ミサイル、A4です。報復兵器2号(V2)というゲッベルスによる命名の方が有名ですが……。
後述するA1が空軍の所管に対して、こちらは陸軍の所管になります。弾道を描くから、これは高性能な砲弾という扱いだったとかなんとか。
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V2 推力偏向板 |
ワシントンのスミソニアン航空宇宙博物館にも飾ってありましたが、こちらの方が細部を色々と覗けますね。推力偏向板の形もよくわかります。
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V2 エンジン部燃焼室 |
そして、V2の燃焼室をカットしたものまで置いてあります。これは凄い。
戦後の米ソの弾道ミサイルの出発点ともなり、開発者達は米ソ両国で研究開発に従事する事になります。アメリカは後のサターンV型ロケットの開発までV2設計者のフォン・ブラウンらが関与するのに対し、ソ連は早い段階でソ連人技術者がロケット開発の主戦力に置き換わりました。
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フィーズラー Fi103(V1飛行爆弾) |
続いて同じく報復兵器シリーズの元祖として知られる、世界初の巡航ミサイル、フィーズラー Fi103ことV1飛行爆弾です。
爆弾に翼とパルスジェットを取り付けたかのような質素な外見が実用感あります。実際、安いコストで製作可能でした(その分、撃墜された)。
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V1 別角度から |
このV1ですが、実はアメリカがJB-2としてコピーを戦時中に作っており、対日戦に投入予定でした。連合軍の日本本土侵攻作戦が起きた場合、艦艇や航空機(航空機搭載型も作られました)から日本に向けて数千発以上のJB-2が放たれたかもしれませんが、実戦に投入される前に日本は降伏しました。
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カウント用のプロペラ |
さて、ここまででRAFコスフォード博物館の主な展示を紹介し終えました。
予想を超える時間がかかってしまいましたが、まだ今回の旅行で尋ねた博物館の2割にも達していません。まだまだ相当続くんじゃ……。
次回はバロー・イン・ファーネスのドックミュージアムを紹介します。
続く
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