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2014年1月21日火曜日

引き際が難しい、南スーダンPKO

2013年12月15日に勃発した南スーダンの内戦は、1月19日には停戦合意に至ったとの報道もなされましたが、依然として戦闘が続く地域もあると伝えられており、戦闘終結の見通しは立っておりません。

南スーダンは2011年にスーダンから独立した新しい国で、国連は国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS:United Nations Mission in the Republic of South Sudan)を組織し、各国は南スーダンの国造りを支援してきました。日本も2012年から、陸上自衛隊の施設部隊を派遣し、首都ジュバ近郊で300名以上の隊員がインフラの整備等を行っています。

南スーダンで道路整備を行う自衛隊(防衛省サイトより)

日本では国連PKO活動へ参加する基準として、PKO参加5原則を定めており、UNMISSへの参加もこの5原則を満たしているとの判断から参加しました。ところが、内戦の勃発により、その前提が揺らています。ここで、5原則の内容を見てみましょう。


  1. 紛争当事者の間で停戦合意が成立していること。
  2. 当該平和維持隊が活動する地域の属する国を含む紛争当事者が当該平和維持隊の活動及び当該平和維持隊への我が国の参加に同意していること。
  3. 当該平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的立場を厳守すること。
  4. 上記の基本方針のいずれかが満たされない状況が生じた場合には、我が国から参加した部隊は、撤収することが出来ること。
  5. 武器の使用は、要員の生命等の防護のために必要な最小限のものに限られること。

昨年末の内戦勃発で第1原則が崩壊しており、今現在伝えられている停戦合意も、今後の展開により、反故にされる可能性が捨てきれない状況です。第4原則では、第1から第3までの原則のいずれかが満たされない場合、部隊を撤収する事を求めています。

PKO参加の自衛隊部隊の撤収については、12月24日の菅官房長官の会見1月6日の小野寺防衛大臣の会見においても否定されています。政府の見解としては、自衛隊が活動する首都ジュバは情勢が安定しており、引き続き情勢は注視するが撤収は考えていないようです。また、安倍内閣は2013年12月17日に閣議決定された「国家安全保障戦略」で、世界の安定に積極的に関与する事を示した「積極的平和主義」を打ち出したばかりで、他国に先駆けてUNMISSから手を引く事はあり得ないという見方が強いと報道されています。今ここで撤収しては、「積極的平和主義」が看板倒れになると懸念されているそうです。

しかしながら、以前から「積極的平和主義」と同様に、世界の安定への積極的関与を打ち出し、平和活動への自国軍参加を積極的に行っていたドイツでは、10年以上に渡るアフガニスタン派遣で300名以上の死傷者を出しており、政府は厳しい批判を受けています。ドイツ軍は平和目的で派遣されており、戦争下にある地域への派遣は違法とされています。しかし、多くの犠牲者を出したアフガニスタンは戦争下ではないのかという批判に対し、ドイツ政府はアフガニスタンの状況について、”Kriegsaehnliche Zustaende”(「戦争に類似した状態」)にあると説明しました。「戦争に似ているが戦争ではない」と言ったわけです。ドイツ政府のこの詭弁は国民の顰蹙を買いましたが、首都ジュバ近辺が安定している事を根拠に自衛隊撤収を否定した日本政府も、今後の事態の推移によっては、ドイツ政府と同じ罠に陥る可能性も捨て切れません。


アフガニスタンで殉職したISAF兵士、ドイツ軍兵士らの慰霊碑


過去に国連PKOから撤収した例を挙げれば、1996年から続いていたゴラン高原での国連兵力引き離し監視隊(UNDOF:United Nations Disengagement Observer Force)への自衛隊派遣が、2011年に勃発したシリア内戦に伴う治安状況の悪化により、2013年に撤収したことがありました。この撤収については、治安悪化で隊員の安全確保が困難になった事による撤収であり、5原則が崩れたという判断によるものではないと説明されています。

最悪の事態は、引き際を見誤る事です。昨年末にお伝えした「南スーダンで進展している虐殺の危機」の記事中で、虐殺の可能性について懸念しましたが、国際人権NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチによれば、政府軍・反政府軍双方による特定民族を標的とした虐殺が行われており、懸念が現実のものになってしまいました。

一般市民に対し、民族だけを理由として恐ろしい犯罪が続いている。両陣営とも一般市民を争いに巻き込んではならない。そして助けが必要な人びとに人道支援団体の手が届くよう計らい、信頼にたる独立した犯罪の調査を受け入れる必要がある。



このような政府軍・反政府軍双方による虐殺が行われている中、これまで通り政府に協力する形でPKO活動を続けた場合、反政府側の民族から反感を買う可能性があります。また、南スーダン情報相が「国連宿営地は反政府軍を匿っている」と主張するなど、政府側にも国連PKOへの疑心暗鬼が生じている状況です。停戦合意により事態が終息する事を期待して留まるか、今後の一層の事態悪化を懸念して撤収するか、どちらかの選択を迫られています。引くタイミングを誤った場合、その悪影響は大きなものになるでしょう。

ここで自衛隊部隊をPKOから撤収した場合、立ち上げたばかりの「積極的平和主義」の看板に傷が付くのは避けられませんし、なによりこの2年間の復興支援の多くが水泡に帰します。一方で、今後も十分想定される事態悪化と、隊員の安全を考えると、撤収もやむ無しという選択もあり得ます。仮に隊員に犠牲者が出た場合、積極的平和主義どころか、日本の平和政策が根本からひっくり返る事態になるのは想像に難くありません。

停戦合意で仕切り直しの時間を与えられた今(本当は与えられてすらいないかもしれないけど)、南スーダンに留まるか否かを真剣に考える必要があるでしょう。

2013年10月18日金曜日

機動戦闘車、岩崎陸将式辞全文

なんか、機動戦闘車について、この人全然人の話聴いてねえんじゃね? という人見かけたので、YouTubeに上げた動画の岩崎陸将スピーチをテキストとして載せておきます。





司会:
機動戦闘車、入場

防衛省技術研究本部、技術開発官、陸上担当
陸将、岩崎親裕より挨拶をさせていただきます。


岩崎陸将:
おはようございます。
技術研究本部技術開発官陸上担当の岩崎であります。

本日は機動戦闘車試作車両の完成に伴う報道公開を計画致しましたところ、防衛記者会、防衛省市ヶ谷記者クラブ、また防衛省関係各社をはじめ、多数ご参加頂きましたことに、まずもって御礼申し上げます。

機動戦闘車は、平成20年度から4段階に分けて試作を実施して参りましたところ、先月末、最終形態の試作車両が完成し、本日の報道公開に至った次第であります。

この報道公開実施にあたり、開発官として一言ご挨拶を申し上げます。

さて、技術研究本部は、昭和27年に保安庁技術研究所として発足以来、現在は防衛省技術研究本部として、防衛技術のフロントランナーたるべく、陸海空自衛隊が使用する広範な装備品等について一元的に研究開発を行っている次第であります。

我が国の戦闘車両を顧みますと、61式戦車を皮切りに、74式戦車、87式偵察警戒車、89式装甲戦闘車、90式戦車、96式装輪装甲車、10式戦車などが開発されてきましたが、

このたび公開致します機動戦闘車は、105ミリ級の砲を搭載した装輪戦闘車両としては、我が国初のものとなり、陸上装備の中で重要な役割を果たすものと期待しております。

この機動戦闘車は戦闘部隊に装備し、多様な事態への対処に、優れた機動力をもって速やかに展開して、敵装甲戦闘車両等を撃破するために開発されました。

このような開発目的の下、大口径火砲の低反動化技術、車両の安定化技術、高剛性・耐弾性を確保した小型軽量車両技術、及び装輪車両に適合した射撃統制機能の適正化技術、の主要な技術的課題を段階的に克服し、この度の試作車両完成に漕ぎ着ける事ができました。

現時点におきまして、この機動戦闘車が世界において最高水準の105ミリ級の砲を搭載した装輪戦闘車両であると自負しております。

機動戦闘車の開発は、本日を1つの節目とするものでありますが、引き続き厳格な試験評価を行うと共に、得られました成果を今後の主要装備の技術開発等に反映させ、不断の進化・発展を図っていく所存であります。

あらためて機動戦闘車の開発成就を期待するものであります。

最後に、本日の報道公開へ多数の皆様がご参加頂きました事に、あらためて感謝致しまして挨拶と致します。

平成25年10月9日、防衛省技術研究本部、技術開発官、陸上担当、陸将岩崎親裕。

どうもありがとうございました。
後でゆっくりご見学下さい。
以上

2013年10月10日木曜日

機動戦闘車のファーストインプレッション

さて、昨日発表された機動戦闘車ですが、基本スペックから実際の動作、さらには自分でペタペタ触って色々と確認することができましたので、ちょっとまとめてみたいと思います。

外観


機動戦闘車の外観について。最初は写真の撮り方考なんで、軍事的なものは薄いですよ。

この写真、原寸大表示可能ですんで、細部見たい方はクリックしてください。但し、ディテールが分かる様に影になって潰れていた部分を部分補正で見えるようにしてあるので、そこいらはノイズ多め。あと、補正の仕事は雑です。

まず、上の写真。斜め前からのカットが一番キマって映る。ただし、かなり鋭角の斜め。


イタリアのチェンタウロのWikiからデータ引っ張ってくると、全長(砲身含む)は8.555mのチェンタウロに対し、機動戦闘車は8.45m。約10センチ機動戦闘車の全長は短いんだが、チェンタウロと較べて砲塔が非常に小さい。横から見ると、のっぺりした印象を与えてしまう。もちろん、車高が低い事は安定に寄与するので良い事だけど、横からの見栄えは良くないので、鋭角で前撮影した方が無難かも。

チェンタウロ3面図



右斜め後ろから。砲塔後部、車体後部共にハッチあり勘違いしてた。砲塔後部はどうみてもハッチじゃないや。車体の後部は人が入れないこともないけど、アクセス性から考えてメンテナンス用が主眼と推測。動画でもここから人は出てきていない。




で、外観から明らかになるのは、車体高の低さ。これにより、ファミリー化されたとしても、兵員輸送タイプが作られる可能性は低いんじゃないでしょうか。
発表会場では乗員4名以外に乗れない事を惜しむ声・ファミリー化を懸念する声がありましたが、先に装輪装甲車(改)が発表された以上、バッティングする兵員輸送タイプは機動戦闘車ベースでは無いと思われます。第一、これ内部容積きっついと思う。
近々開発されるであろう指揮通信車後継とかも、NBC偵察車ベースの方が向いていると思うし。


武装


105ミリライフル砲。この砲身に空いたマズルブレーキが特徴ですね。マルチポート式のマズルブレーキは、自衛隊では初めてでしょうか。ライフリングに沿って空けられています。よくよく見たら、砲身歪み検知用のミラーから根本まで、サーマルジャケットで覆われているようです。
90式戦車、10式戦車は自動装填装置を搭載していますが、機動戦闘車は手動装填です。重量・容積とトレードオフの結果だそうですが、105mm弾で120mmよりは軽いこと、バコスカ高速で撃つような性格の車両ではない事を考えると妥当と思います。砲塔がすごく小さいですしね。



12.7ミリ重機関銃座。銃自体はありませんが、この銃座、10式と同じみたいですね。銃座の写真だけ集めなきゃ…。


同軸機関銃は7.62mm74式車載機関銃。でも、そろそろ新型欲しい気も……。



センサ系




砲塔左に車長用パノラマサイト。10式のに似ているが、小さく感じる。10式の光学系はかなり高倍率(いずれ同人誌に書きます)のサイト搭載しているのですが、機動戦闘車は広角寄りなのか。配置は10式と逆で、10式は砲塔右後方にあったのに対し、機動戦闘車は砲塔左前方。
また10式にも見られたミサイル検知用と思しきセンサが砲塔左右正面にある。下で比較してみよう。

機動戦闘車 ミサイル検知器?

10式戦車 ミサイル検知器
同じセンサの様に見えるんだけど、実装方法が全然違う。10式がセンサを砲塔4隅の凸部分に設置しているのに対し、機動戦闘車で確認できたセンサは砲塔前面の2つ。しかも、凹んだ箇所に取り付けてあるんだけど、どういうことだろ、これ。数減らすのはコストカット等で説明付くにしても、センサが凹部分の底にあるのはなんでだろ。ただ、周りのパネルの形状見ても分かるように、試作車両だからか簡単に交換できるようになっているので、量産車でどうなるか不明。単純に、試作時は交換やりやすいからという理由なのかも。



砲塔右には砲手用の固定サイト。これも10式と逆配置で、より小さい気がする。砲手用サイトは、反射光の色から判別して、こちらから見て右にあるものが赤外線、左が可視光センサと思われる。


環境センサー。折りたたまれていたので、外観写真からは分かりづらかったかもしれませんが、10式と同じタレス製のセンサーです。型番も一緒でした。



防護力


車体側面を見ると、車体に防弾鋼板と思しき厚さごにょごにょくらいの板がボルトどめされています。追加装甲だと思われますが、ボルトどめや想定される鋼板の重量考えると、ほぼつけっぱなしになっていると思います。輸送条件に応じて、取り外しと言ったところかと推測。



そして砲塔周りの防護。これも10式と同様、砲塔本体に付加する装甲を付けていると考えられる。というか、砲塔本体と付加装甲の境界きっちり見えました。10式よりは付加装甲のスペースが薄い感じです。
それと、発煙弾発射機も砲塔側面に設置してあります。



足回り


言うまでもなく8輪のタイヤによる走行ですが、足回りがちらりと見えます。


プレートにピント合って無くてすみません(;´Д`)。ですが、ダイキン工業/三菱重工製の懸架ユニットです。ダイキンというと、油圧関連でしょうから、油気圧サスペンションでしょうか。反動抑制技術を考えると、10式戦車応用のアクティブ懸架の可能性が高いと思われます。



その他



砲塔上面なんですが、かなり念入りにすべり止めがなされています。あまり上面に登れた車両が無いのでなんとも言えんのですが……。


取り付けられているアンテナを確認するのを忘れていたのですが、恐らく10式と同じ東芝製JAT-S33。つまり、アンテナは10式並の通信をする能力が可能ということか。中に何を積むかは別として。

次は、今までの装甲車両にこんな装備あったっけ、ってなものを。


↑こいつです。砲塔後部の両側面についた収納スペースと思わしき専用空間。ある種のユーティリティースペースで偽装網などをここに入れたりするそうです。



中の人を見ると、偵察教導隊。機動戦闘車は新カテゴリの装備とはされていますが、87式偵察警戒車の後継装備としても考えられているのかもしれません。ユーザーとしては、普通科、機甲科も想定されているとのこと。

取り急ぎのファーストインプレッションはここまで。またなにか気づいたことあったら追加でお知らせします(・ω・)ノシ


2013年6月18日火曜日

耳をすませば ~レーダーのドップラー音~

ジブリ新作映画「風立ちぬ」公開を記念して、7月5日に金曜ロードショーで「耳をすませば」やるらしいですね。今回の放映で、果たして何人が絶望してあの世に旅立つんでしょうか……。

耳をすませば放送後の視聴者(アンサイクロペディアより)

さて本題。
レーダーというと、現在は軍だけでなく、航空管制や海洋航行、天気予報にも欠かせない電子機材ですが、陸上物体を探知するレーダーも空や海のものと比べて認知度は低いものの存在します。

今回は認知度の低い陸上レーダーの、更に認知度の低い探知法についてご紹介しようと思います。



レーダーの表示法


レーダーは電波を発振し、物体に反射して返って来た電波を測定することで、物体の方位や距離を計測する装置です。レーダーの種類は様々あれど、これは共通しています。

そして、目標がどこにあるかについて、表示する方法もいくつかあります。
有名なのが、レーダーと聞いて思い浮かべるのが多い方が多いであろうPPIスコープ方式です。

PPIスコープ(Wikipediaより)

上図のように、円形の表示器に回転する走査線のイメージが、映画などでよく知られていると思います。これはPlan position indicator(平面位置表示器:PPI)スコープ方式と呼ばれるもので、目標への方位・距離が一目で分かる優れた方式です。

また、走査線が360度回転して走査するPPI方式の他に、走査線がx,y軸を走査するラスタースキャン方式も存在します。

これらの一目で目標の方位・距離が分かる表示方式になるまでは、Aスコープと呼ばれる方式が使われていました。これは、心電図と同じようなオシロスコープの表示で、X軸は反射波が帰ってくる時間、Y軸は反射波の強さを表し、Y軸の強さから目標の方位を、X軸の時間で目標との距離を測っていました。

このAスコープについては、日本海軍の電測兵として徴用されていた方が、個人サイトで図表含め、詳しく書かれていおりますのでぜひご覧ください。(リンク:暗天南

さてこのAスコープ、波形を見て目標を探すわけですから、直感的に位置が分かるPPIと比べてかなり面倒ですね。第二次世界大戦中でも、PPI方式のレーダーは米英が先行して開発しており、日本では実戦配備されることはありませんでした。



表示せずに“聴く”レーダー


ここまでレーダーの表示法をかいつまんで説明しましたが、敵の位置を表示しないレーダーも存在します。
82式地上レーダー装置(自衛隊福岡地方協力本部サイトより)

陸上自衛隊で配備されている82式地上レーダー装置JPPS-P10(“地上レーダー装置2号”に改名)がそれです。

対空・対水上レーダーや航空機搭載の地上レーダーと異なり、地上設置型の地上レーダーは戦場監視的な意味合いが強く、ミサイルを照準・誘導することもないので高い精度は要求されません。

敵のおおよその位置と移動速度が判明すればいいので、PPI等の2次元表示装置も無く、デジタル表示で目標の方位角、距離が表示されます。最大探知距離は、大型車両は10キロ、中小型車輌が8キロ、人員が5キロとされています。

82式地上レーダー装置は、数値による表示の他にも探知手段があります。
それは音です。

82式地上レーダー装置は、パルス・ドップラー・レーダーです。
パルス・ドップラー・レーダーとは、反射波の波長の変化を測定して、目標の位置だけでなく速度も測定でき、航空レーダーや気象レーダーに使われるレーダー方式です。

反射波の波長の変化と言うとややこしいですが、道路沿いを歩いている時に緊急車両が通った時を思い浮かべて頂ければわかりやすいと思います。
近づいてくる救急車のサイレン音は甲高く聴こえ、遠ざかる時のサイレン音は低く聴こえる現象(ドップラー効果)を、音ではなく電波で利用したのがドップラーレーダーです。
気象用ドップラーレーダー(気象庁サイトより)

上の画像は気象用ドップラーレーダーの仕組みですが、地上レーダーと仕組みは同じです。
近づく物体、遠ざかる物体の反射波から、その物体の移動速度を割り出しています。

このドップラー波を可聴域の音に変換したものを、82式地上レーダー装置では観測に利用しています。相手の距離や方位は表示で分かりますが、速度は音から判断します。
そのドップラー音の例を、映像としてニコ動、YouTubeにアップしてみました。





非常に録音状態がよくないですが、移動する物体や速度によって、音が全然違うのがわかると思います。
レーダー表示部の距離・方位角と合わせ、この音を聴いて補完すること、目標の動きを探るわけです。

この82式地上レーダー装置ですが、現在は地上レーダー装置2号改JPPS-P24が後継として更新されつつあります。
新型は表示・制御部がノートパソコンになっており、最大20目標の自動追尾が可能になりました。
82式地上レーダー装置は単目標の探知しか出来なかったので、音による探知が出来たのですが、新型では廃されているようです。

かつては空も聴音機で探していた時代がありましたが、レーダーの普及とともに廃れていきました。

聴音機と昭和天皇

地上用レーダーは空・海と比べて歴史が浅く、クラッターなどの制約も多いので、空・海と比べれば機能的には遅れたところがあるのですが、あともう少しで音を頼りにするのも終わりになりそうです。

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