冬コミで買った艦これ同人誌、半分も読み終わってません。つらいです。
ところで、新年早々、ツイッターでこんなのがRTされてきました。
福島第一原発観光地化計画は、そしてゲンロンは、要はゲリラです。だから権力からも煙たがられるし、市民からも非難される。成功するかもしれないし失敗するかもしれない。歴史的にどう評価されるかもわからない。しかしすべてのゲリラはそういうものです。あとは信頼できる仲間と連帯するほかない。
— 東浩紀 (@hazuma) 2014, 1月 2
私、東浩紀先生にはいろいろと思う所あります。私の指導教授(マーケティング論)が「動物化するポストモダン」に影響されて、付け焼き刃のオタク消費論を滔々と説き出した時は、俺は今地獄にいると確信するまで精神的に追い詰められました。今思い出してもホント辛いです。
一般に理解されていない界隈をインテリ向けに翻訳・紹介する人間は、界隈の生存には必要な事とは思いますが、理解したと勘違いしたインテリがよく知らん界隈の知識を中途半端に他人にひけらかす行為は傍目からは見苦しいものです。
もっとも、今回の場合は東先生ご自身がそれなんですが。前振り長くてすみません。
で、東先生のゲリラ論ですが、どうなんでしょうね。権力から嫌われるのはゲリラの常だと思いますが、市民からも非難され、味方は仲間以外にいないゲリラってのは。少なくとも、こういうゲリラ戦を展開して成功したゲリラって記憶にありません。
20世紀のゲリラ戦理論で欠かせない毛沢東は、「人民は水であり、解放戦士は水を泳ぐ魚である」と語り、文化大革命時の標語にも「軍は民衆を愛し、両者は魚と水の関係のように深く結びついている」と形容しているものがあります。水と魚のように、民衆と革命勢力は不可分の存在なんですね。戦時中、華北地域の日本軍はもっぱら中国共産党の浸透工作対応が主任務でしたが、最終的には破綻します。中国共産党は続く国共内戦でも、アメリカの支援を受けた国民党に勝利し、中華人民共和国の建国に至ります。
今の中国から想像も及ばないことですが、当時の中国共産党の軍事組織は規律・士気共に高く、民衆の支持を獲得しています。降伏した日本軍の中にすら、感銘を受けて教官になる士官もいました。現在の中国空軍の設立にあたっては、旧日本陸軍航空隊メンバーが協力しており、戦後も長期に渡って交流が行われていました。当時の中国共産党には、それほど寛容性と度量があったんですね。
ゲリラというのは、恐怖で民衆を支配する方法も選択肢にありますが、最終的に勝者となって完結するには民衆の支持が必要です。逆に言えば、ゲリラから民衆の心を引き離せば、ゲリラは消滅します。先の毛沢東の言葉に対し、米陸軍のJ・ネーグルは「水と魚を切り離す」アプローチと対ゲリラ戦を説明しています。
この「切り離す」アプローチは対ゲリラ戦の基本的な考え方です。旧日本(満州国)軍の間島特設隊や独立間もない韓国軍で対ゲリラ戦に従事した白善燁将軍は、ゲリラと民衆を分断することが対ゲリラ戦をする上で大事だと言ってますし、現在では批判される事の多いマクナマラが採用した戦略村構想(発案はテーラー)も、ゲリラと民間人を物理的に断絶し保護するための効率的手段としてマラヤ等で実績のあったものでした。
ゲリラ戦・対ゲリラ戦は、言い換えれば「民衆の支持と心(hearts and minds)の争奪戦」となり、ここにその難しさが集約されると言ってもいいでしょう。アフガニスタンやイラクでアメリカが手を焼いているのも、恐怖から宗教的動機まであらゆる手を駆使するゲリラ側の民衆支持獲得にアメリカが追い付いていない為とも言えますし、逆にゲリラ側が勝利(イスラム国家樹立)していないのも、民衆支持が無いためとも言えます。
気をつけなければいけないのは、闘争の勝利はゲリラ戦のみで成るものではない、ということです。ここは毛沢東もゲバラも指摘しています。ゲリラ戦により敵の力を削ぎ、自らの力を強化し、最終的には正規軍をもって打倒してこその勝利であり、ゲリラ戦はそのための手段の1つなのです。ゲリラ部隊はイデオロギーで連帯した同志のみで編成できるかもしれませんが、民衆からなる正規軍を整え、国家を打ち立てるには民衆の支持が必要なのです。
東先生のゲリラ戦理論がオリジナリティ溢れるものだった事は、ここまででお分かり頂けたと思います。東先生は権力にもなびかず、民衆からも嫌われる戦法だと開き直り、志を同じくするお仲間だけのインナーサークルに閉じこもると宣言しましたが、このパターンってアレですよ。いかなる集団からも孤立、先鋭化した先って、行き着くのは山岳ベース事件なんじゃないですかね。
これからの東先生に注目だ。
【関連書籍】
白善燁将軍による対ゲリラ戦の解説。自身の対ゲリラ戦の体験と、ベトナムにおける米軍の失敗、PKOについても分析を行っている。しかし、アマゾンの表紙画像はなんか変だ。もっと、普通の表紙のはずなんだけど……
前述の白将軍の本が対ゲリラ戦の本なら、こちらは近年和訳されたソ連軍によるゲリラ養成マニュアル。ずぶの市民を、戦士に変えるための書で、二次大戦後の革命戦術にも繋がっていく書。
20世紀のミラクルおじさん毛沢東の著書。上のマニュアルが現場レベルの闘争の書なら、これは強大な日本軍に中国が打ち勝つ為の戦略を説いた書。
出先で資料無しで記憶とネット検索のみで書いているから、間違っていた引用とかあったらごめんなさい。
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