2015年11月17日火曜日

防衛技術シンポジウム改め防衛装備庁技術シンポジウム2015年レポ(陸上編)

間が空いてしまいましたが、空、海に続いて今回は陸上の研究開発について。

新除染セット

CBRN(化学・生物・放射性物質・核)による人員・装備・施設への汚染を除染するための新除染セットです。




従来品と比して、下記の特徴を有しています。

  • 機能のユニット化
  • 処理能力の向上
  • 空輸可能
  • 除染廃液の処理(化学科部隊用のみ)
  • ガスによる精密機器の除染

各機能はユニット化されており、水タンクと薬剤タンクを備えた共通ユニットを基本に、除染ユニット、人員除染ユニット、排水処理ユニット等が構成により付加されます。

共通ユニット部の模型
普通科連隊の本部管理中隊等、一般部隊用に装備される新除染セットは、中型トラックに共通ユニットと人員・装備除染ユニット、廃液処理ユニットから構成されています。除染後に出る廃液を処理出来るのが新除染セットのウリですが、一般部隊用は廃液を保管する機能にとどまっています。

新除染セット(一般部隊用)の模型

機能が限定される一般部隊向けと異なり、各師団の化学科部隊に配備される新除染セットは、大型トラックに共通ユニット、人員・装備除染ユニットに加え、処理機能を備えた廃液処理ユニット、液体による除染が出来ない精密機器をガス除染する精密機材除染ユニットから構成されています。

新除染セット(化学科部隊用)の模型
新除染ユニットの新機能である精密機材除染ユニットは、2種類のガス(オゾンと過酸化水素)を戦闘車両等の密閉空間内部に流し、強力な酸化作用により生物剤・化学剤を無害化するものです。ガスで除染することで、液体による除染が難しかった精密機器のある空間の除染が可能になります。

廃液処理ユニット(左)と精密機材処理ユニット(右)
このガス除染については、以前の防衛技術シンポジウムで実証研究結果が展示されていましたが、ついに新除染セットの1ユニットとして装備化されることになりました。研究の展示から装備化に至った例になりますね。わりと短時間で装備化されたと思いますが、需要が高いせいでしょうか。



新除染セットは空輸性が考慮されており、各ユニットの空輸が可能です。ユニットとして積載し、降ろした先でトラックに積み込む他、発電機が備えられているのでユニット単体でも動作可能で、車載でなくても地面に直置きでも大丈夫とのこと。


ハイブリッド動力システム

エンジンにより発電を行い、モーター駆動により機動させるハイブリッド動力システムの研究です。




ハイブリッド車両と言うと、今は自動車でも珍しくはありませんが、様々な方式があります。この研究では、エンジンの出力を全て電気に変換してモーターを駆動させるシリーズハイブリット方式を取っており、数あるハイブリッドでもシンプルな方式です。

戦闘車両をハイブリッド化することで、燃費効率の向上や、エンジンを切ってバッテリーに蓄えられた電力のみで駆動する静音走行、部隊宿営地の電源としての活用などがポスターでは謳われていますが、車軸が無いことによる設計自由度の向上という利点もあります。

しかし、戦闘車両のハイブリッド化は昔から試みてきたものの、バッテリー等の重量が増加するため、かえって燃費が悪くなったり、信頼性が低下する等の問題がありました。その点について気になったので、果たして目論見通りに燃費向上はするのかと質問すると、回生エネルギーを回収することで、かなりの向上が見込めたとのことです。戦闘車両は一定の速度で機動することはそうありませんので、減速が発生する事が多く、そこで減速分の回生エネルギーを回収すれば燃費向上に繋がるという判断のようです。

試験車両として、73式装甲車クラス(73式そのものではない)の装軌車両を三菱重工で製造し、各種試験に供しているとのこと。映像も公開されていましたが、通常動力の装軌車両と遜色のない動きをしておりました。

それと、日本が装軌式とアメリカが装輪式を研究することで、効率的に研究するという日米共同研究が謳われていますが、以前からハイブリッド車両研究はあったものの、日米共同に言及されたのは初めてだったと思います。この点について、ハイブリッド車両研究を始めた当初から分担が決まっていたのか?と質問したところ、たまたま日本が装軌式、アメリカが装輪式を研究していたので、そこから共同研究に至ったのではないか、という話でした(答えた方は共同研究締結時に別部署だったので、おそらくとのこと)。