第二次大戦の激戦地である硫黄島は、戦後しばらくはアメリカ統治下にあり、1968年に日本に返還されたものの、現在まで一般人の立ち入りは制限されていて、居住しているのは駐留する自衛隊員や工事を請け負う建設関係者くらいしかいない。
Wikipediaで「硫黄島」を読むと、通信事情についてはこう書かれている。
2013年現在、島内に携帯電話基地局は存在せず、また周辺からの電波も届かないため、島内で通常の携帯電話は圏外となる。移動通信は衛星を使ったサービスに限られる。2013年現在だが、住民もたいしていない硫黄島にキャリアが携帯基地局を設置するメリットがあるとは思わなかったので、今もそのままだろうと思っていた。
ところが、防衛省の入札情報を調べていたら、平成25年8月1日付けでこんな案件があった。
東京都小笠原村硫黄島における在島隊員の福利厚生及び来島者の利便性を確保するため、携帯電話サービスのための携帯電話基地局の設置事前調査及び設置工事を行う業者ついて、次のとおり募集します。
なんと、硫黄島への携帯電話基地局の設置調査と工事についての入札だ。海上自衛隊は硫黄島で携帯を使えるようにしたいらしい。
更に調べると、株式会社若電という会社が、2014年の工事実績に「硫黄島無線基地局新設工事」を掲載していた。どうも応札したキャリアがあり、工事も既に行われていたようだ。
国関連の仕事だと、やはりNTTドコモかと思い、ドコモのカバーエリアを調べたが硫黄島には何もない。ならばKDDIかと思って調べたが、これも未カバー。じゃあ、応札した会社はいなかったのか……と思ってたら、まさかのソフトバンクがカバーしていた。
ソフトバンクがカバーしている硫黄島(ソフトバンクサイトより) |
この事は、従来から行われている遺骨収容にも良い影響を与えるかもしれない。既に当ブログでも、「戦艦武蔵発見で考える海没遺骨とその尊厳」、「今なお百万柱が眠る海外戦没者と遺骨収容」といった関連記事を伝えているが、硫黄島でも1万2千柱の戦死者の遺骨が収容されずにいる。
島内のほぼ全域で携帯電話が使えるようになれば、駐留隊員の福利厚生の向上の他にも、今後の遺骨収容事業を進める上で有益である事は想像に難くない。通信事業者として、基地局設置を行ったソフトバンクの英断を称えたい。
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