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2015年11月13日金曜日

各都道府県別ハンターマップがGoogle Mapでも利用出来るようになっていたのでお知らせ

もうすぐ猟期ですね。防衛技術シンポジウムのレポの最中だけど、ちょっとこの話を。

3年以上前に作ったGoogleEarth版各都道府県鳥獣保護区図(ネット版ハンターマップ)ですが、Google Earthだけじゃなくて、Google Mapでも利用出来るようになりました。Google Earthで使うより、かなり便利になったはずです。下みたいに表示されます(長野県の例)。




私は特に何もしていません。3年前はGoogle Mapの仕様が厳しすぎて、一度に表示できるオブジェクトが少なすぎたために抜け道としてGoogle Earthで作りましたが、気づいたらGoogle Mapの仕様が緩くなったのか、普通に使えるようになってました。

調子こいて全国版作ろうとしましたが、3,4県分まとめたところで仕様に引っかかりアウトだったので、都道府県版のまんまです。

なお、データは平成21年度のまんま&銃猟禁止区などは未掲載ですので注意。僕がサボったせいではなく、公開されているデータがそれしかないからなので、政府自治体に文句言ってください。

下記リンク先記事にある各都道府県別リンクをクリックして、お気に入り登録すれば、スマホ上のGoogle Mapアプリでもマイプレイスから表示できるはずです。

http://dragoner-jp.blogspot.jp/2013/02/googleearth.html

各都道府県のデータを見返してみると、どの都道府県も数百回の閲覧回数があり、それなりに需要があるのだなーと思いました。環境省その他も狩猟推進するつもりだったら、もっと地図データ開示してよ。

それでは、事故の無い、良い猟期でありますように。











2014年12月23日火曜日

狩猟税減免(但し一部)。それってハンター減少の歯止めになる?

野生鳥獣による被害増大を受け、ハンターを増やそうと環境省が狩猟税免除を求めていましたが(リンク:毎日新聞「環境省:狩猟税廃止を要望へ 作物被害でハンター増狙う」)、政府方針の話がそろそろ出てきました。

    ハンターが納める狩猟税について、政府・与党は、シカやイノシシなどの鳥獣駆除に携わる人を対象に、来年度から全額免除または半額にする方針を固めた。増えている野生鳥獣による農作物被害を防ぐため、担い手の減少傾向を止める狙いがある。

現在、狩猟者が狩猟者登録申請時に各都道府県に納める狩猟税は以下の通りになっています。

第一種猟銃(散弾銃・ライフル・空気銃):16,500円

第二種猟銃(空気銃のみ):5,500円

わな猟:8,200円

網猟:8,200円

上記の金額は1県のみの場合で、複数の県で狩猟を行う場合は、各県で行う狩猟に応じた狩猟税をそれぞれ納付しなければいけません。この納税額から全額免除、または半額免除を行うという事ですが、この条件に以下のような但し書きが付きます。

税制改正では、改正鳥獣保護法で新たに設置された、シカやイノシシなどの駆除を専門に行う認定捕獲事業者と、鳥獣被害防止特措法で市町村から任命される対象鳥獣捕獲員について、狩猟税を全額免除する。一般のハンターのうち有害鳥獣駆除に協力する人は半額にする。その他は、これまで通り納付が必要。

ハンター減少阻止へ、狩猟税を軽減 政府が鳥獣駆除対策

捕獲事業者と鳥獣捕獲員は全額免除、どういった人が対象になるかは詳細不明ですが「鳥獣駆除に協力する人」が半額という面で、それ以外のハンターは従来と同じ税額なのだそうです。

ただ、これがハンター減少の歯止めになるかは疑問符が付きます。と言うのも、鳥獣捕獲員は数年の狩猟経験を持つ猟友会員がなるのが通例で、1年生ハンターがすぐになるものではないからです。この免除方針で負担が軽減するのは経験を積んだハンターだけで、新米ハンターやこれからハンターになろうとする人の負担は変わりません。

今回報じられた減免方針では、経験を積んだハンターの減少を食い止めるのに一定の効果があるとは考えられます。しかし、ハンターは高齢化が進んでおり、2011年度の調査では全狩猟免許保持者のうち、60歳以上の占める割合が66%にまで達しています。

狩猟免許所持者の年齢別推移(環境省資料より)

現役世代の三分の二が60歳以上と考えると、どれだけハンターの高齢化が進んでいるかが分かると思います。高齢化が進む中、経験者のみ対象の免税措置を取ったとしても、新規にハンターなろうとする人の助けにはならず、ハンターの高齢化が進むだけではないでしょうか。

狩猟は野生鳥獣の生息数に関連する事から、その社会的な意義が注目されていますが、ハンター個人としては趣味でやっている事に変わりありません。野生鳥獣という公共資源を獲る事について、その資源(野生鳥獣)が限られている状況なら税を課すのは公正と言えます。しかし、その資源が増え過ぎて害になっている状況で、ほとんどのハンターに影響しない免税措置をして、もっと獲れと国が言うのもどうかと思います。

国としてハンターを増やし、今後も野生鳥獣の生息数管理に繋げたいのでしたら、もう少し長期的な視野に立つべきではないでしょうか。



【関連】

「クレー射撃、狩猟へのファーストステップ!猟銃等講習会(初心者講習)考査―絶対合格テキスト」

最近、狩猟関連の本が相次いで出ていますが、IT系テキスト・解説書で有名な秀和システムから、猟銃取得テキストが出ていたのを見た時は驚きましたですよ。恐らく、最近の猟銃講習会試験に対応した唯一の商業本。


「狩猟 始めました --新しい自然派ハンターの世界へ-- YS007 (ヤマケイ新書)」

ハンターの高齢化が言われる中、50歳未満のハンター3万人と関連する人々に焦点を当てた書。最近出た狩猟関連の本の中で、一番おもしろかったです。 


岡本健太郎「山賊ダイアリー(1)」

最近になって狩猟が注目されはじめた原因の一つ、著者自身の経験に基づく狩猟マンガ。話としても面白いが、作者周囲にアクの強い人物達が集まりすぎて、ある種のさくらももこエッセイ的な雰囲気を醸し出している。



2014年2月25日火曜日

クマ鍋を食べてみた

常々思っていた事ですが、日本では覚えきれないほど多種多様な魚介類が流通しているのに、肉類に限っては牛・豚・鶏の3種が市場に流通する肉のほとんど全てと言っていい状態です。お隣中国を見ると、マガモの家禽種であるアヒルは北京ダック等でポピュラーな食材ですし、スーパーではロバ肉も売られています。また、ドイツではシカ肉が多く消費されており、スウェーデンではノーベル賞授賞式後の晩餐会でライチョウやホロホロ鳥の料理が出されるなど、フォーマルな場にも出される食材として知られています。


ノーベル賞の晩餐会(ノーベル賞公式サイトより)


このように世界と比較しても、日本の食卓に上がる肉類のレパートリーは寂しいものがあります。そもそも、食肉加工場について定めた法律である”と畜場法”を紐解くと、法の対象となる「獣畜」は「牛、馬、豚、めん羊及び山羊」と定義されていて、それ以外の獣は対象外です。同様に” 食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律”で規定された食鳥も「鶏、あひる、七面鳥」の3種のみで、キジやアヒル原種のカモは対象外。対象外の獣肉・鳥肉は 法的に定められた検査の対象とならず、一般に流通することはほとんどありません。

近年、増えすぎた野生のシカやイノシシが全国的に問題化しており、環境省や地方自治体は駆除の担い手となるハンターの養成と、駆除後の獣肉の利用法としてジビエ(狩猟によって得られた野生鳥獣)料理を根付かせようと努力しています。しかし、前述の流通問題や、そもそも日本人にジビエは馴染みが薄いという需要の問題があり、上手くいっていないのが現状です。

こんな風に書いている自分も、牛・豚・鶏以外の食肉を口にするのは鴨南蛮(実はアヒルですが)やシカ料理がたまにあるくらいで、検査済みの食肉が流通に乗るはずの馬や羊ですら食べる機会は少なく、ヤギに至っては売られているのを見た事すらありません。法的に流通が容易なはずの食肉すら食べる機会がほとんど無いのですから、法以前に日本の肉食文化が諸外国より貧相なのかもしれません。

しかし、日本には多くの鳥類・哺乳類が生息しており、食肉文化の素地は決して低くないと思います。そこで、日本に棲む動物の肉はどんな味なのか。それも、なかなか流通に乗らないような肉で確かめてみようと、横浜にある珍獣屋という店にお邪魔しました。今回のメインターゲットは日本の生態系の頂点、クマです。

一口にクマと言っても、日本には北海道にのみ生息するヒグマと、北海道以外の本州・四国に生息するツキノワグマの2種おり、今回はヒグマとツキノワグマの両方を食します。熊本県のマスコットキャラのくまモンはクマがモチーフですが、熊本県のある九州ではツキノワグマは絶滅したと2012年に環境省は宣言しています。そう考えると、くまモンのあの無表情にどんな意味があるのか、あらぬ想像をしてしまいます。

さて、メインのクマは鍋ですので、鍋が出てくるまで酒を飲みつつ、アテに変わった肉を食べてきます。まずは「ヘビのぶった斬り網焼き」です。


ヘビのぶった斬り網焼き

ヘビというと小骨が多そうなイメージがありましたが、これは骨抜きもしっかりとされており、鶏肉に近い食感です。むしろ、鶏肉と言って出されても、ヘビだと気付かないでしょう。


次に、日本にいない生き物ですが、ワニの顎軟骨が出てきました。



鶏の軟骨と異なり、サイズは2周り以上大きく、コリコリとした食感は弱く、鶏の軟骨と肉の中間くらいの食感です。鶏軟骨のコリコリ感を期待した方には、ちょっと肩透かしを喰ら うかもしれません。同じ爬虫類だけあって、ヘビと同じく鶏に近い蛋白な味です。鳥類の起源は恐竜だと言われていますが、似ている味もそのせいかもしれません。味からも進化の過程が分かるような気がします。

次に来たのが、日本にも生息しているアナグマのつくねです。日本にいると言っても、見た事がある方は少ないかもしれませんが、古くはムジナと呼ばれたイタ チ科の哺乳類です。タヌキに姿形が似ている為に混同される事が多く、タヌキも広いアナグマの巣に同居することがあったため、「同じ穴のムジナ」という諺が生まれています。

ニホンアナグマ

アナグマはユーラシア大陸に亜種含め広く分布していて、肉の味の良さから古くから狩猟対象でした。犬のダックスフントもアナグマ猟の為に作られた品種です。日本でもお伽話の「たぬき汁」は、アナグマ汁だったのではないかという説があります。



上の動画は以前アナグマを撮影したものです。喰っておいてなんですが、結構可愛い奴です。

さて、料理はアナグマのつくねです。つくねは赤身の部分のようで、肉汁に旨味が多く含まれています。残念なのは、匂い消しの生姜の匂いがキツく、アナグマ 本来の香りが失われていた事と、つくねなので肉の食感が分からない事ですね。猟師に聞いた話では、冬の巣ごもりしているアナグマは脂がのっており、鍋にす ると美味いとのことでしたので、いつかは鍋にして食べてみたいと思います。

アナグマのつくね
さて、メインのクマ鍋の前に、クマのレバ刺しです。レバ刺しと言えば、中毒多発により牛のレバ刺しですら見かけなくなりましたが、これは野生のクマです。めっちゃリスク高そうなので、最初は私含む3名はレバ刺し食べない宣言をしたのですが、食べた人が口々に美味い美味い言うので誘惑に負けて食べてしまいました。

クマのレバ刺し(ヒグマかツキノワグマかは忘れた)
確かにこのレバ刺しは今まで食べてきたレバ刺しの中でも上位にある味です。血生臭さを感じさせない風味、レバーなのにしっかりした食感で、舌の上に乗せると濃厚な味が味が溶け出すように口の中に広がります。これは凄い。

ただ、後で調べたらクマは旋毛虫という寄生虫キャリアの可能性があり、これは筋肉中に住む寄生虫らしく、肝臓は汚染部位なのかどうか分かりませんでした。食べるのは推奨しません。ああ、放射線殺菌が合法化されたら、寄生虫も肝炎ウィルスも心配いらないのに……。


さて、メインのクマが運ばれてきました。写真の左側、牛肉のような赤身肉が熟成されたヒグマ肉、右が山形県で穫れたツキノワグマ肉です。

左がヒグマ、右がツキノワグマ

同じクマでも随分と見た目が違いますが、処理の仕方に違いがあるようです。味噌ベースの鍋で、ツキノワグマは時間をかけて煮込み、ヒグマはしゃぶしゃぶ風に火を通し、すき焼き風に卵につけて食べます。寄生虫のおそれもあるので、しゃぶしゃぶは少し入念に火を通します。



熊鍋



火を通したヒグマ肉に、溶き卵につけて食べる

すき焼きは元々味噌風味の鍋が起源で、肉を食べるようになった明治期、品質の良くない臭い肉でも味噌たれで煮込み、卵で匂いを消して食べれるように工夫された結果生まれました。独特の匂いがある野生獣にもピッタリな調理法なのかもしれません。

さ て、味の方はヒグマは柔らかく、癖もない上品な肉だったのに対し、ツキノワグマは味噌で煮込んでも癖が抜け切れませんでした。山中で穫れた野生獣は、解体 まで時間がかかると品質が落ちるため、品質を一定に保つのは困難です。恐らくは、血抜きなどの処理がヒグマとツキノワグマで条件が違ったのではないかと思 います。

肉の風味は強いて挙げると牛に近く、特にヒグマは乳のような優しい風味がありました。牛にも乳臭い肉はありますが、牛とは違って鼻に抜ける感じは悪 くありません。溶き卵につけると非常にマイルドで、子供でも食べれそうです。ツキノワグマと比べて獰猛なイメージがあるヒグマだけに、これはちょっと意外な発見でした。

鍋のシメはうどんです。クマの出汁が取れた鍋に、たっぷりチーズと細身のうどんを入れます。店では日によって、うどんの他にリゾットにもするそうです。ク マの匂いが味噌とチーズでマイルドになり、独特の風味も違和感なく食べられます。個人的には、ヒグマ肉だけならチーズ無しでも十分イケるように思えましたが……。

鍋のシメは、クマエキスたっぷりの汁にたっぷりチーズとうどんを投入

さて、世界的にもポピュラーではないクマ肉食というハードル高い肉に挑んでみましたが、今回熊鍋を食した方に話を聞くと、いずれも好評でした。今年度の猟期もほとんどの県で終了しましたが、珍獣屋さんでは4月までヒグマを出せそうと伺いました。魚の乱獲と漁獲量の減少が問題になっていますが、一方で国内では大型哺乳類の増加が問題になっています。国産ジビエの振興で、少しは落ち着くと良いのですが……。


なお、後日譚として、寄生虫絡みで調べていたら、旋毛虫の生活環を解明した学者が19世紀ドイツの病理学の大家で、時の宰相ビスマルクを批判して決闘を挑まれた際、旋毛虫入りソーセージで戦う事を提案して、ビスマルクはリスクが高いと取り下げたというエピソードを発見。

その顛末はこちらで。

togetter:クマ肉の生食からビスマルクに至る


あと、ちょっと値ははりますけど、熊肉普通にアマゾンに売られていますね。なんでもあるなアマゾン。


熊肉【信州産/月の輪熊】(200g)カット冷凍






2013年9月13日金曜日

福島の野生鳥獣問題に見る日本の縮図

8月の盆、福島県田村市の母方の実家に帰った。2011年3月の東京電力福島第一原発事故の際、田村市の東端にあ る旧都路村地区に避難指示が出たが、幸いな事に母方の実家周囲は原発事故による放射性降下物はほとんど無く、公表されている放射線量及び自家用放射線測定 器による計測値共に、自分が居住している千葉県北部の値より低いものだった。

このように、原発事故による放射線についてはほとんど心配はないが、最近になって放射線とは別の問題が生じている。野生鳥獣による農作物の食害だ。


捕獲されたイノシシ(岐阜県にて撮影)


2年で倍以上に増えるイノシシ

昨年の秋、ツイッターで福島原発周辺のイノシシが大増殖して問題化するんじゃないか、という予想を呟いた。ツイートの内容や経緯については、ツイッターのまとめサービスであるtogetter”福島のイノシシが(いろんな意味で)ヤバいかも - Togetter”を参照して欲しいが、ここでツイートのポイントをまとめると以下のようになる。

  1. 雑食性でなんでも食べるイノシシは、地表の放射性セシウムを蓄積しやすい。
  2. 放射性セシウムが蓄積したイノシシは食用出来ず、食肉目的の狩猟が行われない。
  3. 繁殖力が高いイノシシは狩猟しなければ、1年で生息数が倍になるため、イノシシによる農作物への害が増える。
  4. 更に、原発事故で無人となった区域で飼われていたブタとイノシシ交雑し、イノブタが生まれる事で、繁殖力はより高まる。

おおよそ以上の通りだが、最近になって、ほぼこの予想通りの状況が報道がされるようになった。
6月28日の朝日新聞「イノシシ激増 田畑を守れ」では、田村市での鳥獣被害が増加し、2011年度のイノシシ捕獲数が41頭であったのに対し、2012年度のイノシシ捕獲数197頭と前年の約5倍に増加していることが報じられ、9月8日の福島民友「農作物放射線量、塩害“消えぬ課題” 有害鳥獣、農地荒廃に拍車」でも、イノシシなどの有害鳥獣が人間の居住地近くにまで出没するようになり、農業生産への障害となる事が懸念されている。

原発事故によって無人となった地区は、野生鳥獣達のサンクチュアリと化してしまった。手入れがされなくなった田畑には草が生い茂り、イノシ シにとって良質な食料となる。また、放置された家畜のブタがイノシシと交雑することで繁殖力の高いイノブタが生まれる。イノシシは通常、年に1回4~5頭 を産み、そのうちの半数が成獣となるが、ブタの血を引くイノブタは年に複数回の繁殖が可能で、一度に産む頭数も増える。増加したイノシシ達は、避難指示区 域外へと出て農作物に被害を与える……。イノシシの生育に適した環境が出来た事、イノシシの繁殖力そのものが上がっている事、さらにはイノシシを食肉目的 で狩るハンター達もいなくなった事で、事故からわずかの年月でイノシシ問題が顕在化することになった。

筆者が田村市の農林課に取材したところ、野生鳥獣の食害を防ぐために市内の田畑に総延長341kmの電柵を設置することを計画しており、今 年度だけで130km設置する予定とのことだった。西日本ではイノシシの食害から田畑を守る電柵はよく見られるが、原発事故以前の田村市で電柵の設置は無 かったという。また、従来は有害鳥獣による農作物被害は小さかったため、市から有害鳥獣の駆除報奨金を出す事はしていなかったが、原発事故以降は食害が増 大したことにより、イノシシ1頭あたり2万円の報奨金を出すようになったという。ここで駆除されたイノシシは食用にできない為、全数が焼却処分されてい る。今年度は既に100頭以上のイノシシが処分されている。


旧都路地区では急ピッチで電柵が設置されていた


田村市で起きている事は全国どこでも起こっている

こ こで挙げた田村市の事例は、原発事故という特殊要因によって生まれた極端な例だが、同様の問題は全国で起きている。耕作放棄地には草が生え放題、飼育下か ら逃げだしたブタとイノシシの交雑など、規模こそ小さいものの、田村市と同じ現象は日本中どこでも起こりうるし、現に起きている。既に、西日本ではイノシシやシカ、カモシカ等の鳥獣による食害を防ぐべく、田畑の周囲に電柵を設置している自治体が多いが、電柵が有効に機能するためには周囲の草刈りなどの継続 的な手入れが欠かせず、設置費用と相まって、農家の大きな負担となっている。
野生鳥獣問題の抜本的な解決策として、野生鳥獣の頭数を適性頭数まで減らし、人間の生活圏との軋轢を軽くする事が必要とされる。しかし、頭 数調整の担い手であるハンターを示す狩猟免許所持者数は、昭和50年代初期の50万人以上をピークに減少を続け、平成22年には19万人とピーク時の3分の1近くにまで減少している。その上、ハンターの半数以上は60歳以上と高齢化が深刻で、このまま行くと近い将来にハンターのさらなる減少が見込まれる。



年齢別狩猟免許所持者数の推移 (環境省資料より)

野生鳥獣の保護管理と狩猟を管轄する環境省では、若年ハンターを増やそうとあの手この手の努力をしているが、その成果は捗々しくない。今年、筆者も居住する 千葉県で狩猟免許を取得したが、試験会場は控えめに見ても50代以上の受験生ばかりで、20代は数えるほどしかいなかった。中には80歳は超えているだろ う受験生もおり、おぼつかない操作で模造銃を扱っているのを見た時は、今にも倒れないかと内心ヒヤヒヤしていた。試験に先立つ勉強会では、質疑応答で「私 達は生活かかっているんですよ!」と思いをぶちまける参加者もおり、ハンターの高齢化は農業の高齢化問題と表裏一体であるとひしひしと感じた。

福島第一原発周囲で起きている事は、極端な形とは言え日本の縮図となっている。人が去り、荒廃した田畑に住み着く鳥獣によって、残った人の生活が脅かされるという構図は、福島と規模こそ違うが日本の至る所で起きている事だ。農業従事者の高齢化、地方の過疎などの問題も、野生鳥獣の問題と緊密 にリンクしている。我々が自然、そして地方と、これからどう向き合っていくのか、その姿勢が問われている。