さて、問題の箇所はここです。政府は戦争ではないが警察や海上保安庁で対応できない事態(グレーゾーン事態)において、警察・海保から自衛隊へシームレスに対応を引き継ぐ「切れ目のない対応」を行う事を目指していますが、そこで政府が想定している「謎の武力集団による離島上陸」に対し、記事ではQ&A方式で疑問を投げかけ、それに対する回答を書いています。
Q でも、謎の武装集団が離島に上陸するなんてことが本当にあるのかな?
A 過去に例はないけれど、政府は、今後も起きないとは言い切れないとみている。
出典:(読みとき 安全保障法制)Q5「国籍不明の武装集団が離島に上陸」どう対応するの?
んー……。クリミア半島に国籍不明の武装集団が現れたのって、去年でしたよね……。その後、クリミアがロシアに併合されたのは周知の通りです。現代に国籍不明の武装集団(どこかは丸わかりだけど)が現れ、国土を切り取っていく所業に世界が震撼しましたが、これが日本で起きない保証があるのでしょうか。
2014年にクリミアに現れた国籍不明(ロシア)の武装集団 |
まあ、世界の事例ではなく、「離島」で「日本」に限定にしていると言いたいのかもしれませんが、竹島の事例ではどうでしょうか。
例えば、現在もなお韓国により不法占拠されている島根県竹島の例では、韓国の漁民が入島が確認されてから、民兵組織独島義勇守備隊による竹島の不法占拠、そして1956年の韓国警察常駐による占拠と段階を踏んで占拠が強化されているのですが、これは過去の事例に該当しないのでしょうか? この竹島の例では、韓国が”切れ目なく”国家による竹島掌握にエスカレートしている反面、日本の対応は軍事的にも非軍事の面でも後手に回りました。厳密に言えば、韓国も最初から”切れ目ない”エスカレーションをしてたとは言い難いのですが、日本と比べると継続的に活動を行い、占拠の既成事実を積み重ねており、現在もなお占拠を続けています。
マスコミによる解説記事では、「グレーゾーン事態」における「切れ目のない対応」で歯止めが効かなくなり、本格的な武力衝突にエスカレートする事を危惧・問題視する論調が見られます。その懸念も正しくはあるのですが、過去に「切れ目のない対応」をしなかったばかりに、今日に至るまで不法占拠を許し続けている竹島について触れないのはどうでしょうか。
繰り返しになりますが、「切れ目のない対応」による事態のエスカレートへの懸念はもっともです。しかし、過去に対応をしなかったばかりに半世紀以上に渡る禍根を残した事はどう評価すべきでしょうか。政策がもたらすメリット・デメリット双方を提示し、国民の判断を促すのがメディアのあるべき姿と思うのですが、どちらか一方の視点ばかりが目立つように見えるのはどうなんでしょう。
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