2011年3月16日水曜日

東北地方太平洋沖地震で活躍するであろう自衛隊装備について



 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震ですが、発生から4日経った3月15日現在も多数の行方不明者や連絡がとれない人がおり、その被害の全貌は判明に至っていません。自衛隊は創設以来最大となる10万人規模の災害派遣が計画されており、既に1万人以上の被災者を救出したと報道されております。現在は救出のフェーズですが、いずれ破壊されたインフラの代りに被災者に衣食住の生活支援を提供することになるでしょう。今回は救出から生活支援に到るまでに活躍すると思われる、自衛隊装備についてご紹介したいと思います。





■人命救助システム(2型)




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 地震・津波などの自然災害や航空機事故等を想定し、倒壊した建物や事故機からの人命救助を目的とした装備品をコンテナにまとめ、パッケージング化したシステムです。このシステムには油圧ジャッキやエンジンカッター、削岩機、破壊構造物探索器(ファイバースコープ)等の倒壊建物からの救助用具が空輸可能なコンテナにまとめられております。民生品で構成されており、日本ログフォース株式会社が納入しています。


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 実演中の破壊構造物探索器。先端部が柔軟に可動し、狭い隙間から中を捜索することが可能です。





■個人携行用救急品




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 個人・車両に携行し、現場の隊員自らが治療を行う為の医薬品を詰めたもので、被災者や隊員個人の負傷等に用いられます。こちらは制式化された装備品ではなく、派遣時の状況により内部の構成品は変わってくるとのことで、上に挙げた写真はハイチPKO派遣部隊用の構成例です。ハイチ派遣では現地の衛生状況が悪いため、包帯などのファーストエイドキットの他にも、下痢止めや目薬、目を洗浄するアイボン、蚊除け剤等が加わっています。これも中身は民生品主体です。





■野外手術システム




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 野外で外科手術を行う為のシステムです。手術車、手術準備車、滅菌車。衛生補給車の4輌から構成されており(写真は手術車、手術準備車)、手術車は手術準備車と連結して使用されます。手術車は手術時の面積を増やすために約2倍に拡張が可能です。1日に10人から15人の開腹・開胸手術が可能です。また、おおすみ型輸送艦に搭載して、簡易的な病院船化も可能です。


f:id:dragoner:20090411131122j:image:w640【手術車内部:手術台】


f:id:dragoner:20090411131112j:image:w640【手術車内部:X線装置】


f:id:dragoner:20110315185727j:image:w640【手術車内部:各種医療装置】





■1トン半救急車




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 自衛隊の野戦用救急車で、一般の救急車と同様に患者監視装置、除細動器、人工呼吸器等が積まれております。担送患者のみの場合は最大4名、独歩患者のみの場合は最大4名の搬送が可能です。製造はトヨタ自動車。





■化学防護衣4型、防護マスク4型(B)




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 恐らく、福島原発で炉心冷却作業を行っているであろう自衛官が着用していると思われる防護品です。防護衣とマスクを組み合わせることで、有毒な生物化学兵器・放射性物質の身体への付着・浸透を防ぎます。写真は全隊員に用意されているゴム製の防護衣で通気性がありませんが、これとは別に通気性のある素材を用いた個人用防護装備も存在します。製作は藤倉ゴム工業。


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 着用例。着込んだ隊員は「ものっそい暑いです」とのこと……。





■化学防護車(B)




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 福島第一原発に中央特殊武器防護隊所属の4両が派遣されたことが報じられている化学防護車です。地下鉄サリン事件でも出動したことから見覚えのある方は多いと思います。放射性物質・化学物質に汚染された地域での活動が可能で、空気浄化装置により車内でマスクをせずに放射線測定や有毒物質の検出等が行われます。製造は小松製作所。


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 また、搭載されたマニュピレータにより、車外に出ずに試料を採取することが可能です。





■除染車3型(B)




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 汚染された地域の除染に用いられる車両で、2500リットルの除染剤を広域に散布します。津波被害にあった地域での消毒作業に今後用いられるものと思われます。車体:いすゞ自動車、タンク部:東急車輛、加温部:ユニバーサル造船が製造。





■水タンク車




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 福島原発への冷却水輸送にも使われたことが報じられていますが、飲料水の輸送にも使用されます。5トンの水を輸送でき、ポンプも備えています。製造はいすゞ自動車。





■浄水セット 逆浸透型




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 今回の派遣で使用されるかどうかは分かりませんが、川などの淡水から飲料水を精製する車載の浄水装置です。長毛ろ過、限外ろ過、逆浸透ろ過の3つのろ過機能により、淡水から汚染物質・細菌・ウィルスを取り除くことが可能です。一時間あたり3.5トンの水を浄化する能力があり、5tタンク(写真手前の半球状のものです)2つに計10トン貯めることが可能です。東チモールPKO等、自衛隊の海外派遣では頻繁に活躍している装備です。


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 製造元の神鋼環境ソリューションの紹介資料。


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 実際に浄水セットを使用した、各ろ過過程での水の様子。右から元水、長毛ろ過後の水、限外ろ過後の水、逆浸透ろ過後の水。ろ過を経るごとに清浄な水になっているのが分かります。





■野外入浴セット2型




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 野外での簡易入浴を行うための装備品で、国内での災害派遣で数多く使われております。浴槽やボイラー、シャワー、スノコ等、給湯から温浴に必要な装置がまとめられており、1日に1200人の入浴が可能です。給湯に使用する水は。上記の浄水セット(逆浸透型)とは違い、長毛ろ過・限外ろ過の2つのろ過機能を持った浄水セットにより供給されます。逆浸透ろ過を使用していないので飲料には適さない代わりに、一時間あたりの浄化能力は7.5トンと、逆浸透型の倍以上の処理能力があります。


f:id:dragoner:20090411132934j:image:w640【浴槽】


f:id:dragoner:20110315194308j:image:w640【シャワー】


f:id:dragoner:20110315194309j:image:w640【脱衣所】





■野外炊具1号(改)




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 野外での調理に使用する調理器具で、炊飯用の釜、揚げ鍋等を備え、200人分の主食・副食が45分以内に調理できます。平成12年度から配備が始まった(改)では、冷凍冷蔵機能等が追加されています。





■ヘリコプター映像伝送装置




f:id:dragoner:20070516103219j:image陸上自衛隊第11旅団サイト】より


 ヘリコプターから映像情報を方面総監部等に送信する為の装置です。気仙沼の火災の様子を撮影したのもこの装置によるものと思われます。写真は撮影機のものですが、この装置はさらに中継機、地上受信装置、地上撮影装置、移動受信装置、衛星可搬局装置から構成されており、遠距離への配信を可能にしています。電装機器は日本電気、映像機器等は池上通信機、衛星可搬局装置は三菱電機の製造になります。





 以上で主要な災害派遣の装備を紹介しましたが、他にも装甲車等の戦闘車両も多数派遣されております。また、戦闘装備と違って、普段は注目されないこれらの災害対策装備ですが、駐屯地際等では展示されていることが多いので、機会があったら見て隊員の話を聞いてみると良いと思います。





参考資料



第11旅団部隊紹介 空中伝送班


㈱神鋼環境ソリューション 製品紹介 車載式浄水装置





2 件のコメント:

  1. こんにちは。scrumploversと申します。
    阪神大震災、2度の宮城沖地震、そして今回の震災の被災者です。
    大学院では放射線生理学を学びました。
    私のブログは”スクランプ連盟”といいます。
    被災の情報等書いておりますのでお立ち寄りいただければ幸いです。
    なお、放射線についてご質問等あればぜひお尋ね下さい。

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  2. 着用例のやつは防護マスク4型ではなくて00式です

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