2008年9月29日月曜日

自衛隊の地道仕事 射表の編纂



 私の様な半端な軍オタにありがちなことなのですが、射程や威力等の装備のスペックに興味はあっても、それを兵器として使用とするためのステップを軽視してしまう傾向にあるようです。自衛隊の装備を見れば分かるように、装備は実戦で使われない、若しくは使われない期間の方が圧倒的に多いのは言うまでもありません。その“使われない期間”こそ、装備を効率的に使用するための訓練・研究が行われる期間であり、そこでの蓄積こそが実戦の結果を左右することになります。


 本稿は『自衛隊の地道仕事』シリーズ、陸自編の射表の編纂です。





射表とは


 銃から砲、ミサイルに至る全ての火砲は、物体を飛翔させることで目標にまで到達させる兵器という共通点があります。そのため、風や地球の自転によって弾道は影響を受けることになり、湿度や気温が火薬の燃焼に大きく関わってくることになります。更には、砲やミサイル固有の弾道というものがあり、正確に目標まで弾を送るにはこれらの要素(今挙げたよりもずっと多いです)を全て計算に入れなくてはなりません。しかし、撃つ度にいちいち複雑な計算していたらキリがありません。


 では、実際はどういった方法でこの問題を解決しているのでしょうか。答えは以前「幻のてき弾銃」で示した「試験の区分」図にあります。下に転載してみましょう。


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 図の右側、装備段階に「射表編纂」「射表編纂試験」があります。これが、計算の複雑さを回避するための手段、射表を得るためのステップです。


 では射表とはなんでしょうか。火器弾薬技術ハンドブックによる定義を引用しますと、「各火器などごとそれに使用される弾薬の標準状態における弾道諸元および風、気温などによるその修正量を記載した表をいう」となっております。異なる条件下であらかじめ射撃を行い、その結果を解析することで、その条件下で必要な修正量を割り出し、それを表にまとめておくのです。これにより、射撃の際には大幅に計算を簡略化することができるのです。





射表編纂


 では、実際にどのように射表は編纂されているのでしょうか。ニコニコ動画にその様子をアップしましたのでご覧ください。


 
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 射表の精度によって、射撃の精度が左右されるので、射表の編纂は綿密な計画の下で行われます。映像の中には上空の状態を確認するための気象気球が確認できますし、この他にも空中観測を行うヘリや、弾道を正確に確認する弾道追随レーダー等様々な計測手段が用いられ、データの収集が行われます。それらデータの解析を行い、冊子の形で編纂され、各部隊に配布されます。この射表によって、迅速に正確な射撃を行うことが可能となり、射表は射撃に欠かせない存在となっています。


 総合火力演習で派手な爆発を見るのも面白いですが、こういった普段の活動に目を向けてみるのも良いものですよ。





参考文献


弾道学研究会編『火器弾薬技術ハンドブック』防衛技術協会