さて、化学グローブを外に出す事によって、試料採取活動を行うNBC偵察車ですが、どのように採取・分析が行われるのでしょうか。
温度計測 |
まず、後部で目立つ先端が白い2本の棒(上写真)から説明したいと思います。この棒の先端部は温度計で、気温の測定に使われます。1本は地面に近い温度、もう1本は人間の背の高さほどの位置の温度を計測します。これは両者の温度差から、周囲の空気がどの程度対流しているのかを計測するものです。対流が激しい場合、化学剤や生物剤は拡散し効果が薄れますが、対流が起きていない場合は周囲に高濃度で漂います。このように対流の具合を計測することで、周囲がどの程度危険かを察知することができます。
続いて化学グローブやサンプル採取器具が収納されてあるボックスです。
ボックス |
ボックスは車体後部右にあり、化学グローブや各種サンプル採取用器具を収納しております。
ボックス内 各種用具 |
ボックスの 中は左から採土器、アーム、サンプル容器、化学剤センサとなっていました。採土器は地面に突き刺して付着した土を採取し、アームは対象サンプルを回収する為に用いられます。また、化学剤センサは化学剤付近に近づけて、気化した化学剤を判別するのに使われますが、対象の気化が不十分な場合、先端部を230度にまで加熱することで対象を気化させて測定することもできます。
これらの器具を、車内からガラス窓を覗きこみ、車外に突き出た化学グローブを用いて操作します。
採取されたサンプルは、サンプル回収管(写真中央)を通じて回収されます。
サンプル回収管(写真中央のパイプ) |
サンプル回収管は縦に収容されていますが、回収時には横に倒れ、化学グローブでサンプルをこの中に入れます。その後、管を縦に戻すとサンプルが下に落ち、収容口に届く仕組みになっています。
化学グローブなどを用いない収集手段もあります。車体後部ドア下部には、空気採取用の小窓が設置されております。
空気採取用窓 ドア下部 |
この窓を通じてサンプルの空気がチューブに採取されます。空気はチューブに封入されており、車内でも取り扱うことが出来ます。
車体後部左には洗浄用の水タンクが設置されています。
洗浄用水タンク |
この水は車内での器具洗浄等にも使われる他、タイヤを洗浄するのにも用いられており、各タイヤの前には洗浄用ノズルが備わっています。
タイヤ洗浄ノズル |
この車両の配備先である自衛隊の中央特殊武器防護隊は、前身の第101化学防護隊の時代から武器地下鉄サリン事件、福島第一原発事故でも派遣されている部隊です。NBC偵察車はNBC全ての分析に対応したことで従来より効率が増しており、今後もNBCテロや原子力災害などでの活動が期待されます。
以上
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