補助動力装置
10式戦車は多くの電子機器を搭載しており、そこで消費される電力は相当なものです。90式などの従来型戦車の電気系の電圧は48Vと24Vであったのに対し、10式は96Vと家庭用に近い電圧にまで上がっており、90式と比較しても多くの電力が必要となります。エンジンが休止・故障している際も、電力を供給しなければならないシチュエーションも多くあるでしょう。その為に、10式戦車はエンジンとは別に、補助動力装置(APU)をオプションとして導入できます。 10式の車体後部左には、補助動力装置用の吸排気口らしきものがあります。
10式戦車試作車 補助動力装置 |
この補助動力装置は単気筒ディーゼル発電機で、エンジン休止時にも車内の電子機器に対して単独で電力を供給することが可能です。単気筒のディーゼルですから、発熱・騒音も少ないので車両の秘匿性を高め、エンジンを切っておけるので燃料の節約にもつながります。
10式戦車試作車 補助動力装置上部 |
この補助動力装置は前述の通りオプションで、装着するかどうかは選択できるようです。上の写真を見ると判りますが、上の蓋を外して容易に取り外しができるようになっております。このため故障時の換装や、将来に補助動力装置の能力向上が必要になった時にも対応できるものと考えられます。
10式戦車量産車 補助動力装置カバー?(写真左) |
側面付加装甲の細部の違い
続いて、側面の付加装甲の違いを見てみましょう。
試作車両 装甲カバー |
量産車両 装甲カバー |
10式戦車量産車 砲塔側面付加装甲カバー拡大 |
拡大すると、蝶番の存在が分かります。つまり、これ、フランス戦車のルクレールと同じように、収納箱の役割があるわけです。
今回、それを裏付ける決定的シーンを映像で捉えましたの。ニコニコ動画、YouTube双方にアップロードしましたので御覧下さい。
図らずしも、カバー説がこれで立証できたと思います。
APU排気口のカバーは背後から重機もしくはそれ以上の威力を持つ砲で攻撃された場合に対する配慮でしょう。
返信削除主機関の排気経路はターボなどを経て複雑に曲がりくねるため外部から見える排気口は主機関そのものに直接つながっているわけではありません。
しかしAPUは車体空間の制約から排気口に対して直線的な位置関係にならざるを得ません。
さらに付け加えるならば、量産車の"排気口カバー"と表現される物体は試作車の排気口に比べて水平方向の厚みがかなり減っているため、内部は試作車とかなり違う構造になっていると思われます。
返信削除むしろ、"ダクト"と表現した方が良いのではないかと。
>量産車の付加装甲には試作車には無い可動部があります。
返信削除これは回転軸が90度違うだけで同じ蝶番と取手は試作車両にもついていますね。
試作のはルクレールのように上に開いたんじゃないでしょうか。
匿名様
返信削除コメントありがとうございます。
>APU排気口のカバーは背後から重機もしくはそれ以上の威力を持つ砲で攻撃された場合に対する配慮でしょう。
これがちょっと判断に困るところで、ロープが張られていたので近くで見れなかったことと、自分がそれほど注意を払って見ていなかったので、ここの記述はかなり曖昧なものとなっております。果たして装甲的な意味を持つかどうかは、もう一度じっくり見る機会があったら確認してみたいと思います。
>むしろ、"ダクト"と表現した方が良いのではないかと。
仰る通りと思います。以後はダクトに統一します。
おたま様
返信削除試作車も一応蝶番になってはおりますが、現実的にはアクセスドアとしての機能しか無かったんじゃないかと思っています。あそこまで大きな金属蓋を上方向に開けるのはそう気軽に出来ないので……。
ただ、このあたり自分も表現が不味かったと思っております。
>90式などの従来型戦車の電気系の電圧は48Vと24Vであったのに対し、10式は96Vと家庭用に近い電圧にまで上がっており
返信削除一般家庭で直流は12V未満ではないですか?
おそらくいわゆる電灯の交流100Vの勘違いと思います。
直流96Vはev車的な規格であるようです。
90式戦車にもしれっと収納箱兼空間装甲?付いてますよね~。
返信削除http://www.groundpower.co.jp/gp0603.jpg
なぜかあまり解説されてないような気もしますが。(地味だから?)
遊び人さま
返信削除モロ勘違いでした。
あーでも機器の電気はどうしてんだろ……。直流のまま供給した方が効率いいけど…
写真をじっくり見ていて気付いたのですが、APUは試作車・量産車ともに排気を主機関の左側排気口へ出すつくりになっていますね。
返信削除試作車の"APU排気口"が煤や油で汚れていないことを疑問視する声は少なからずありましたが、吸気口なので汚れるわけが無かったのです。
ただ、試作車ではAPUと主機関の排気が後部装甲板の内部で合流しているのに対して、量産車では後部装甲板にAPUと主機関の排気口が別々に開口する形になっているようです。
量産車の写真をよく見ると分かりますが、APU側から斜めのダクト(上から見ると\の形です)が"主機関排気口"へと伸びています。
この形式であれば装甲板を外さなくても排気口のユニットを外すだけでAPUの排気部へアクセスできるので、メンテナンス性向上のための改善と思われます。
というわけで、量産車のAPUから伸びる下向きのダクトは吸気口ということになります。
一部訂正です。
返信削除試作車のAPU排気口(?)は写真を拡大するとうっすらと煤らしきものがついているようにも見えますね。
なので、試作車の排気は見たまんまの排気口から出ているのかもしれません。
試作車の排気口があの位置だとすると量産車の排気口とだいぶ位置が違うため、APUのレイアウトは試作車では縦置きだったものが量産車では横置きへ変更された可能性が考えられます。
この「10式戦車の試作車と量産車の違い、及び装甲カバーの中身について(後編) 」で計4回匿名コメントした者です。
返信削除「自衛隊をウォッチする市民の会」の件で匿名コメントした方とは別人ですが、無用のトラブルを避けるため今後こちらのブログに書き込む際はtwitterアカウントのAvocado_Inside(休眠状態に近いですが)を名乗るようにします。