今年の3月から5月にかけて、『検証TK-X』シリーズでTK-Xについての拙文(本当に拙いんだな、これが……)を連載しておりました。今回は『TK-Xへと至る道』と題しまして、TK-Xの開発が開始される平成13年(2001年)以前に行われていた、TK-Xへと繋がる研究について見ていきたいと思います。
「幻のてき弾銃」において、装備開発に至るまでの研究段階は重要という、ごく当たり前の事実について触れました。特に様々な要素の結晶とも言える戦車については、かなり長い期間で基礎研究が行われており、TK-Xに関連する研究は80年代から、即ち90式戦車が装備化される前から広範な分野に渡って行われております。TK-Xが様々な新要素を持つ戦車であることは既に『検証TK-X』でも述べていますが、それらは突然現れたものではなく、90式戦車が登場する以前から積み重ねられたものなのです。
「検証 TK-X(その1 火力・防護力)」において、74式戦車に採用されている93式105mmAPFSDS弾は、新戦車(当時は90式戦車)の次の将来戦車、即ちTK-X用弾薬の研究の波及効果によって開発されたものであると書きました。この研究は昭和60年(1985年)に防衛庁技術研究本部により計画され、同年10月にはダイキン工業よりAPFSDS弾についての研究計画が提出されています。昭和60年と言いますと、まだ90式戦車が装備化される5年前です。技術研究本部や防衛産業は20年以上先を見据えていたと言えるでしょう。
この研究は昭和60年度と62年度に2社競合で射撃試験が行われ、特に62年度の試験ではダイキン工業による試作品が、当時の諸外国の最新型の公称性能に勝る結果を残します。“当時の諸外国の最新型”と言いますと、昭和62年当時は90式戦車でも採用されたDM33が該当します。研究は平成8年度まで行われており、この研究の成果がTK-Xの弾薬開発にも受け継がれていることはほぼ間違いなく、現在、TK-X用の試作徹甲弾はダイキン工業、中国火薬、三菱重工、旭化成ケミカルズによって開発・製造が行われています。
ここで、TK-Xの弾薬に関連すると思われる各研究の時期について下記に図表化してみました。
平成9年から研究されている「装甲・対装甲技術」はハイブリッド弾芯ということで、TK-Xとは関連しない可能性が高いのですが、各発射薬研究は性能・安全性・低エロージョン性の向上が謳われており、単なる高威力化以外にも、被弾時の被害極小・砲身命数の延長等の効果が期待されます。
装甲編へ続く
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