近年、先進国の軍隊では兵士個人の情報共有の強化や生存性の向上の為、IT機器や防弾装具を統合化した個人用装備の研究を活発化させています。
こうした個人用装具の研究として、良く知られているものはアメリカのFuture Combat System(FCS)計画でのFuture Force Warriorや、フランスのF〓LIN等があります。
Future Force Warrior (写真原著作者:Hohum)
F〓LIN (写真原著作者:Rama)
こうした個人用装具開発の流れを受け、日本でも平成15年度より先進装具システムとして研究が行われており、ここ数年の防衛省技術研究本部でもそのシステムの一部が公開されるようになりました。
この先進装具システムは前述のF〓LINに近いもので、ヘッドセットやヘッドマウントディスプレイ(HMD)等が統合されたヘルメット、隊員の身体状況をモニターするバイタルサインセンサやコントロール装置を統合した防弾アーマー、カメラを備えた電子照準具等が付加された軽量小銃のおおまかに3つの部位より成り立っています。
さて、どのような情報共有をするのかにつきましては、私がここで書くよりもシンポジウム会場にて実演を兼ねた説明が行われておりましたので、そちらを見て頂いた方が分かりやすいと思います。説明の様子をニコニコ動画にアップ致しましたので、以下の動画を御覧下さい。
以上の動画から、GPSを利用した自己位置の標定・連絡、ガンカメラの映像の送信・共有、電子照準器を用いた遮蔽物からの射撃等、HMDによる情報共有の様子や生存性の向上に繋がる運用がお分かりいただけたと思います。また、映像の2分40秒以降の遮蔽物に身を隠しながらの射撃はF〓LINと同様の機能があることが伺えると思います。
F〓LINによりガンカメラからの映像で遮蔽物に身を隠しながらの射撃 (写真原著作者:RAMA)
この様に各国や自衛隊でも行われている先進装具の研究ですが、各国とも共通して抱えている問題があります。それはシステムの重量とバッテリーの問題になります。これらのシステムに加えて暗視装置や通信システム等、他の装具を付けてしまうと装備全体の重量が40kgを超えてしまう例もあり、より一層の装備の軽量化が求められます。システムに電気が欠かせない為、長時間持つバッテリーの開発やシステムの省電力化等、装備化には大きなハードルがいくつもあります。
HMDによる視覚での情報共有は非常に有効なのは事実なのですが、それを人体という脆弱で非力なプラットフォームに実装することになる為、重量やサイズの問題が重大なものになります。これら重量問題を解決するため、人間が持てる重量を増加させるパワーアシストスーツの研究もアメリカでは行われていますが、これも相当長い間研究が行われている割には未だに実用レベルには達しておらず、今後も相当の時間がかかると思われます。
フランスではF〓LIN装備化の為の発注が行われたそうですが、重量問題が兵士にどう受けいられるか、今後とも注目していきたいと思います。
参考
防衛技術協会「おもしろサイエンス 未来兵器の科学」日刊工業新聞社
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