2014年5月24日土曜日

イギリス軍事博物館巡りの旅 コスフォード王室空軍博物館(屋外展示編)

さて、イギリス軍事博物館巡りの旅。最初の博物館はコスフォード王室空軍博物館です。王室空軍博物館はロンドンにもありますが、ここコスフォードの方が規模が大きいです。

コスフォード王室空軍博物館は、イングランド中部の都市バーミンガムから列車で30分ほどのコスフォード駅近くにあります。ロンドンからバーミンガムまで1時間30分ほどですので、片道2時間少しを想定すれば、ロンドンから列車での日帰り見学も可能と思います。




博物館は駅の南側にありますが、北側にも軍の施設と博物館駐車場の一部もあったため、最初は間違えて北側に行ってしまいました。

コスフォード駅

コスフォード駅。のどかな無人駅です。

コスフォード王室空軍博物館は、コスフォード駅南を10分ほど歩いた所にあります。敷地内は軍施設でもあり、滑走路には練習機も止まっていました。博物館の敷地にはフットパスも整備されていました。

軍施設敷地内の博物館までの道。フットパスとしても整備されている

フットパスとはイギリスに古くからある通行権に基づく、風景や自然を歩きながら楽しむ事が出来る小径の事で、公共の散歩道と言えます。フットパス内なら私有地でも通行が認められていますが、軍用地内にも整備してあるのには驚かされました。

博物館まで緑の木々の中を歩きます。イングランド全体に言える事ですが、小鳥の囀りが至る所で聴こえます。大変美しい鳴き声なのですが、このコスフォードだけはカラスも結構鳴いていた……。ビジターセンター前はカラスだらけでした。

博物館近くのモグラ穴

敷地内はモグラ穴があちこちにあり、ウサギのフンも見られる等、自然が豊かな場所です。

コスフォード王室空軍博物館は食堂や売店があるビジターセンター、試作機を展示するテストフライト館、大戦期の航空機を展示するウォープレーン館、冷戦期の航空機を展示する冷戦館、輸送機や練習機を展示するハンガー1から成り立っています。

コスフォード王室空軍博物館の見取り図

ビジターセンターを入ると、食堂や売店がありますが、王室空軍博物館自体は無料ですので、入館に際してなにか手続きをする必要はありません。そのまま航空機を見に行くなり、博物館の概要を見るなり聞くなりできます。

王室空軍博物館は入館無料ですが、博物館の活動を支援する会員制度があり、それぞれ年間25ポンドを寄付するランカスター会員、年間50ポンド寄付するライトニング会員があります。会員には季刊誌の送付や売店での割引、博物館の舞台裏を見れる特別イベントへの参加等の会員特典があります。定期的に博物館に訪れる人にメリットがあるよう組まれているそうです。年間25ポンドからとは言え、他のイギリスの博物館の一回の入場料もそれくらいします。イギリス在住だったら入りたい……。

この支援会員の宣伝がセンス良く、昔のパイロットの白黒写真の中に、現代人がカラーで入っているポスターがなかなか良いです。まさに仲間になる感じですね。

博物館支援会員募集のポスター
また、博物館では屋外にも航空機を展示しています。今回は屋外展示の目ぼしいものを見てみましょう。

ホーカー ハンター
1950年代に開発された英ホーカー社のジェット戦闘機、ホーカー ハンターです。この機体は、イギリス国産機という事もあり、割とイギリス国内の博物館で見る事の多い機体です。

ホーカー・シドレー ニムロッドR.1
テストフライト館へ向かうと、ホーカー・シドレーの対潜哨戒機・電子偵察機ニムロッドがビジターセンター裏にあります。現在、ホーカー・シドレーは消滅し、BAEシステムズとなったので、BAEニムロッドと表記される事も多いですが、説明板ではホーカー・シドレーのままでした。

展示されているのは電子偵察型のR.1で、対潜哨戒機型は2011年まで現役にありました。後継として改良型のMRA.4が計画、開発も完了し、生産もされましたが、2012年の配備を前に計画はキャンセルされ、製造された機体もスクラップにされたそうで……おおもったいないもったいない。

ロッキード P2H ネプチューン

これは日本でも関連機を見ることが出来ますね。米ロッキード社の対潜哨戒機P2Hネプチューンです。1945年に初飛行し、エンジンはB-29に搭載されたR-3350を2基搭載しています。対潜哨戒機ですが、イギリスでは空軍で運用されていたようです。日本ではP2V-7が海上自衛隊で運用され、更にはエンジンをターボプロップエンジンに換装する等の改良を加えたP2Jが1994年まで運用されていました。

ホーカー・シドレー ドミネ

デ・ハビランドが開発したジェット旅客機DH.125を、デ・ハビランドを買収したホーカー・シドレーがイギリス空軍に練習機として販売して、ホーカー・シドレー ドミネです。1960年代に開発された機体ですが、改良を続けられ、現在でもビジネスジェットとして生産が続けられているそうです。その改良型ホーカー800は、航空自衛隊でも救難機U-125として配備されています。

面白いのは、デ・ハビランドがイギリスで開発した機体がホーカー・シドレー、BAeエアロスペース、レイセオン・エアクラフトとメーカーが転々と代わり、現在はホーカー・ビーチクラフトがホーカー800として販売していますが、そのホーカー・ビーチクラフトが販売するホーカー400は、三菱重工がMU-300として開発したものをビーチクラフトが製造販売権を取得して現在に続いている事です。イギリスと日本で開発された飛行機が、巡り巡って、両機ともアメリカの会社が現在も製造販売しているのです。

屋外には他にも、C-130輸送機や4発ターボプロップ旅客機のブリストル ブリタニアが展示されていますが、それらは撮り逃がしておりました……。そして、半屋外展示的な機体も現在あります。


屋外にあるDo17展示コーナー Do17実物大パネル

Do17サルベージの紹介展示

海中に沈んでいた大戦中のドイツの爆撃機、ドルニエDo17を王室空軍博物館が引き上げ、修復している作業を見学できます。2013年に引き上げられた機体は現在、ビニールハウス内でクエン酸で処理されており、修復には長い時間がかかるようです。

Do17の残骸が保管されているビニールハウス

機体をクエン酸処理しているそうです

ビニールハウスには入れない上、結露が酷かったです

残骸その3

Do17を保管しているビニールハウスは扉が閉められており、中で直接見る事は出来ませんでした。結露が酷く、中の様子も良く分かりませんでしたが、いくつか撮れた写真を紹介。

屋外展示ではこの他、Do17の機体やイギリスへの爆撃等が紹介され、この機体が発見・回収された経緯がパネルやビデオで紹介されています。博物館自体は見学無料ですが、このDo17修復プロジェクトへの寄付を募っており、私も少々入れました。かつての敵国の機体を、海中から引き上げて修復を行うイギリスは大した国だなあ、と感心したものです。そういや、B-29エノラ・ゲイの展示紹介に、国を挙げて難癖つけた国がありましたね……。

では、次回は屋内展示に移り、まずはテストフライト館の試作機の数々をご紹介します。



※初稿で「帝国戦争博物館」と書いてしまった箇所がいくつかありましたが、正しくは「王室空軍博物館」です。帝国戦争博物館はダックスフォードだった……。



【関連】




0 件のコメント:

コメントを投稿