2013年7月9日火曜日

海上自衛隊のソマリア沖海賊対処、護送船団方式も変更?

海上自衛隊がソマリア沖に派遣している海賊対処部隊ですが、本日7月9日の閣議において、1年間の派遣延長が決定されると共に、かねてから報道されていた米国主体の多国籍部隊CTF151へ護衛艦1隻を合流させることになりました。

海賊対策 多国籍部隊に参加へ NHKニュース
政府は、9日、海上自衛隊がアフリカのソマリア沖で行っている海賊対策について、活動の期限を1年延長することを閣議決定しました。
小野寺防衛大臣は、近く自衛隊に命令を出し、ことし12月をめどに船舶を護衛する方法を改めて、一部の護衛艦を多国籍部隊の活動に参加させることにしています。
これまでの海上自衛隊のソマリア沖海賊対処行動は、航行する船舶で船団を組み、船団を2隻の護衛艦で護衛する「エスコート方式」、つまりは護送船団方式でした。

昔のブログ記事から引っ張って来ましたが、海上自衛隊の護送船団方式(2010年時点)は、船団を高速で乾舷の高い「低リスク船」と、低速で乾舷が低いために海賊に襲われる可能性の高い「高リスク船」のグループに分け、海賊出没時には護衛艦1隻は海賊船に対処し、高リスク船は高速で退避、低リスク船を残る護衛艦1隻が護衛するという方法を取っていました。
海上自衛隊の船団護衛
しかし、今回のCTF151へ護衛艦が1隻参加することに伴い、船団をエスコートする護衛艦は1隻のみとなります。このため、船団護衛の内容は大きく変わるものと考えられます。

この背景として、商船への武装警備員の搭乗に伴って海上自衛隊が護衛する船舶の数そのものが減少傾向になることと、各国の海上警備が功を奏して襲撃件数は減ったものの海賊の活動範囲が広範囲化していることが考えられます。
このため、これまでのエスコート方式による直接護衛のみの方針から、ゾーンディフェンス方式で海賊を積極的に抑制しようとする動きに変更したと考えられます。

では、新たに行うエリアディフェンス方式の護衛とはどのようなものでしょうか?
エリアディフェンスはソマリア沖で対海賊活動している各国軍のうち、有志連合軍や欧州主体の国際部隊が採用しており、海賊が出没する海域をパトロールするものです。エスコート方式との違いを分かりやすく言えば、エスコート方式が専属のボディガードで、エリアディフェンス方式は地域の治安を維持する警察みたいなもんです。

有志連合のエリアディフェンス海域「安全回廊」

上図は有志連合が設定した安全回廊と呼ばれる海域で、イエメン沖30〜40マイル・長さ490マイルの海域のエリアディフェンスが行われ、各国の船舶は警備が行われているこの回廊を航行するようになっておりました。

エスコート方式が襲撃してくる海賊船への受動的な防御であったのに対し、エリアディフェンスでは特定海域での警戒活動や不審船舶への臨検活動などの能動的な活動になります。

これまで、日本独自の活動として行なってきた海賊対処が、国際部隊と協調して行う活動へと変化したことは重要な意味を持つものと考えられます。
参加艦艇は他国軍の指揮下に入ることになるため、臨検活動などを命じられ、そこで戦闘となる可能性も否定できず、派遣隊員の危険度も増してくるものと思われます。

また、派遣されている部隊のうち、P-3C哨戒機の扱いがどうなるかも気になるところです。現在、広範囲を捜索できる固定翼哨戒機を派遣している国は少ないことからも、かなり重要な戦力になると考えられますが、今後に注視したいと思います。

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