2010年1月13日水曜日

防衛技術シンポジウム2009 「耐弾用金属基複合材(MMC)」



 Youtubeを見ていたところ、年末のテレビ番組と見られる映像がアップされていました。






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 防衛大学校で衝撃破壊関連の研究をされている大野友則教授の研究内容の紹介映像ですが、下の方の2/2の映像の中に64式小銃を用いた実験が出てきます。強化繊維とセラミックスの2重構造の防弾チョッキに向けて64式小銃で射撃し、受け止めるといった映像なのですが、セラミックが鉛色でアルミナっぽくない。どっかで見たことあるなーと思っていたら、思い出しました。





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 防衛技術シンポジウム2009で展示されていた「耐弾用金属基複合材(MMC)」と色が良く似ており、映像では素材の名前こそ出ていないものの研究中の材料であることが明らかになっていることや、MMCの耐弾試験も大野教授が行っているため、映像の素材もMMCの物に近いと思われます。


 耐弾用金属基複合材(MMC)とは、金属材をベースとしてセラミックスを加えて強化した複合材のことです。(イタリック部・2010年1月17日文面訂正) この研究は日本セラテック社による展示で、同社の製品であるPSS-50を利用した防弾素材が展示されていました。なお、PSS-50はシリコンとセラミックス(炭化ケイ素)の複合材になります。





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 このPSS-50の特徴としては以下が挙げられます。


 ・従来のアルミナ等のセラミックスやPSI(アルミ+セラミックスのMMC)と比べて重量あたりの耐弾性能に優れている。


 ・従来のセラミックスは曲面の加工が難しく高コストになったが、PSS-50は鋳型で立体成型が可能。


 ・立体成型が可能であるので、試験体は陸自隊員の平均値から割り出された形状となっている。


 など、性能面や加工面、人間工学的にも有利な特徴を備えております。実際に6ミリ厚のPSS-50と10ミリ厚のスペクトラ繊維を組み合わせた試験体に対し、89式小銃による5.56mm弾を5発連射で撃ち込み、全て未貫通の成果を残しており、連射に弱いセラミックスとしては上々と言えると思います。


 PSS-50はアルミナより3割ほど軽く、会場では写真のように同体積のブロックが置いてあったので実際に持ったところアルミナよりずっと軽い印象でした。実験で用いた6ミリ厚のPSS-50試験体も持ち上げたところ、以外な軽さで驚きました。もっとも、スペクトラ繊維無しなので軽いのは当たり前なのかもしれませんが……





 Youtubeの映像に出てきた耐弾素材がPSS-50だという確証はありませんが、防弾チョッキに使われる素材の軽量化は各国でも重要な課題とされており、多くの素材が日本でも研究対象となっていることが伺えます。この分野での研究がより一層進むことで隊員の生存性向上に寄与することを願っております。





<参考>


日本セラテック社 http://www.ceratech.co.jp/product/pdf/03/pss_psh.pdf


防衛省技術研究本部 「耐弾用金属基複合材(MMC)」





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